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2007/06/02

『ホフマン物語』(パリ・オペラ座)

Dvdhoffmannparis DVDライブラリーより。

人間のさがというものは哀しいものです。共演者のシコフやセネシャルといった演技巧者に混じってしまうと、"彼"の大根ぶりがより一層明らかになってしまいます。身体全体を使って柔軟に演技するということができない彼は、目を中心とした顔面の筋肉運動~はっきり言って、睨むだけ~で演技しようとします。これで悪役らしい雰囲気が生まれればめっけものなんですが、残念ながら、がっしりとした体躯の上に付いているその可愛らしい瞳でいくら悪態をついても、まったく様になりません。虚勢をはっているのがみえみえで、痛々しいぐらいです。というわけで、私はターフェルという歌手が(あっ、言っちゃった!w)、どうにも苦手です。歌い手としての力量、というか、威力(?)は認めますが・・・。

もう一人、私が苦手なのが演出家カーセン。そのカーセンはここでは悪い癖が出て、小道具に頼りっぱなしです。こういうときのカーセンの舞台はまったくもって落ち着きがなく、つまらないものになります。バスチーユの舞台機構を巧みに取り入れたレヴァインの斬新な美術デザインはいい仕事だとは思いますが(同じコンビによる『カプリッチョ』には感心したけどなあ!)、カーセンはつまらないアイデアをあれこれ入れ込むことに夢中になっています。これがまったくもって面白くありません。とりわけオーケストラ・ピットと舞台を舞台上に二重に拵えたアントニアの第2幕は最悪。本人は面白いアイデアだと思ってしまったようですが、ターフェルの能面演技とあいまって、漫画にしか見えません。第3幕に至っては、睨むだけのターフェルがまさかまさかのサングラス。すべて消え去りました(笑)。

この『ホフマン』は、とにかくシコフに尽きると思います。彼の熱演のおかげで、女声陣もいささか影が薄い感じがします。唯一、ジュリエッタを歌ったユリア・モンゾンには独特の光彩があって、惹かれるところがありました。

★★★

ホフマン:ニール・シコフ
ミューズ/ニクラウス:スザンヌ・メンツァー
リンドルフ/コペリウス/ダッペルトゥット/ミラクル博士:ブリン・ターフェル
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:ミシェル・セネシャル
オランピア:デジレ・ランカトーレ
アントニア:ルース・アン・スウェンソン
ジュリエッタ:ベアトリス・ユリア・モンゾン
母の声:ノラ・ギュビッシュ
ナタナエル:ジャン・リュック・モレット
スパランザーニ:クリスティアン・ジャン
ヘルマン:ホセプ・ミケル・リボー
ジュレミル:ナイジェル・スミス
ルーテル/クレスペル:アラン・ヴェルンヘス
ステルラ:バンビ・フロケ

合  唱:パリ・オペラ座合唱団
管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団
指  揮:ヘスス・ロペス・コボス
美  術:マイケル・レヴァイン
演  出:ロバート・カーセン

[  収録:2002年10月9日、パリ・オペラ座  ]

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コメント

バーのカウンターの裏を見せたりで、アイデアてんこもりで、まあ、たいくつはしませんね。

ターフェルって、あの顔の大きさがなければ「ただの人」ってかんじですが、この悪漢4役は、4役に見えないってのが、演出家の意図なのかしら。記憶によれば、同じようないでたちだったような気がしますが、確かめるのが面倒なので違ってるかも、「どうせ、いろいろ衣裳を揃えてもあいつに着せたら同じに見えるぜ」とか演出家が思ったかどうかは知りませんが、そんな感じだったような...

>ジュリエッタを歌ったユリア・モンゾン
彼女、とてもきれいに撮れてましたね。
しかし、オペラ座の客席のようなものが揺れるって....

>シコフの熱演
2003年のザルツブルグ音楽祭のも凄かったです。なんで、こっちが放送されないんだろう?役者はそろっているのに。
NHKが放送しないのは、ホフマンが薬中のせいだと思いますが、アル中なら放送できて、薬中はダメなのかい、まったく〜 それとも裸がダメ?
マクビカー演出のほうが、おどろおどろしくて怪奇小説の雰囲気だし、最後の合唱が盛り上がって、けっこう感激するんですけどね。

投稿: keyaki | 2007/06/02 11:21

だれのことかしら・・楽しみ〜〜と思いながら読みました。見たと思うのですが、記憶に残ってません。

何が放送、DVD化されるかって、見当がつきません・・

投稿: edc | 2007/06/02 13:05


>keyakiさん
こんにちは。

うん、ターフェルの一本調子を逆手に取った演出なのかもね。でも、あんまりだから、サングラスでも掛けさせてみっか、みたいな・・・(笑)。

薬中のザルツブルクの公演を放送できないのは、過去、薬中のこうもり(やっぱりザルツブルク)を放送してしまって、批判を浴びたから、かもよ。

>edcさん
どうも。

NHKはどんどんマンネリ化しているように思いますね。勇気をもって、大胆な企画でもやってくれないかしら?

投稿: Orfeo | 2007/06/02 16:43

あは、やっぱりOrfeoさんカーセンは駄目ですか(^^)私はこの演出なかなか好きですが。まあ、その70パーセントくらいは美術が気に入ったというのが理由です。カラフルでギャグ漫画っぽいところが「酔っ払い男の昔の恋話」というテーマにぴったりかと。それに、カーセンの演出にしては舞台上の空間の密度が濃いじゃないですか(笑)もし見れるなら、私もkeyakiさんの仰っているマクヴィカーの演出で見たい!!です。

歌手に関してはターフェルだけ浮いてるように思いますが、あの柔軟性のない動きが逆に異質な存在としては有利な要素なのかもしれません。ちなみに、私も「悪四役」は同一人物(もしくは同一悪魔?)という設定だと思います。ユリア=モンゾンは不思議な魅力のある人ですよね。

>勇気をもって、大胆な企画
ボクシング・オテロとか?(笑)

投稿: Sardanapalus | 2007/06/02 18:44


>Sardanapalusさん
どうもです。

カーセンのアイデアに付き合うのは、時々馬鹿馬鹿しくなるので、やはり私は苦手です(笑)。

大胆な企画というのは、今までまったく放送してこなかったような類いのやつを期待しているんですが・・・。たとえば、バロック・オペラ特集!!やってくれ!(爆)

投稿: Orfeo | 2007/06/03 07:24

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