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2007年4月

2007/04/30

『夏物語』

Dvdconte_dete ▼エリック・ロメール《夏物語》
(フランス、1996)
Eric ROHMER, CONTE D'ETE

例によってストーリーその他の解説はCineKen2-エリック・ロメール特集におまかせします。こちらです。

ブルターニュの海に面した街でひと夏を過ごす若者たちの出会いと別れ・・・といったら、普通その間に激しく、かつ悲しい恋の物語が展開されると思うでしょうが、「アクション」を起こさないことで有名(?)なロメールがそんな陳腐な映画を撮るはずがありません。ここでも、院生同士のインテリの男女が、くっつきそうでくっつかないまま、ただしゃべり通します(饒舌の度合いはやや抑え気味ではありますが)。そこに他の女性二人が絡んできて・・・でも、結局なにも起こらない(笑)。そう、ディスクールがドラマ、ディスクールこそがアクション!(爆)これだけ分かっちゃえば、ロメールについてはもう十分なのかもしれません。ブルターニュの民俗風習を研究しているヒロイン、マルゴを演じているアマンダ・ラングレが実にいいです。他の二人の重要な女性たちよりも、とにかく彼女に惹かれました。僕はあなたに付いていきます(爆)。それにしても、そんなアマンダに見送られて連絡船で去っていく主人公ガスパール役のメルヴィル・プーポー君、おいしい役どころだなあ、オイ!

この映画は、とにかく、ノスタルジックな郷愁が全体を支配しているので、自分の青春時代を回想させる映画でもあります。私も、学生時代の夏休み、初めてロンドンに行ったとき、宿泊先として使ったのがヴィクトリア・ステーションそばの元は病院だったという建物で営業していたホステル。そこの大部屋で知り合ったスイス人の妙齢の女性と私はとても仲良くなり(男女同部屋だった!)、ある日の午後、デートの約束まで交わしたんだけど、結局彼女の都合でそれが実現しなかったので、夜宿舎で延々と謝られた。綺麗な上に真面目で素直ないい子だったなあ・・・。どうしているかなあ、彼女、今頃・・・(遠い日を見つめる目w)。うん、これも青春だ!そしてこれもまた、なにも起こらなかった!ロメールしてるな、オレ(爆)。

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2007/04/29

シューマン/チェロ協奏曲イ短調

Cdrostropovichberstein 追悼 ロストロポーヴィチ

巨星がまたひとつ、堕ちた。ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ。スケールの大きな音楽家だった。チェリストとしても、そして指揮者としても。

彼がチェリストとして全盛期にあった1970年代半ば、パリの地で今は亡きバーンスタインとともに録音したシューマンのチェロ協奏曲イ短調のディスクが手元にある。熱い演奏だ。芳醇なロマン主義の世界に没入する二人のマエストロ。小手先の技巧で表面を飾るのではなく、シューマンの晩年の傑作の、その「ハート」に迫る名演。渾身、入魂の音楽がそこにある。悠々と流れるシューマン。素晴らしい。かくも美しいディスクを残してくれたことに、我々はただただ感謝するしかない。安らかに眠られよ。

チェロ:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ
指 揮:レナード・バーンスタイン
フランス国立管弦楽団

ブロッホ/「シェロモ」-チェロと管弦楽のためのヘブライ狂詩曲
シューマン/チェロ協奏曲イ短調 作品129

[  録音:1976年11月、パリ  ]

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2007/04/28

『オテロ』(東京のオペラの森)

Ashitanojoe DVDライブラリーより。

ボクシングのリング上で繰り広げられる『オテロ』。ブレヒトの教えを言葉どおり忠実に実行したってか?それにしても、これはまた随分貧困な読み替えですねえ。この後、共同制作先のウィーンに持っていってやった公演ではミーリッツがかなり演出を手直ししてしまい、完全にトーンダウンしたそうな。そんな意気地のないことでいいのかね?やると決めたら最後まで闘いなさい(爆)。

オテロ:クリフトン・フォービス
デズデモナ:クラッシミラ・ストヤノヴァ
ヤーゴ:ラード・アタネッリ
エミリア:牧野真由美
カッシオ:マリアン・タラバ
ロデリーゴ:岡本泰寛
ロドヴィーコ:ダン・ポール・デゥミトレスク
モンターノ:山下浩司
伝令:成田眞

合  唱:東京のオペラの森合唱団、杉並児童合唱団
合唱指揮:宮松重紀
管弦楽:東京のオペラの森管弦楽団
指  揮:フィリップ・オーギャン
装置・衣裳:クリスチャン・フローレン
照  明:ルドルフ・フィッシャー
演  出:クリスティーネ・ミーリッツ

[  収録:2006年4月2日、東京文化会館大ホール  ]

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2007/04/26

チェルシー、先勝!

Uefacl_31 チャンピオンズリーグ 準決勝1st-leg
チェルシー 1-0 リバプール
得点【チ】J.コール(29)
準決勝のもう一組、チェルシーとリバプールの激突はホームのチェルシーがジョー・コールのゴールで先勝しました。リバプールとしては0-1というのは悪くないけれど、アウェイ・ゴールを上げておきたかったところですね。これが2nd-legでどう響くのか。来週のゲームは激戦必至です。

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2007/04/25

CL準決勝1st-leg!

Uefacl_30 チャンピオンズリーグ 準決勝1st-leg
マンチェスター・ユナイテッド 3-2 ACミラン
得点【マ】C.ロナウド(5)ルーニー(59,91)
   【ミ】カカ(22,37)
終了目前のロスタイムの失点で敗れたのは残念ですが、アウェイで2得点したのはミランにとって大きいですね。一度は逆転までしたんだから、マンUはかなり青くなったことでしょう。来週の2nd-legが楽しみです。頑張れ、ミラン!!

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2007/04/22

『手紙』

Dvdtegami ▼生野慈朗《手紙》(日本、2006)

東野圭吾原作。弟、直貴(山田孝之)の大学進学費用を作るために、誤って殺人を犯してしまった剛志(玉山鉄二)は無期懲役の刑で収監されてしまう。それ以来、直貴は犯罪者の弟として世の差別に晒されることになる。そんな弟に剛志は獄中から手紙を送り続けるが、直貴は度重なる悲劇に絶望していく。耐え切れず自暴自棄になる直貴を、深い絶望の底から救ったのは、かって同じ職場で勤めていた由美子(沢尻エリカ)の存在だった。しかし、そのささやかな幸せが再び脅かされるようになったとき、直貴は重大な決意をする・・・。

最近見た邦画の中では(といっても、少ないけどw)群を抜く出来の作品だと思う。少々展開が見え見えのところがあるものの、無理のない流れの中で見るものを引きつけながら、クライマックスまで一気にもっていくところなんかは、なかなか上手い。湿り気たっぷりのお話の中に「漫才」を取り入れて風通しをよくして、最後にはちゃんとカタルシスもある。人物描写がちょっと表面的すぎる嫌いはあるが(とくに由美子!)、いい映画を見たなあ、そんな気にさせてくれる佳作だ。見終わったら、あなたも「手紙」を書きたくなるかもしれません(?)。まだ見てない人はレンタル・ショップへGo!(笑)

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2007/04/21

『ジューリオ・チェーザレ』(グラインドボーン音楽祭)

Dvdgiulio_cesare DVDライブラリーより。

3幕からなるヘンデルの歌劇。台本はニコラ・フランチェスコ・ハイム、初演は1724年ロンドン(ストーリーはdognorahさんの記事を参照のこと)。

グラインドボーンの劇場に合わせた、というよりも、その予算に合わせたシンプルな構成の舞台だが、バランスが取れていて、とても美しい美術だ。奥に海が見えていて、そこを船が行き来するのが見えるのがなんとも可愛らしい(笑)。冒頭マクヴィカーにしては珍しく、比較的明るい照明のシーンも出て来るが、その後はいつもどおりに舞台は暗くなる。それでも、場面に応じて微妙に暗さを調節して変化を付けるなどしているので、単調に陥ることはない(船も影絵模様になったりする)。人物たちも綺麗に浮かび上がらせているので、大変見易い舞台に仕上がっている。マジックショーの趣向には驚いたが、音楽とよく調和していて面白い。マクヴィカーのセンスの良さを感じる部分だ。音楽面でもクリスティが全体をそつなくまとめ上げ、上質のパフォーマンスを楽しむことが出来る。キルヒシュラーガーのセストが素晴らしい。

★★★☆

ジューリオ・チェーザレ:サラ・コノリー
クリオ:アレグザンダー・アシュワース
コルネリア:パトリシア・バードン
セスト:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
クレオパトラ:ダニエル・デ・ニース
ニレーノ:ラシド・ベン・アブデサラーム
トロメーオ:クリストフ・デュモー
アキラ:クリストファー・マルトマン

合  唱:グランインドボーン合唱団
管弦楽:エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団
指  揮:ウィリアム・クリスティ
美  術:ロバート・ジョーンズ
演  出:デーヴィッド・マクヴィカー

[  収録:2005年8月14・17日、グラインドボーン音楽祭歌劇場  ]

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2007/04/20

『ヒズ・ガール・フライデー』

Dvdhis_girl_friday_2 ▼ハワード・ホークス《ヒズ・ガール・フライデー》
(アメリカ、1940)

LDによる上映会にて視聴。シカゴ・エグザミナー紙の敏腕女性記者ヒルディ・ジョンソン(ロザリンド・ラッセル)は自分と離婚したばかりの編集長ウォルター・バーンズ(ケイリー・グラント)のもとを訪ね、堅実なサラリーマンのブルース・ボールドウィン(ラルフ・ベラミー)と結婚してこの町を離れる意志を伝えるが、未練たらたらのウォルターは彼女に、明朝警察官殺しで処刑されるアール・ウィリアムズ(ジョン・クオレン)の記事を書かせることで了解を得る。取材に出たヒルディはアールが実は無実であったことを知るが、選挙を控える市長(クラレンス・コルブ)は凶悪犯を処刑することで人気を得ようと目論んでいた・・・。

なんか、ロメールなんて甘い甘い、っていうぐらいに台詞が機関銃のごとく飛び交う強烈なコメディ映画です。全編しゃべりっとおし!ロメールのが哲学的、思索的会話なのに対し、こちらは躁病的ハレ状態。まさにこのテンポは英語ならではでしょう。こういう映画は、黙って見ていてもちっとも面白くない!笑い転げ、野次りながら見るに限るね。しかし、さすがにこのスピードに付いていくのは、ちとシンドイなあ。ああ、アメリカ人・・・は嫌だから、英国人あたりになりたい(笑)。それにしても、台詞も演出も、実に上手い!グラントもラッセルも絵になるし、ホークスの絵がまたお洒落。パワーもあるし、ホークスって、かなり面白いなあ!(・・・また言ってるよw)

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2007/04/16

FAカップ準決勝!

Fa_cup_1_6FAカップ 準決勝
ワトフォード 1-4 マンチェスター・ユナイテッド
得点【ワ】ブアッザ(26)
   【マ】ルーニー(7,66)ロナウド(28)リチャードソン(82)
CLのローマ戦で大爆発したマンUが、そのままの勢いで快勝しました。ファーガソン監督は今すぐ決勝戦を戦いたいかもね。でも、リオ・ファーディナンドが負傷だよ・・・

ブラックバーン 1-2 チェルシー
得点【ブ】ロバーツ(63)
   【チ】ランパード(16)バラック(109)
ランパードのゴールで前半先制したチェルシーでしたが、後半、セットプレーのチャンスからブラックバーンに同点ゴールを決められ(右サイドから入ったFKをニアサイドに走り込んだロバーツが足でコースを変えました。あれはツェフも止められんな)、延長に。でも、最後はやはりチェルシー。ゴール前でのこぼれ球をバラックが押し込んで、決勝ゴール。粘るブラックバーンを突き放し、マンUが待つ決勝へと名乗りを上げました。

やはり決勝はマンU×チェルシー。リーグ戦での対戦もあるし、ひょっとしてCL決勝もこの両チームの対戦になる可能性があるし、なんだか因縁めいてきましたね。破壊的な攻撃力を誇るマンUと、ディフェンスが安定してきたチェルシー。5月19日の決勝戦が楽しみです。

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2007/04/15

『我、汝に為すべきことを教えん』

Warenanjini ▼アーサー・M・アーベル
《我、汝に為すべきことを教えんー作曲家が霊感を得るとき》
(訳/吉田幸弘、春秋社、2003年)

アメリカの音楽ジャーナリストであるアーベルが、ブラームス、リヒャルト・シュトラウス、プッチーニ、フンパーディンク、グリーグ、ブルッフといった作曲家たちと交わした対談を元にした著作(原本は1955年、アメリカの出版社から刊行された)。作曲家たちが傑作を生み出すとき、彼らの内部ではいったいなにが起こっているのか?その秘密を作曲家自身が赤裸々に語っていて、非常に興味深い。とりわけ、ブラームス!これはもう完全な信仰告白に違いない。ゆえに、ブラームスはこの本を自分の死後50年経つまでは公けにしないように求めたほどだ(*ブラームスは1897年に死去)。彼ら作曲家が、なにものかに導かれるがごとく~啓示/霊感/インスピレーションを受けて~名曲を作り出す。己を超えたものに衝き動かされながら、その持てる技量を駆使して作品を生み出していくその過程は実に神秘的で、感動的でさえある。それはなんと尊い作業であることか!今日読んでも衝撃を受け、かつ学ぶところの多い著作である。短いが、フンパーディンクがワーグナーについて語っている部分も見逃せない。音楽に興味がある人に、否、そうでない人にも、是非読んでほしい一冊だ。

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2007/04/14

オペラ春物語

(*注意)これは、オペラに関するパロディ論考/寸劇風です。勘違いして鵜呑みにしないように!

「オペラ春物語」

(とある都内の大学の構内にて)

太郎=やあ、花子。

花子=あら、太郎君。どうしたの、今日は?おめかしなんかしちゃって。

太郎=いや、なに、これから新国立劇場にオペラを見に行くんだよ。

花子=あら、それで。なるほどねえ。でも、珍しいじゃない?歌舞伎ファンのあなたがオペラを見に行くだなんて。

太郎=いやいや、お恥ずかしい。最近ちょっとオペラにもハマっててね。

花子=へえ~、そうなんだ。

太郎=なにね、オペラと歌舞伎は成立年代から内容から非常に似た点が数多いんだけれど、歌舞伎と違って、オペラってやつは、音を聴くだけじゃさっぱり面白くねえからさ!やっぱり、その綜合芸術としての舞台をちゃんと見てこそ楽しめるってわけ。だから絶対劇場に足を運ぶか、DVDで鑑賞するにかぎるんだ。CD?なにが面白いんだか?あんなの聴いているやつの気がしれんね。アハハハハハ・・・

花子=そうね、歌舞伎に限らず、能、狂言、文楽といった日本の伝統芸能は、「見に行く」とは言わず、「聴きに行く」というぐらいですからねえ!素晴らしい世界よね、あの「音」は。それにひきかえオペラときたら、やたら派手で、遅れてるわよね。

太郎=だろ?まったく欧米の文化なんて、なんとも底が浅いもんさ!ガハハハハハ・・・

花子=そんなことを大声で言って馬鹿笑いしていると、国際紛争が起きるわよ。いいかげんにしときなさい!

太郎=たしかに!グフフフフフ・・・

花子=ほら、また!

太郎=ゴメン、ゴメン。じゃ、ちょっくら行って楽しんでくるよ。

花子=劇場の中で笑っちゃだめよ。じゃあね。行ってらっしゃい!

(二人、別れる)

(結)

(以上は、ある音楽評論に触発されて書いたパロディです。なんのパロディか分かった人、あなたはエライ!w)

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2007/04/12

CL準々決勝2nd-leg

Uefacl_29 チャンピオンズリーグ 準々決勝2nd-leg
マンチェスター・ユナイテッド 7-1 ASローマ
               (TOTAL:8-3)
得点【マ】キャリック(11,60)スミス(17)ルーニー(19)
            クリスティアーノ・ロナウド(44,49)エブラ(81)
   【ロ】デロッシ(69)
な、なに、この試合?

バレンシア 1-2 チェルシー
  (TOTAL:2-3)
得点【バ】モリエンテス(32)
   【チ】シェフチェンコ(52)エッシェン(90)
前半、モリエンテスのゴールでバレンシアがリードしましたが、チェルシーが底力を見せて、後半、試合をひっくり返しました。延長目前、角度のないところからのエッシェンのファイン・ゴールにはバレンシアの選手もサポーターも凍りついただろうなあ・・・。ご同情申し上げます。チェルシー、やはり強いです。

バイエルン・ミュンヘン 0-2 ACミラン
  (TOTAL:2-4)
得点【ミ】セードルフ(27)インザーギ(31)
ミラン、全然1st-legの尾を引いていなかったね(笑)。さすがはプロ・スポーツ選手。そして、でかした、ベスト4!プレミア勢は手強いけど、ここまできたら、頂点まで行っちまえ!!次はマンUとの激突です。

リバプール 1-0 PSV
    (TOTAL:4-0)
得点【リ】クラウチ(67)
消化試合(爆)。

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2007/04/11

ロラン・バルト~文楽とエクリチュール

 バルトによれば、西洋演劇の基盤は現実の幻影の点にあるのではなく、全体性の幻影の点にある。つまりその抒情芸術にあっては、表現の根源が唯一不可分であり、それは数々の表現の同時的総合とされる。その場合の根幹となるものは肉体であって、そこに要求される全体性は有機体の統一を規範として持っている。(「つまり西洋演劇は類人猿的なのである。」)さらに対照法が文化の特権的文彩を成す西洋にあっては、内面が外面を支配すると考えられ、その結果登場人物から俳優へとつながる運動の絆は、内面を外在化する道として考えられている。(「その演技のモデルは、愛撫ではなく、専ら内在的な”真実”となる」)よって、「魂」と「肉体」の換喩法的な感染を受けた西洋の俳優は、自分の役との距離を置かずに自分の肉体と感情をその役の中につめこむ態度を取り(「俳優の入魂の業」)、それをバルトは「ヒステリー」と形容している。

  西欧における操り人形もまた、バルトによればこうした対照法から来る二律背反(生物/無生物、内部/外部)の枠を越えるものではない。それは「俳優にその反対物を映して見せる鏡の役目を負っている。」つまりそれは人形の劣等性と無自動性の無価値ぶりをよく示すためのものであって、「魂」の限界を指示する「生命」のカリカチュアにすぎない。その裏には俳優の生きた肉体の中にこそ、美と真実と感情があるという肉体観が潜んでいる。(だが、その俳優の行為とは実は身振り以外の何ものでもなく、俳優はその肉体観を使って虚偽を作る。)

 これに対して日本の文楽はどうか。バルトは文楽が三つのエクリチュールから成っていることを強調する。すなわち、操り人形、人形遣い、”声師”の三つであり、それぞれ、外在化される動作、外在化する動作、声の動作に相当している。これら表現の諸コードが互いに分離することによって、文楽は西洋演劇が指向するところの有機的統一から免れることになる。それはブレヒトの提唱した距離(異化)の効果と相通じるものである、と彼は言う。

 文楽における声、それははっきり限定された、本質的に卑俗な機能を負うものであるが、そこに集められてくる感情の氾濫のコードそのものによってのみ与えられる。したがって、声によって外在化されるのは声が運んでゆくもの(「感情」)ではなく、声そのものなのであって、それは「声のおのれ自らの外在化」なのである。そしてこのパロール(せりふ)がいわば演技の傍らに寄せ集められることによって、西洋演劇において粘着しているこの二つの実質がまず解離される。

 そこで解離された演技の側の動作は二重になっている。すなわち、操り人形の側での情調の動作と人形遣いの側での他動的な動作である。そこでは西洋において「内在性」が占めていた場が「労働」に取って代わられる。つまり文楽は行為と身振りとを分離し、両方を共に見せる訳であり、人形に移された所作的なエクリチュールと他動的なエクリチュールという二つの沈黙のエクリチュールが特別な昂揚を生み出していく。その際西洋文化、西洋演劇のメルクマールを成していた「基本的二律背反」という理念は掻き乱され、消滅する。文楽の人形は俳優の猿真似をしているのではなく、だから文楽が求めているのは「肉体」の模倣なのではなく、言うなれば「肉体」の感覚的抽象化なのである。それは生命なき物質がこの舞台上では、生命ある肉体よりも無限に、より多くの厳粛と戦慄をもたらすという肉体観に依っている。文楽にあっては「魂」という概念自体が追放されているのだ。(「文楽がより深く変質させているのは登場人物から俳優へとつながる運動の絆である。」)よって、「魂と肉体の換喩法的感染」から免れた演劇である文楽では、西洋の人間が想定しがちな形而上学的因果関係は全く廃棄されている。動作主である人形遣いは無感覚なまま、素顔(あるいは黒子)を人前にさらけ出す。だがそのエクリチュールがさらけ出しているのは、実は、読み取るものが何も無いということなのだ。そこには「意味の廃絶」がある。これこそはバルトにとって「純粋なエクリチュール」そのものに他ならない。総合的でしかも分離された演劇、それが文楽である。

【参考文献】

Roland Barthes; L'empire des signes (1970)
             Lecon d'ecriture ("Tel Quel" 1968)

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2007/04/07

花見!

Photo_5 復活祭を祝って(?)、伊音ちゃんと自然公園まで花見に出掛けました。ちょっと見ないうちに公園は桜が咲き誇り、伊音ちゃんは言葉をいっぱい覚えていました。いやあ、本当、日本の自然と子供にはビックリさせられるね!すんばらすい!

右の写真は公園に着いて、早速桜を鑑賞している伊音ちゃんです。一緒に取ったランチもとても美味し
かった。伊音ママ、どうもありがとう!

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2007/04/06

『オテロ』(ミラノ・スカラ座)

Dvdotelloscala DVDライブラリーより。

音楽が躍動する。舞台が躍動する。実にダイナミックで、見事な公演ですね。クライバーとゼッフィレッリの最上の成果のひとつと言えるでしょう。キャストもドミンゴ、フレーニ、カップッチッリと強烈です。こんな公演でシーズンを開幕するスカラ座というのも、また凄いなあ!!クライバーもさすがに気合が入って、ノリノリです!(笑)ひとつこの映像に難をつけるとすれば、今の時代にしては珍しく、字幕がまったく付いていないこと、ぐらいでしょうか。日本語は勿論、英語、イタリア語すらない。すっきりしている、と言えなくもないですが、ちょっと親切心がほしいところ、かなあ。あと、もうひとつだけ言わせてもらえるなら、ドミンゴのジャケット画像が、なんだか笑えます。よくこれでOK出したね、本人。ヒッチコックの「第3逃亡者」みたいだよ!(爆)

★★★★★

オテロ:プラシド・ドミンゴ
デズデモーナ:ミレッラ・フレーニ
ヤーゴ:ピエロ・カップッチッリ
カッシオ:ジュリアーノ・チャンネッラ
ロデリーゴ:ダノ・ラッファンティ
モンターノ:オラツィオ・モーリ
伝令:ジュゼッペ・モレシ
エミーリア:ジョネ・ジョーリ
ロドヴィーコ:ルイジ・ローニ

合  唱:ミラノ・スカラ座合唱団
合唱指揮:ロマーノ・ガンドルフィ
管弦楽:ミラノ・スカラ座管弦楽団
指  揮:カルロス・クライバー
照  明:ヴァンニオ・ヴァンニ
演 出・衣裳:フランコ・ゼッフィレッリ

[  収録:1976年12月7日、ミラノ・スカラ座  ]

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2007/04/05

ローマ、ユナイテッドに先勝!

Uefacl_28チャンピオンズリーグ 準々決勝1st-leg

ASローマ 2-1 マンチェスター・ユナイテッド
得点【ロ】タッデイ(44)ブチニッチ(66)
   【マ】ルーニー(60)
退場【マ】スコールズ(34)
トッティに牽引されたローマがホーム、スタディオ・オリンピコで燃えました。スコールズが前半のうちに警告を2枚受けて、退場。10人になったマンUに対し優勢に試合を進めたローマは、前半先制。後半、一旦はルーニーのゴールで同点に追いつかれたものの、マンシーニの強烈なシュートをGKファン・デルサールが弾いたところを途中出場のブチニッチが押し込んで、決勝ゴール。先勝しました。2nd-legも強烈な試合になりそうですね。

チェルシー 1-1 バレンシア
得点【チ】ドログバ(53)
   【バ】シルバ(30)
アウェイのバレンシアがシルバのゴールで前半先制したものの、やはりホームでチェルシーは負けません。後半、ドログバが相手のミスにつけこんで同点ゴールを上げ、ドロー。でも、バレンシアに許したアウェイ・ゴールがどう響くか。こちらも2nd-legは熾烈な戦いになりそうです。

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2007/04/04

CL準々決勝1st-leg

Uefacl_27チャンピオンズリーグ 準々決勝1st-leg

ACミラン 2-2 バイエルン・ミュンヘン
得点【ミ】ピルロ(40)カカ(84PK)
   【バ】ファン・ブイテン(78、93)
2度もリードを奪いながら、ロスタイム終了間際の失点で、ミラン、ホームで痛いドロー。こりゃ尾を引きそうだな・・・。

PSV 0-3 リバプール
得点【リ】ジェラード(27)リーセ(49)クラウチ(63)
ガナさんの仇はレッズさんが討ってくれます。ホームで0-3で負けたんじゃ、もうPSVはノー・チャンスでしょうね。ベスト4一番乗りはレッズさんということで(笑)。ジェラード、頼りになる男だね!

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2007/04/02

強い!ブラジル代表

Brazil 国際親善試合
ブラジル 4-0 チリ

3月25日にスウェーデン、イェーテボリで行われたブラジルvsチリの一戦を見ました。2月にポルトガルに0-2で敗れたブラジルですが、その試合、娘がデザインした変な洋服を着て指揮を執って非難を浴びたドゥンガ監督も、今度は普通の格好に戻っていました(笑)。2トップはロビーニョとフレッジ、その下にカカとロナウジーニョ。

ロナウジーニョの先制点(PK、16分)から始まって、右サイドからのクロスを中でカカが狙いすましてゴール右に流し込み(31分)、ロナウジーニョのFKが直接ゴール右隅に突き刺さり(49分)、右CKをゴール前でロナウジーニョがトラップしたボールをジュアンがゴールにぶち込んで(59分)、トータル4-0。チリを圧倒し、守りも磐石で、チリの攻撃を余裕をもって封じ込め、付け入る隙を与えませんでした。

今年のコパ・アメリカで同組となる両国ですが、どっかの国みたいに2軍で国際親善試合に臨むようなこともなく、南米らしい、激しく、かつファンタジックなサッカーが見れてよかったです。やはり南米はこうでなくっちゃね。ブラジルはポルトガル戦の敗戦がいいお灸になったようで、チーム全体に守りの意識も生まれ、かつ自由に連動する攻撃サッカーを展開していたように思います。いい感じです。コパ・アメリカが楽しみですね。

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2007/04/01

『クレールの膝』

Dvdclaire ▼エリック・ロメール《クレールの膝》
(フランス、1970)
Eric ROHMER, LE GENOU DE CLAIRE

ロメール三発目。こらまたしゃべくりまくる映画です。《冬物語》《春物語》と見てくると、もう諦めもつきますが、さすがにツライぞ!激しい睡魔に襲われる映画です(とくに前半!w)。

かってCineKen2さんはFORUMで「映画は行動(アクション)だ!」なんておっしゃっていましたが、彼がこよなく愛好するロメールに関して言うならば、ちっとも「行動」せんのだよ(笑)。それでも「映画は行動だ!」なんて言うんですかね?(笑)ちなみに、それとはまったく対照的に、かって、とある大変行動的な企画屋さんは、「ディスクール(対話行為)こそが劇(ドラマ)を生み出す」なる名言を吐かれましたが(・・・Orfeoさんといいますw。こっちを参照)、まさにロメールはディスクールがドラマを生むんだよね。うんうん、そうなんだよ。私の方が的を得てるじゃないか?(笑)

さて、この《クレールの膝》は、結婚を間近に控えたむっつりスケベの中年インテリ男と、その旧友である女流小説家とが風光明媚なアルプス地方の田舎町で久しぶりに再会することから話が進んでいきますが(絵が綺麗!こんなところでヴァカンスが過ごせたら最高ですね。尚、例によって、この映画のストーリー等の解説はCineKen2-FORUMのアーカイヴにおまかせします。こちらです)、たしかに美少女クレールの膝にうっとりとして、しまいには撫で回すロリコン話ではありますけど、そっちの方はむしろ見せ掛けで、言ってみればインテリ同士の高次元の恋愛物語なんだよね。肉体関係なんかなくても(べたべたさわりまくるけどさw)、俺たちゃ十分通じ合えるんだぜ、というわけ。まあ、はっきり言って付いていくのは大変ですけど、言いたいことはよく分かる。というわけで、インテリの皆さん、是非この映画を見て、大いに納得しましょう!(爆)フランス語のいい勉強にもなります。エロティックなロメールというのもまた、乙ですなあ!(爆×2)

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