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2007/03/03

『ローエングリン』(バイロイト音楽祭)

3月3日だ!ひなまつりだ!女性のみなさん、そしてとりわけ、今日がお誕生日の人、おめでとうございます!!(????)

Dvdlohengrin_bayreuth_1 DVDライブラリーより。

1979年から1982年にかけてバイロイトで上演されたゲッツ・フリードリヒ版『ローエングリン』。その最後の年に収録された映像です(残念ながら撮影監督は例によってあのお方w)。初年度の指揮者はエド・デ・ワールトでしたが、とある事情から彼が降板し、2年目からウォルデマール・ネルソンがその後を引き継ぎました。

フリードリヒは、ここであらためて言うまでもなく、かのフェルゼンシュタインの弟子筋に当たる人ですが、その彼が最初に世の注目を集めた仕事といえば、ピエール・ブーレーズと組んでコヴェントガーデンで制作した『ペレアスとメリザンド』の公演でした(1969年プレミエ、1972年再演)。そして、その次に彼が世界的に大きく注目されたのがバイロイト初登場となった『タンホイザー』(1972年プレミエ)。これがなかなか攻撃的な内容で、激しいスキャンダルを引き起こしたのは有名な話です(彼はこの年、西側に亡命しています)。その後、彼が再びそのバイロイトに招かれて演出を手掛けたのがこの『ローエングリン』。映像を見てみると、なかなか見事な仕上がり具合を示していて、驚かされます。ギュンター・ユッカーの単純ですが、綺麗にバランスが取れた構成感溢れるセット(最近のレーンホフの仕事はこの焼き直しですね)。あのウィルソンやグリューバーの協力者としても名高いフリーダ・パルメジャーニの格調高い衣裳。そして、ブレヒトの影響を色濃く残しながらも、フリードリヒはここでは先の『タンホイザー』のような攻撃性はあまり表に出さず、また、師のように枠組みを派手に引っくり返すこともなく、かなり保守的に、シンプル、かつ丁寧に舞台を作り出しています。4年目ということもあって、その完成度も非常に高い。

歌手たちも題名役のペーター・ホフマン(このカッコよさは比類がない!ただし、単純な英雄などではなく、実に細やかな表情付けを随所で行っているところが素晴らしいです。この辺のことはeuridiceさんの記事を是非参照して下さい)からエルザ役のカラン・アームストロング(フリードリヒ夫人)、あるいは軍令使のベルント・ヴァイクル(!)に至るまでまったく隙がなく、『ローエングリン』の芳醇な劇的音楽世界を堪能することが出来る内容になっています。ワールトから指揮を引き継いだネルソン(1938年キエフ生まれのソ連=現ロシア出身でコンドラシンの弟子。1980年のここでの指揮がバイロイト・デヴュー)も申し分なく音楽を盛り上げ、精彩を与えています。彼はここでの成功により、カッセル歌劇場の音楽監督の座に就きました(1980年秋)。それもむべなるかなという感じがします(この成功により、彼は再びバイロイトに招かれ、1985年、あの『さまよえるオランダ人』の再演を振ることになりました)。素晴らしい・・・撮影以外は(笑)。

★★★★☆

ローエングリン:ペーター・ホフマン
ハインリヒ王:ジークフリート・フォーゲル
エルザ:カラン・アームストロング
オルトルート:エリザベス・コネル
テルラムント:レイフ・ロアル
軍令使:ベルント・ヴァイクル

合  唱:バイロイト祝祭合唱団
管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団
指  揮:ウォルデマール・ネルソン
衣  裳:フリーダ・パルメジャーニ
美  術:ギュンター・ユッカー
撮  影:ブライアン・ラージ
演  出:ゲッツ・フリードリヒ

[  収録:1982年、バイロイト祝祭劇場  ]

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コメント

Orfeoさん、お帰りなさい。さっそくの記事とTB、ありがとうございます。3月3日桃の節句、ひな祭りですね。母の誕生日です^^!この日なので絶対忘れません。

この映像については、もう言うことなし....です。映像監督が違う人だったら、もっとよくなっていたかもしれないと思うととっても残念です。

投稿: edc | 2007/03/03 07:14


edcさん、ただいま~~!(笑)
寂しかった?(爆)

そうですか、お母様の誕生日ですか。それはそれはおめでとうございます!私の記事中のコメントを是非お伝え下さい(笑)。

映像に関しては、ブライアン・ラージにしてはまともな部類に入るとは思いますが、でも、やっぱり・・・ですね。初期の段階で注意してあげる人がいなかったのが(いても聞く耳をもたなかった?w)、かえすがえす残念です。。。

投稿: Orfeo | 2007/03/03 09:23

目障りですが、TB大盤振る舞いさせていただきましたm(_ _)m

投稿: edc | 2007/03/03 09:23


>edcさん、
ニアミスしちゃいましたね。同じ9時23分だよ!(爆)

TBをいっぱい、ありがとうございました!!

投稿: Orfeo | 2007/03/03 09:25

>撮影監督は例によってあのお方w
ああ…また欲求不満のたまる編集なのでしょうね。この人以外の監督したオペラ映像を見るほうが少ないということに気づきつつある今日この頃です(^_^;)そろそろ世代交代してほしいなぁ~。

やはり「ローエングリン」といえばこれ、と分かっていながらワーグナーへの食指が動かない私…ドミンゴの映像しか見たことないですがまずまず楽しめたので、なるべく早いうちにこのDVD購入費用を捻出しようと思っています。それまではeuridiceさんの記事にアップされているクリップで我慢します(笑)

投稿: Sardanapalus | 2007/03/03 11:22

>ドミンゴの映像
も同じ映像監督ですね。
>欲求不満
時代が進むにつれて感じるものもありますが、80年代前半のものについては、鈍いのか感じません。そりゃあ、映像だと、舞台を見たい!と思ったりはしますけど、無い物ねだりかなって・・・

投稿: edc | 2007/03/03 12:31

>初年度の指揮者はエド・デ・ワールトでしたが、とある事情から彼が降板し

???…へーえ、どんな事情です?(笑)。でも、ラジオで聴いただけですけど、初演時のエド・デ・ワールトは結構よかったですよ。どうしてだ?…。

 実は、これ、実演を見てないんですよ。あれっ、どうしてだ?…と思ったら、な〜るほど、

>1979年から1982年にかけてバイロイトで上演された

 そうなんだ。僕が行ったのは 1978年の次が 1984年だったんで、見れなかったんだね。だから、バイロイトで見た《ローエングリン》は、その次のヴェルネル・ヘルツォーク版だったんです。

 でも、不思議に思うのが、その《タンホイザー》が初年時スキャンダルになったという話で、僕は78年、コーリン・デイヴィス指揮の再演時に見たんですが、スキャンダルになりそうなところは何一つ無かったよう憶えてますが…。考え得るのは、あの舞台、舞台が山みたいに高いところにあるのよ。それで、平土間の前の方で見てると、上を見上げてるような感じになっちゃうのね。舞台の奥の方は全然見えなかったかも?…。
きのけん

投稿: きのけん | 2007/03/03 19:50


>Sardanapalusさん
誰が猫の首に鈴を付けるのか?・・・ですね(爆)。

>edcさん
時代はここまでデジタル化してきているんだから、そろそろ映像芸術も次の段階に進むべきときかもしれませんね。マルチ画面・個人選択の時代に早く入らないものかなあ・・・。

>きのけんさん
人に真相を吹き込んどいて、しらばっくれるのもいいかげんにしましょう(爆)。

《タンホイザー》はその席からだと、肝心なところが見れなかったりして・・・。有り得る話ですよね。

投稿: Orfeo | 2007/03/03 20:10

Orfeoさん
>寂しかった?(爆)
内緒話のお陰で大丈夫でした^^!

>マルチ画面・個人選択の時代
そうですよね!固定カメラ数箇所の分、自由に選んだり、好みでアップできたりするといいですねぇ・・;

投稿: edc | 2007/03/03 21:30


>edcさん
ご賛同いただき、痛み入ります。
内緒話は内緒にね!(爆)

投稿: Orfeo | 2007/03/03 21:42

Orfeoさん、euridiceさん>
>>マルチ画面・個人選択の時代
>そうですよね!固定カメラ数箇所の分、自由に選んだり、好みでアップできたりするといい
いいですよねぇ~!日本の演劇DVDですが、公演中舞台全体を映しているカメラの映像と、普通にカット割した映像を選択できるようになっているものがあるんです。他に、日替わりのアドリブ集が特典でついていたり、特定のシーンだけですが、ひとりの登場人物を追っかけた映像を選べるものもありました。

オペラの映像でも、こういう「特典」の要素をいっぱい入れてくれればいろいろ買う気になるのに…。遊べるメディアなんだから有効活用して欲しいですよね。せめて指揮者、演出家、キャスト情報とかも見れると便利なのにな~。

投稿: Sardanapalus | 2007/03/03 22:29


>Sradanapalusさん
へえ~!どこの劇団のDVDでしょうか?見てみたいなあ、それ。

オペラDVDで出来ることは、もっともっといっぱいあると思います。たとえば歌舞伎なんかを見に行くと、進行に合わせて話や見どころなんかを解説してくれるイヤホンガイドというものがあるじゃないですか。あれのオペラ版というものがあってもいい。選択すると、音が出ては邪魔だろうから、それが画面に表示されるとか、ね。もちろん、ストーリーだとか、おっしゃるように出演者情報だとか、どんどん取り込めるようになっていると、オペラ・ファンももっと増えるんじゃないですかね。

投稿: Orfeo | 2007/03/04 00:55


>きのけんさん
《タンホイザー》の場合、フリードリヒは2年目から手直しした可能性もありますよね。つまり、初登場の初年度は、確信犯だったと(笑)。今でもよくいるじゃないですか、その手の人間が。それで世の注目を集めておいて、亡命に成功し、そして穏便な内容に次年度からは改めた・・・。だとすれば、相当イヤラシイ男ともとれるけど、オペラの世界の中では決して珍しくもない戦略、かもね?(爆)

投稿: Orfeo | 2007/03/04 03:48

 当時の東独の状況というのは、ちょっと現在では考え難いようなものだったんで、あまり茶化さん方がいいと思いますが…、
 この当時の東独演劇界の事情が、僕のジャン・ジュルドゥイユのインタビューにかなり詳しく書かれています(>リンク↓)。『ユリイカ』誌(1996年5月号)のハイナー・ミュラー特集です。

http://members2.jcom.home.ne.jp/kinoken2/intv/intv_contents/intv_jourdheuil.html

 上のテーマに特定するなら、結論の部分「演劇は国家を超えられるか?」章かな?

ジュルドゥイユ=当時私は、トーマス・ブラッシュ、ハイナー・シュレーその他、東独から西側に移住した多数の作家たちに遇っていますが、彼らが西側でどういう目に遭わされるかと言うと、最初は大歓迎を受けるわけですよ。経済的な援助、『シュピーゲル』誌のインタヴュー、作品の上演といった祝祭が三、四年続いて…それで終わりですよ。(…)でも、それ以上に西独の演劇というのが貧血状態にあった。その点をハイナー・ミュラーは的確に捉え、発展させているわけですが、西独の演劇界というのが当時、新たな血を、新たな息吹きを必要としていた。量だけは沢山生産されるというものの、美学的な、そして実験的な次元での貧困化といった状況があり、新たな血は東独から補給されていた。

 ゲッツ・フリードリヒが西側に亡命してきた背景にはこういう状況があった…ということ。

きのけん

投稿: きのけん | 2007/03/04 09:38


>きのけんさん
・・・ついついいつもの癖で茶化したような書き方になってしまっていますが、私の本心は決してそんな気持ちからではない。大真面目に言っているんです。一人の人間が亡命する、しなければならない、ということの重みは十分理解しているつもりです。

ただ、きのけんさんとの話の中でよく出て来るように、フリードリヒというのは、あくまで「オペラの演出家」であって、「演劇の演出家」ではない。この辺の領域をきっちり保持するところなんかにも、彼の知的な戦略が見え隠れしていませんか?そこが、ジャン・ジュルドゥイユが語っている部分、それは主として演劇の領域の話ですから、そこら辺と一緒にしてはいけないのかな?と。もちろん、時代背景は同じなんでしょう。でも、やはりオペラの世界と演劇の世界では、随分異なる部分も多いのではないか、と。

そんな中でフリードリヒが取った戦略のようなものが、どうもこの《タンホイザー》の話の中から透けて見えてくるような気がしてならない。まあ、なにはともあれ、その《タンホイザー》の映像を見てみたいところですが、これって、過去ヴィデオでは出ていたようですが、国内ではまだDVD化されてないんですよね。その発売を首を長~くして待ちたいと思います。

投稿: Orfeo | 2007/03/04 10:13

Orfeoさま始めまして、OGASHIと申します。
「euridiceさんブログ」から【ローエングリン】の記事を記載されていると言う事で伺わせて頂きました。

これから、ちょくちょく拝見させていただきますのでよろしく御願い致します。 (色々勉強させていただきます)
では失礼致します。

投稿: OGASHI | 2007/03/04 21:54


OGASHIさん、はじめまして!
euridiceさんのところから、ようこそ!

なんだか、素敵な雰囲気のブログをおやりになっていらっしゃるんですね。リンクまでしていただいたようで、どうもありがとうございます。「勉強させていただきます」なんて、とんでもない!こちらは好き勝手な話ばかり書いているブログですので、どうぞ適当に読み飛ばして下さいね^_^;;

今後ともよろしくお願いします。

投稿: Orfeo | 2007/03/05 01:17

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