カテゴリー「読書」の記事

2007/04/15

『我、汝に為すべきことを教えん』

Warenanjini ▼アーサー・M・アーベル
《我、汝に為すべきことを教えんー作曲家が霊感を得るとき》
(訳/吉田幸弘、春秋社、2003年)

アメリカの音楽ジャーナリストであるアーベルが、ブラームス、リヒャルト・シュトラウス、プッチーニ、フンパーディンク、グリーグ、ブルッフといった作曲家たちと交わした対談を元にした著作(原本は1955年、アメリカの出版社から刊行された)。作曲家たちが傑作を生み出すとき、彼らの内部ではいったいなにが起こっているのか?その秘密を作曲家自身が赤裸々に語っていて、非常に興味深い。とりわけ、ブラームス!これはもう完全な信仰告白に違いない。ゆえに、ブラームスはこの本を自分の死後50年経つまでは公けにしないように求めたほどだ(*ブラームスは1897年に死去)。彼ら作曲家が、なにものかに導かれるがごとく~啓示/霊感/インスピレーションを受けて~名曲を作り出す。己を超えたものに衝き動かされながら、その持てる技量を駆使して作品を生み出していくその過程は実に神秘的で、感動的でさえある。それはなんと尊い作業であることか!今日読んでも衝撃を受け、かつ学ぶところの多い著作である。短いが、フンパーディンクがワーグナーについて語っている部分も見逃せない。音楽に興味がある人に、否、そうでない人にも、是非読んでほしい一冊だ。

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2005/11/18

『黄金の声の少女』

ougonnokoe▼ジャン=ジャック・シュル『黄金の声の少女』
(訳/横川晶子、新潮クレストブックス)

2000年にフランス最高の文学賞であるゴンクール賞に輝いた作品。映画監督ファスビンダーに愛され、イヴ・サン・ローランに霊感を与え、作家シュルのミューズとなったドイツ生まれの歌手にして女優のイングリット・カーフェンの生涯を辿っているが、単純な伝記ではない。連想によって話が飛翔し、時間が移ろい、場所を変えていく。まごうことなき~プルーストに繋がる~フランス文学の香りが全編にただよっている。詩的で音楽的な文体で綴られる、シュルから彼女へ向けられた愛の贈り物。

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