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2007/07/21

『夏の嵐』

夏休み・特別研究レポートNo.1

Dvdnatsunoarashi ▼ルキノ・ヴィスコンティ《夏の嵐》
(イタリア、1954)
Luchino VISCONTI, SENSO

アリダ・ヴァッリ(リヴィア・セルピエリ伯爵夫人)
ファーリー・グレンジャー(フランツ・マーラー軍曹)
ハインツ・モーク( セルピエリ伯爵)
マッシモ・ジロッティ(ロベルト・ウッソーニ侯爵)
リナ・モレッリ(小間使いラウラ)
クリスチャン・マルカン(ボヘミア士官)
セルジョ・ファントーニ(ルカ)
ティノ・ビアンキ(メウッチ将軍)
アーネスト・ナドハーニー(ヴェローナ市広場監督官)
トニーノ・セルワート(クライスト将軍)
マルチェッラ・マリアーニ(娼婦クララ)
クリストフォロ・デ・ハルトゥンゲン(ハウプトマン将軍)
マリアンヌ・リーブル(将軍の妻)
アニータ・チェルクェッティ(レオノーラ: 《イル・トロヴァトーレ》)
ジノ・ペンノ(マンリーコ: 《イル・トロヴァトーレ》)


監督:ルキノ・ヴィスコンティ
(助監督:ディノ・リージ、フランコ・ゼフィレッリ、ジャン=ピエール・モッキー、アルド・トリオンフォ、ジャンカルロ・ザーニ)
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ、スージ・チェッキ・ダミーコ、カミーロ・ボイト、カルロ・アリアネッロ、ジョルジョ・バッサーニ、ジョルジョ・プロスペリ、テネシー・ウィリアムズ、ポール・ボウルズ
撮影:ロバート・クラスカー、アルド・グラツィアーティ
音楽:アントン・ブルックナー(《交響曲第七番》:フランコ・フェラーラ指揮イタリア放送管弦楽団)、ジュゼッペ・ヴェルディ(《イル・トロヴァトーレ》)
編集:マリオ・セランドレイ
音響:アルド・カルピーニ、ヴィットリオ・トレンティーノ
美術:オッタヴィオ・スコッティ(セット:ジノ・ブロージオ;衣裳:マルセル・エスコフィエ、ピエロ・トージ)

ヴィスコンティ特集の初っ端は《夏の嵐》。だが、いきなり失敗したなと思ったのは、この映画、DVDなんかで見るべきものじゃないな、ということを強く感じました。「映像美」なんて言葉が陳腐なぐらい、構成感のある美しい映像に、ブルックナーの7番。こういうのはやはり映画館のスクリーンで見てこそでしょう。その切迫感が違う。というわけで、テレビの画面では正直苦しかったです。

前半の舞台になるヴェネツィアは個人的にも行ったことがある場所なので、郷愁を覚えます。とりわけ、冒頭のフェニーチェ歌劇場!とはいっても、火事で消失してしまう前のこの歌劇場には実際には一度も中に入ったことがなかったのですが。というか、その建物の前にも立ったことがない。なにせ、道が分からず、たどり着けなかったもんで・・・(恥)。というわけで、憧れのフェニーチェでの《トロヴァトーレ》の舞台をしばし疑似体験。これが面白いですねえ。生き生きとした舞台。それを伝える映像。ブライアン・ラージよ、これを20年ぐらい毎日繰り返し見なさい!(笑)そしてビラが劇場で乱舞するシーンの鮮やかさときたら!のっけから見るものをフィルムの中に引きずり込むヴィスコンティの魔術がそこにあります。

ストーリー的にはとことんメロドラマしていますが、ヴェネツィア貴族の伯爵夫人であるリヴィアと、占領軍であるオーストリア=ハンガリー帝国の青年将校、フランツとの道ならぬ恋。ともに衰退に向かいつつある者同士の危うい関係が語られていきます。その中で、たった一つの言葉のやりとりで、その人物たちが置かれている状況や人間関係までがあらわになってしまいます。

リヴィア:「ヘアピンを取って」
フランツ:「奥様、私は召し使いではありません」

貴族としてのリヴィアの支配願望と、軍人としてのフランツの独立志向とが刹那的に激しくぶつかり合う印象的な瞬間です。世の中にも多く見られる、お嬢様族のいいなりになる僕(しもべ)みたいな男たち。ああいう関係には絶対この二人はなりません(笑)。もともとこの二人、最初に言い寄ったのはフランツのほう。リヴィアのほうは相手にするつもりはなかったけれど、やがてフランツと深い関係を持つ。そうすると、リヴィアはフランツを支配しようとする。が、フランツは名うてのプレイボーイ。そうそう簡単には言いなりにならない。というわけで、この二人の緊張関係がこのメロドラマの推進力になっています。そして最後に待つのは、男の死。それも、リヴィアの密告による銃殺刑。これは《トスカ》の逆ヴァージョンみたいなものでしょう。滑稽で、かつ恐ろしい人間たち・・・。ヴィスコンティは哀しい。

*CineKen2-FORUMのアーカイヴをご参照下さい。こちらです。

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コメント

 …いえいえ、リンクはむしろこっち↓へどうぞ!

http://orfeo.cocolog-nifty.com/orfeoblog/2006/07/post_cf5e.html

 keyakiさんのこういうコメント↓が入ってるんで、あの復讐戦をやってるよ(笑)。

keyakiさん:
>>『夏の嵐』って、恥ずかしながら、なぜかこれまで見た
>>ことがないですね

>うっそーーー! そりゃ恥、恥、恥ですよ。(笑)

…とバラして、大爆笑!
CineKen2

投稿: CineKen2 | 2007/07/23 10:51


・・・思い出したくない記憶を呼び覚ましましたね(笑)。
まあ、あんときから、ヴィスコンティ特集やらねば、と思っていたんですけどね。
続くかな?

投稿: Orfeo | 2007/07/23 12:07

ルキノ・ヴィスコンティ=オペラ演出記録
(モニカ・スターリング=著、上村達雄=訳『ルキーノ・ヴィスコンティ〜ある貴族の生涯』平凡社、1982より:キャストはオリジナルのままで補ってません。固有名詞の日本語表記は、明らかに間違っている場合訂正してあります。)
==========================
▼スポンティーニ《ラ・ヴェスターレ》
美術&衣裳:ピエロ・ズッフィ
指揮=アントニーノ・ヴォット:フランコ・コレッリ、マリア・カラス
1954年12月ミラノ・スカラ座

▼ベッリーニ《夢遊病の女》
美術&衣裳=ピエロ・トージ
指揮=レナード・バーンスタイン:ジュゼッペ・モデスティ、マリア・カラス、ガブリエラ・カルトゥーラン、チェーザレ・ヴァレッティ
1955年3月ミラノ・スカラ座

▼ヴェルディ《椿姫》
美術&衣裳=リラ・デ・ノービリ、振付=ルチアナ・ノヴァーロ
指揮=カルロ=マリア.ジュリーニ:マリア・カラス、シルヴァーナ・ザノーリ、ルイザーリラ・デ・ノービリ
1955年5月ミラノ・スカラ座

▼《マリオと魔術師》(原作=トーマス・マン、脚色=ルキノ・ヴィスコンティ)バレエ
出演=ジャン・バビレ
1956年2月ミラノ・スカラ座

▼ドニゼッティ《アンナ・ボレーナ》
美術&衣裳=ニコラ.ブノワ
指揮=ジャンアンドレア・ガヴァッツェーニ:ニコラ・ロッシ=レメニ、マリア・カラス。ジュリエッタ・シミオナート
1957年4月ミラノ・スカラ座

▼グルック《トーリードのイフィジェニー》
美術&衣裳=ニコラ・ブノワ、振付=アルフレード・ロドリゲス
指揮=ニーノ・サンツォーニョ:マリア・カラス、ディーノ・ドンディ、フランチェスコ・アルバネーゼ
1957年6月ミラノ・スカラ座

▼ルキノ・ヴィスコンティ《ダンス・マラソン》(台本=ルキノ・ヴィスコンティ)バレエ
出演=ジャン・バビレ、マリオン・シュネル
1957年9月西ベルリン、ドイツ歌劇場

▼ヴェルディ《ドン・カルロ》
美術=ルキノ・ヴィスコンティ&マウリッツィオ・キャーリ、衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ&フィリッポ・サンユスト
指揮=カルロ=マリア.ジュリーニ:ボリス・クリストフ、ジョン・ヴィッカーズ、ティート・ゴッビ、1958年5月ロンドン・コーヴェント・ガーデン

▼ヴェルディ《マクベス》
美術&衣裳=ピエロ・トージ
指揮=トーマス・シッパーズ:カルミーネ・トーレ、ウィリアム・チャップマン、フェルッチョ・マッツォーリ、シャケ・ッヴァルテニシアン
1958年6月スポレト二世界演劇祭、テアトロ・ヌオヴォ

▼ドニゼッティ《アルバ公爵》
美術=カルロ・フェラーリオ、美術&衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ&フィリッポ・サンユスト
指揮=トーマス・シッパーズ:ルイ・キリコ、ヴラディミロ・ガンザロッリ
1959年6月スポレト二世界演劇祭、テアトロ・ヌオヴォ

▼R・シュトラウス《サロメ》
美術&衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ、振付=アーサー・ミッチェル
指揮=トーマス・シッパーズ:ジョージ・シャーリー、リリー・チュッカシアン、マーガレット・ティネス、ロバート・アンダーソン
1961年6月スポレト二世界演劇祭、テアトロ・ヌオヴォ

▼《庭園の悪魔》(作=ルキノ・ヴィスコンティ、フィリッポ・サンユスト&エンリコ・メディオーリ、音楽=フランコ・マンノーニ)
美術&衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ&フィリッポ・サンユスト
指揮=フランコ・マンノーニ:ヨランダ・ガルディーノ、クラウコ・スカルディーニ、エンリコ・カンピ
1963年2月、パレルモ、マッシモ歌劇場

▼ヴェルディ《椿姫》
美術=ルキノ・ヴィスコンティ(フェルディナンド・スカルフィオッティ)、衣裳=ピエロ・トージ、ビーチェ・ブラケット、振付=ローダ・レヴィン
指揮=ロベルト・ラ・マルキーナ:フランカ・ファブリ、ダニエラ・ディナート
1963年6月スポレト二世界演劇祭、テアトロ・ヌオヴォ

▼モーツァルト《フィガロの結婚》
美術&衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ&フィリッポ・サンユスト、振付=アッティリア・ディーチェ
指揮=カルロ=マリア・ジュリーニ:ウーゴ・トラマ、イルヴァ・リガーブエ、ロランド・パネライ、マリエラ・アダーニ
1964年5月、ローマ歌劇場

▼ヴェルディ《イル・トロヴァトーレ》
美術&衣裳=ニコラ・ブノワ
指揮=ジャンアンドレア・ガヴァッツェーニ(スカラ座管&合唱団):ピエロ・カプッチッリ、ガブリエラ・トゥッチ、ジュリエッタ・シミオナート
1964年9月モスクワ・ボリショイ歌劇場

▼ヴェルディ《イル・トロヴァトーレ》
美術&衣裳=フィリッポ・サンユスト
ピーター・グロソップ、ギネス・ジョーンズ、ジュリエッタ・シミオナート
1964年11月ロンドン・コヴェント・ガーデン

▼ヴェルディ《ドン・カルロ》
美術&衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ
指揮=カルロ=マリア・ジュリーニ:チェーザレ・シエピ、ジャンフランコ・チェッケーレ、コスタス・パスカリス、1964年11月ロンドン・コヴェント・ガーデン

▼ヴェルディ《ファルスタッフ》
美術&衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ&フェルディナンド・スカルフィオッティ、振付=ガーリンデ・ディル
指揮=レナード・バーンスタイン:ディートリヒ・フィッシャー=ディスカウ、ロランド・パネライ、フアン・オンシーナ、1966年3月ウィーン国立歌劇場

▼R・シュトラウス《バラの騎士》
美術=ルキノ・ヴィスコンティ&フェルディナンド・スカルフィオッティ、衣裳=ヴェラ・マルツォー
指揮=ゲオルク・ショルティ:セナ・ユリナッチ、ジョゼフィーヌ・ヴィージー
1966年4月ロンドン・コヴェント・ガーデン

▼ヴェルディ《椿姫》
美術=ナート・フラスカ、衣裳=ヴェラ・マルツォー、振付=ピーター・クレッグ
指揮=カルロ=マリア・ジュリーニ:ミレッラ・フレーニ、アン・ハウウェルズ、エリザベス・バンブリッジ、レナート・チョーニ
1966年4月ロンドン・コヴェント・ガーデン

▼ヴェルディ《シモン・ボッカネグラ》
美術&衣裳=ルキノ・ヴィスコンティ&フェルディナンド・スカルフィオッティ
指揮=ヨーゼフ・クリップス:エバハルト・ヴェヒター、ニコライ・ギャウロフ、グンドゥラ・ヤノヴィッツ、1969年3月ウィーン国立歌劇場

▼プッチーニ《マノン・レスコー》
美術=リラ・デ・ノビリ&エミリオ・カルカーノ、衣裳=ピエロ・トージ&ガブリエラ・ペスクッチ
指揮=トーmナス・シッパーズ:ナンシー・シェイド、アンジェロ・ロメロ、ハリー・ゼイヤード、1973年6月スポレト二世界演劇祭、テアトロ・ヌオヴォ
以上、
きのけん


投稿: きのけん | 2007/07/23 12:50

ちょっと出遅れですが、私の「夏の嵐」の印象は「男版カルメン」でした(笑)

>ブライアン・ラージよ、これを20年ぐらい毎日繰り返し見なさい!(笑)
あのオペラシーンは良いですね!ぐっと引き込まれてしまいます。小さい画面では背景の細かいところが追いきれませんでしたが、このフェニーチェの場面だけ繰り返し見てしまったほど気に入りました。本当にラージにはこのカット割とカメラワークをじっくり研究して欲しいです

投稿: Sardanapalus | 2007/07/23 20:01


>Sardanapalusさん、

「男版カルメン」ねえ。なるほど、感じ方は人それぞれですね^_^;;

このオペラのシーン、いいですよね。躍動感があって、気に入りました!

投稿: Orfeo | 2007/07/24 08:58

▼イングリッド・バーグマンとマーロン・ブランド

 上のモニカ・スターリングの伝記によると、当初の計画では、この映画の主役二人はイングリッド・バーグマンとマーロン・ブランドだったんだって。バーグマンの方は旦那のロベルト・ロッセリーニがスター貸し出しを禁止したもんで使えなかったんだって(…といったって《恋多き女》 (仏、1956)のジャン・ルノワールにはちゃんと貸し出してるぜ!)。マーロン・ブランドの方は映画社側がファーリー・グレンジャーを押し付けたというんだけれど、こっちはどうだろうねえ?…、多分マーロン・ブランドだったら Sardanapalusさんおっしゃる「男版カルメン」にはならなかったと思うけど、ヴィスコンティ型のホモというのは、ああいうファーリー・グレンジャー・タイプの筋肉隆々の剣劇俳優タイプの大男というのが、もうものすごく好きだろ。バート・ランカスターがまさにその通りだし…、マーロン・ブランドだったら、きっとあんなに一生懸命に指導しなかったかもね。
 …バーグマンさんみたいな大根さんにはあの役は到底できなかったろうし、結局あのキャストはあれで良かったと思います。結局あの二人が一世一代の名演をやっちゃった。やっぱし、アリダ・ヴァッリさんは《第三の男》よりもこっちで記憶されるべき女優さんだろうと思うし…。
 うん、「男版カルメン」ねえ…(笑)。アリダ・ヴァッリさんみたいなのが、あんな馬鹿っぽい剣劇俳優に夢中になるもんか!なんて思うけど、やっぱしああいうのはヴィスコンティのホモ趣味なんだよね、きっと…。だから、ヴェネツィアのあんな瀟洒な貴族の女が、あんなカーボーイみたいなのに惚れちゃうわけがない…にもかかわらず、というわけなんだけれど、あのフィルムの魅力の一つは、ひょっとしてヴィスコンティにとっては無意識だったかもね?…。

cf. モニカ・スターリング=著、上村達雄=訳『ルキーノ・ヴィスコンティ〜ある貴族の生涯』平凡社、1982
CineKen2

投稿: CineKen2 | 2007/07/31 10:20


・・・う~ん、非常に重要な問題が含まれているようですね。そうなんですよ、だいたいからして、そもそもファーリー・グレンジャーって、ダサイじゃん?という問題が(爆)。ヴィスコンティの美意識についていけない部分ですね、私にとっては。こういう部分は、後の《ヴェニスに死す》を持ち出すまでもなく、ヴィスコンティ独自の性癖からきているのは、いかんともしがたい事実なんでしょうかね。単純化しすぎの嫌い、なきにしもあらずですが、こういうふうに見てしまうと、今後のヴィスコンティの見方まで限定されるようで怖いです。まあ、映画全体の出来は、当然それとは別次元の話として勘案しなければいけないでしょうが・・・。

投稿: Orfeo | 2007/07/31 16:09

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