カテゴリー「オペラ」の記事

2008/04/05

オペラティック・アワー2

 伯爵は悩んでいた。下僕のフィガロの結婚が間近に迫っているというのに、売られた花嫁が行方不明になってしまったからだ。そこで伯爵はある夜、こっそり屋敷を抜け出して、青ひげ公の城に相談に訪れた。広間にはウィンザーの陽気な女房たちが集まっていたが、あまりにうるさいのでそこを通り抜け、奥の部屋の扉を開けた。そこは礼拝堂になっていて、青ひげ公の相談役、修道女アンジェリカが聖母マリアの夕べの祈りを捧げている最中だった。そこで伯爵は、なんとかスザンナの居場所が明らかになるよう、神に祈った。すると、「このナイチンゲールの後を追いかけなさい」とのお告げが。早速、伯爵は目の前に現れたナイチンゲールとともにスザンナ探しの旅に出ることにした。

 最初にたどり着いた村はのどかな田園地帯のただ中にあった。村のロミオとジュリエットの二人が木陰で仲むつまじく、「ねえ、結婚しようよ」なんて甘く語り合っていたので、親切な伯爵は気を利かせて二人を近くの教会に連れて行き、彼の立会いのもと、結婚式を挙げてあげた。若者たちは狂喜乱舞した。が、それを知った両家の者たちは激怒した。で、彼らにつかまってこっぴどく痛めつけられている間に、ナイチンゲールがいつのまにかどこかに飛んでいってしまった。困り果てた伯爵は、その村に巡礼にきていた炎の天使に相談したところ、「この金鶏の後を追いかけなさい」と言われた。こうして旅はまた続いた。

 金鶏に導かれてやってきた村はスペインの時が支配していた。闘牛場の前でカルメンがドン・ホセと口論していたので、親切な伯爵は気を利かせて二人を近くの教会に連れて行き、彼の立会いのもと、告解を聞いてあげることにした。だが、期待とは裏腹に、カンカンに腹をたてていたカルメンが罵詈雑言を並べ立て、あっさりその場から立ち去ってしまったので、ドン・ホセにこっぴどく恨まれた。挙句にナイフで刺されそうになってしまったので、その村から命からがら逃げ出した。金鶏とはぐれてしまった伯爵はどこに行くべきか悩んでしまったが、峠の茶屋でお茶を飲んでいたドン・カルロに「あっちら」と言われたので、そちらへ向かった。

 そうしてたどり着いたところはムツェンスク郡のマクベス夫人のところだった。人間の声とも思えぬ恐ろしい奇声を上げるマクベス夫人になぜか気に入られた伯爵は、あろうことか愛の妙薬を飲まされかけたので、慌てて外套で身を隠し、彼女のもとから逃走した。魔の山の中まで入り込んだところ、そこでばったり出会ったのは旧友のジプシー男爵だった。彼は一人の女性を連れていた。「やや!おまえはスザンナ!」「まあ、あなたは伯爵!」やっと見つけ出したスザンナではあったが、彼女は伯爵のもとに一目散に駆け寄るなり、思いっきり平手打ちをかましてきた。「さんざんもてあそんだ挙句、このわたしをタンホイザーなんかに売りつけるなんて、いったいどういう了見?もう絶対に許しませんからね!」

 親切な伯爵は、自分の屋敷をまるごと持参金としてスザンナにつけてあげて、フィガロと結婚させることにした。住みかを失って怒ってしまった伯爵夫人はケルビーノを連れ、遠く南国の地へとさっさと逃避行してしまった。こうなると、もう皇帝ティトゥスの慈悲にすがるしかない。伯爵の悩みはまだまだ続くのであった。

*お知らせ

諸事情により、しばらくこのブログを休止することとしました。また、いつの日か、この場でお会いしたいと思います。それまで、皆さん、どうぞお元気で。

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2008/03/29

『魔笛』(ザルツブルク音楽祭)

Dvdzauberflotesalzburg DVDライブラリーより。

ムーティとウィーン・フィルが組んだ『魔笛』ということで、重厚感溢れるモーツァルトが展開される。ダムラウの夜の女王のアリアも随分堅牢で、がっしりとした印象。舞台上は車や飛行機まで登場するが、原色が咲き乱れ、ごてごてとした美術には深みがなく、至極単純な作りになっている。魔笛アレルギーを持つ私のような人間には、ちょっとご勘弁、という舞台。振付で田中泯が参加している。

★★★

ザラストロ:ルネ・パーペ
タミーノ:ポール・グローヴズ
パミーナ:ゲニア・キューマイア
パパゲーノ:クリスティアン・ゲルハーヘル
パパゲーナ:イレーナ・ベスパロヴァイテ
夜の女王:ディアナ・ダムラウ
その他

合  唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指  揮:リッカルド・ムーティ
振  付:田中泯
美  術:カレル・アッペル
演  出:ピエール・オーディ

[  収録:2006年7・8月、ザルツブルク祝祭大劇場  ]

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2008/03/15

『オルフェオ』(トゥルコワン市立劇場)

Dvdorfeomalgoire DVDライブラリーより。

トゥルコワンでのマルゴワールの映像は『アグリッピーナ』に次いで2本目だが、今回の『オルフェオ』は出来としては前作に及ばない。音楽も、そしてマルゴワール自身が共同演出に携わったその舞台も、ともに微妙な停滞感が漂っている。簡素な舞台が悪いわけじゃない。結末のオルフェオがバッカスの巫女に殺されるという趣向が気にいらないわけでもない。歌手だって揃っている。いや、音楽だって、よく聴けばしっかりとしている。だが、出だしの意味のない歌い分け、そして舞台上のまったく演出が施されていない部分の多さにほとほと気が滅入ってしまうのだ。指揮者が音楽全体に責任を負うように、演出家は舞台全体に心を配って然るべき。それなのに・・・。舞台上の人間もどうしていいのか分からず、途方にくれている。

★★

オルフェオ:コビー・ファン・レンスブルク
エウリディーチェ:シリル・ジェルスタンハーバー
使者:エステル・カイク
希望:フィリップ・ジャルースキ
カロンテ:ルノー・ドレーグ
プロセルピーナ:デルフィーヌ・ジロ
プルトーネ:ベルナール・ドゥレトレ
アポロ:フィリップ・ラビエ

管弦楽・合唱:ラ・グランド・エキュリ・エ・ラ・シャンブル・デュ・ロワ
合唱指揮:エリーザベト・ガイガー、セバスティアン・デラン
指  揮:ジャン=クロード・マルゴワール
装置・照明:ジャッキー・ロテン
振  付:ロゼール・モントロ・ギュベルナ、ブリジット・セス
衣  裳:クリスティーヌ・ラボ・パンソン
メーキャップ:モード・バロン
ヘアメイク:ラシェル・ルヴィユ
演  出:ジャン=クロード・マルゴワール、ジャッキー・ロテン

[  収録:2004年10月、トゥルコワン市立劇場  ]

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2008/03/01

『イドメネオ』(ザルツブルク音楽祭)

Dvdidomeneosalzburg DVDライブラリーより。

シンプルなセットの中に光のラインを巧みに取り入れたスタイリッシュな舞台。海神ネプチューンを舞台上に登場させて緊張感を高めるなど、ヘルマン夫妻の演出の冴えが光っている。その中で、充実した歌唱の数々を繰り広げる歌手たち。コジェナー、シウリナ、ハルテロスの女声3人組は皆安定しているし、題名役のヴァルガスもそこに重しを加え、全体を引き締めている。ノリントンが付ける音楽も流れがよく、モーツァルトのオペラ・セリアに新鮮な響きをもたらしている。

★★★★

イドメネオ:ラモン・ヴァルガス
イダマンテ:マグダレーナ・コジェナー
イリア:エカテリーナ・シウリナ
エレットラ:アニヤ・ハルテロス
アルバーチェ:ジェフリー・フランシス
司祭長:ロビン・レガーテ

合  唱:ザルツブルク・バッハ合唱団
管弦楽:カメラータ・ザルツブルク
指  揮:ロジャー・ノリントン
装置・衣裳:カール・エルンスト・ヘルマン
演  出:ウルゼル・ヘルマン
      カール・エルンスト・ヘルマン
共同制作:バーデン・バーデン祝祭劇場

[  収録:2006年8月、ザルツブルク・モーツァルト劇場  ]

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2008/02/16

『ボエーム』(サンフランシスコ歌劇場)

Dvdbohemesf DVDライブラリーより。

昨年亡くなったパヴァロッティの50歳代前半のときの『ボエーム』の映像。共演者もフレーニを始めとして、キリコ、ギャウロフなど、豪華な陣容が揃っている。舞台は極々スタンダードな作りで、歌手たちもさすがに手馴れた感じがする。パヴァロッティのロドルフォは、79年のスカラ座のライヴの方が若々しさがあって私は好きだが、ここに聴く落ち着いたパヴァロッティというのも、これはこれで感慨深いものがある。

★★★☆

ミミ:ミレッラ・フレーニ
ロドルフォ:ルチアーノ・パヴァロッティ
マルチェルロ:ジーノ・キリコ
コルリーネ:ニコライ・ギャウロフ
ショナール:ステファン・ディクソン
ムゼッタ:サンドラ・パチェッティ
ベノア/アルチンドロ:イタロ・ターヨ

合  唱:サンフランシスコ歌劇場合唱団
管弦楽:サンフランシスコ歌劇場管弦楽団
指  揮:ティツィアーノ・セヴェリーニ
演  出:フランチェスカ・ザンベッロ

[  収録:1988年、サンフランシスコ歌劇場  ]

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2008/02/02

『ポントの王ミトリダーテ』(ザルツブルク音楽祭)

Dvdmitridate DVDライブラリーより。

モーツァルトが14歳の若さで初めて書き上げたオペラ・セリアが、構成に手を加えられ、ミンコフスキとクレーマーのコンビによって現代的な息吹をもって立ち現われた。開閉式のパネルで組み立てられた壁の前に狭い演技スペースがあり、上部に斜めに掲げられた鏡面で人物たちの動きを二重に増幅して見せる。鏡を使った演出は最早珍しいものではないが、ここではコンパクトな舞台をダイナミックに見せることに成功している。野戦服姿のミトリダーテ、現代服姿のアスパージアやシーファレたち。舞台は原作のラシーヌの世界からは随分と離れてしまったが、不思議と違和感がない。その中で、ザルツブルクでは馴染みになったミンコフスキが、手兵のルーヴル宮音楽隊を導いて、軽快、かつ颯爽と音楽を紡いでドラマを盛り上げていく。前年の2005年度に初演されたプロダクションということもあって、アンサンブルも練られ、完成度は高い。とりわけ、清澄な中にもしっとりとした情感を表出するシーファレ役のミア・ペションとアスパージア役のネッタ・オルの二人と、そして声を張る場面でもスタイルが崩れない題名役のリチャード・クロフトがいい。

★★★★

ミトリダーテ:リチャード・クロフト
アスパージア:ネッタ・オル
シーファレ:ミア・ペション
ファルナーチェ:ベジュン・メータ
イズメーネ:インゲラ・ボーリン
マルツィオ:コリン・リー
アルバーテ:パスカル・ベルタン

管弦楽:ルーヴル宮音楽隊
指  揮:マルク・ミンコフスキ
演  出:ギュンター・クレーマー

[  収録:2006年8月、ザルツブルク・レジデンツホーフ  ]

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2008/01/19

『タンホイザー』(東京のオペラの森)

Tokyo_opera_nomori2007 DVDライブラリーより。

1861年パリ版による小澤&カーセンのタンホイザー。というわけで、またもやカーセンの妄想演出が炸裂する。が、今回のは話の筋がわりと通っているほう。物語は吟遊詩人ならぬ、現代画家、タンホイザーのお話。ヴェーヌスのもとで快楽に耽り、裸体画ばかり描いていたタンホイザーがウォルフラムたちのところへ舞い戻ってくる。そこで開かれた新作絵画の品評会の場で、彼の秘密が明らかになる、といった按配。エリーザベトの死を経て、最後はタンホイザーの絵が大人気を博し、ボッティチェッリやティツィアーノなどの数々の裸体画の名画と並び称される、というオチがついて、幕。歌手の中では題名役のグールドと、エリーザベト役のフドレイがとくに気に入りました。グールドは恰幅もよく、若々しい覇気があり、フドレイは表現の幅もあって、ニュアンスが豊か。病み上がりの小澤の指揮は堅実で、力みがない。

★★★

ヘルマン:アンドレア・シルベストレッリ
タンホイザー:ステファン・グールド
ウォルフラム:ルーカス・ミーチェム
ワルター:ジェイ・ハンター・モリス
ビテロルフ:マーク・シュネイブル
ハインリヒ:平尾憲嗣
ラインマル:山下浩司
エリーザベト:ムラーダ・フドレイ
ヴェーヌス:ミシェル・デ・ヤング
牧童:湯浅桃子

合  唱:東京のオペラの森合唱団
合唱指揮:ペーター・ブリアン
管弦楽:東京のオペラの森管弦楽団
指  揮:小澤征爾
装  置:ポール・スタインバーグ
衣  裳:コンスタンス・ホフマン
照  明:ロバート・カーセン、ペーター・ヴァン・プラット
振  付:フィリップ・ジェラドゥ
演  出:ロバート・カーセン
共同制作:パリ国立歌劇場、バルセロナ・リセウ歌劇場

[  収録:2007年3月18日、東京文化会館大ホール  ]

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2008/01/05

『トロヴァトーレ』(ブレゲンツ音楽祭)

Dvdtrovatorebregenzer DVDライブラリーより。

地球温暖化問題などどこ吹く風のロバート・カーセン演出、炎のトロヴァトーレ。というわけで、のっけから笑えます。時は200X年、マシンガンを手にした兵士ガードマンたちが守りを固める湖上の要塞製鉄所(火力発電所?製油工場?)を舞台にした空想愉快オペラ。想像力、というよりは、忍耐力を試されているような舞台です。音楽はまともなんだけどね。富と繁栄を製鉄所と車一台で表現し、一方、それと対峙しているのが、CO2削減を目指して立ち上がった(嘘)ジプシーならぬ、マシンガンを抱えたテロリスト系ゲリラ集団。その期待を背負うのは、アウトローなダイハード男、マンリーコ。笑いに次ぐ笑いの連続で、見てて疲れました。振付もカッコ悪いことこの上なし。これ、大ケッサクだね(笑)。

★★

レオノーラ:イアノ・タマール
アズチェーナ:マリアンネ・コルネッティ
イネス:ディアンナ・ミーク
マンリーコ:カール・タナー
ルーナ伯爵:ジェリコ・ルチッチ
フェランド:ジョヴァンニ・バッティスタ・パローディ
ルイス:ホセ・ルイス・オルドネス

合  唱:モスクワ室内合唱団
      ブレゲンツ音楽祭合唱団
管弦楽:ウィーン交響楽団
指  揮:トーマス・レスナー
振  付:フィリップ・ジロドー
美  術:ポール・スタインバーグ
ドラマトゥルク:イアン・バートン
演  出:ロバート・カーセン

[  収録:2006年8月9・13日、ブレゲンツ・ボーデン湖  ]

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2007/12/15

『ローエングリン』(バーデン・バーデン祝祭劇場)

Dvdlohengrinbadenbaden DVDライブラリーより。

ケント・ナガノとレーンホフのコンビによる『ローエングリン』。バーデン・バーデン祝祭劇場、ミラノ・スカラ座、及びリヨン国立歌劇場による共同制作のプロダクションだ。今更という気がするが、全体がいっちゃった女、エルザの妄想物語として展開する。基本的にはありきたりの現代版。だが、銀色でピカピカ輝くスーツにネクタイといういでたちで、左手にしっかり剣を携えて出て来るローエングリンなんかを見てしまうと、演出そのものがいっちゃってることを痛感する。ローエングリン役で世評の高いフォークトはまるで生気も存在感もなく、さながらロボットみたい。全体が妄想、というより、全体が戯画で終わってしまっている。ケント・ナガノの付ける音楽にはためがないので、ワーグナーらしい腰が据わった厚い響きが生まれず、薄っぺらい印象が残る。

★★

ハインリヒ王:ハンス・ペーター・ケーニヒ
ローエングリン:クラウス・フロリアン・フォークト
エルザ・フォン・ブラバント:ソルヴェイグ・クリンゲルボーン
テルラムント:トム・フォックス
オルトルート:ワルトラウト・マイヤー
式部官:ロマン・トレケル

合  唱:マインツ・ヨーロッパ合唱協会
      リヨン国立歌劇場合唱団
管弦楽:ベルリン・ドイツ交響楽団
指  揮:ケント・ナガノ
美  術:シュテファン・ブラウンフェルス
演  出:ニコラウス・レーンホフ

[  収録:2006年6月3・5・7日、バーデン・バーデン祝祭劇場  ]

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2007/12/01

『ランメルモールのリュシー』(リヨン国立歌劇場)

Dvdlucielyon DVDライブラリーより。

フランス語版の『ルチア』。元々暗い話だが、よりいっそう暗い舞台で雰囲気を醸し出している。2002年当時のドゥセイといえば、手術前で、その声も若干重みを帯びてきた時期のようだが、それがちょうどリュシー役には相応しく、胸を打つ歌唱の数々を披露している。フランス語でこのオペラを聴くと流麗になり過ぎる嫌いがあるような気もするが、ピドの巧みな指揮によって、合唱ともどもドラマチックに盛り上がりを見せていて、違和感はあまり感じさせない。

★★★☆

リュシー:ナタリー・ドゥセイ
エドガール・ラヴェンスウッド:セバスティアン・ナ
アンリ・アシュトン:リュドヴィク・テジエ
アルテュール卿:マルク・ラオ
レーモン:ニコラス・カヴァリエ
ジルベール:イヴ・セーラン

合   唱:リヨン国立歌劇場合唱団
管弦楽:リヨン国立歌劇場管弦楽団
指  揮:エヴェリーノ・ピド
演   出:パトリス・コーリエ、モーシュ・レーゼル

[  収録: 2002年1月、リヨン国立歌劇場  ]

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