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2007/01/02

『吾輩ハ猫デアル』

Cineken2_logo_5 Wagahaiwanekodearu orfeo.blog=CineKen2:共同企画

▼山本嘉次郎《吾輩ハ猫デアル》(日、1936)

監督 ................  山本嘉次郎
脚本 ................  小林勝
原作 ................  夏目漱石
撮影 ................  唐沢弘光
音楽 ................  紙恭輔
美術 ................  久保一雄
録音 ................  道源勇二
出演 ................  徳川夢声、丸山定夫、藤原釜足、宇留木浩、千葉早智子、英百合子、北沢彪

  実は、山本嘉次郎は黒澤明の師匠としてくらいしか知らないんですが、その黒澤青年がPCL(後の東宝)の山本嘉次郎組助監督として入社してきた 前年のフィルムで、何処のデータベースにも載ってないんですよね。画像、音響共にものの見事に修復されてCaTVでやってんだよね。驚きました。…これ が、結構いいんですわ!…。
 まづは《姿三四郎》との関連ですが、例の三四郎のテーマ・ソングですな。あれはあのフィルムの冒頭にも出る、「通りゃんせ」の替え歌で、後に《七人の 侍》の中にも使われているんですが、ここにちゃんと出てくるんだよ(笑)。はは〜ん、黒澤明はこれを見てたに違いねえな…。
 う〜ん、山本嘉次郎という人は、相当映画知に長けた人だったみたいね。夏目漱石の原作に対するコンプレックスなんてまるでない。ほぼ完璧に映画として再 創造されているんですよね。『吾輩は猫である』には仲代達矢を主人公とした市川崑のリメイク版(>リンク:1975)もありますが、僕は問題なく、こっち の方が好きだな。ここでは苦沙弥一家に野良猫が入ってきて、それが最後に井戸に落ちて死んじゃうまでが物語を括弧に括ってまして、その中で鼻子、富子の成 金金田一家と苦沙弥先生とのやり合いが社会風刺コメディーとして描かれている。迷亭が徳川夢声だと思うんだけど、ブッとぼけてて、これがかなり面白いんだ ね。東風がうら若き藤原釜足、英百合子なんていう大ヴェテラン、村田実の《路上の霊魂》(>リンク:604 : 1921) なんてので主役をやってた女優さんが鼻子をやってる(たぶんそうだろ…)。

>http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/ichikawa.html#chat

>http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/shochiku_06.html#604

 今の…否、当時だって、例えばハワード・ホウクスみたいなテンポの速いコメディーに慣れていると、この超スロー・テンポには肩すかしを食わせられ る感が最初あるんですが、ちょっと我慢して見てると、このテンポがやたら気持ちよくなっちゃうから不思議なんだよね。…うん、こんな人に就いてたなら、黒 澤明にとって、これはすごい勉強になったはづだよね。それに、この時代の日本映画ってのは世界でも有数の質を誇っていたという確信を持ちます。少なくと も、同時代のフランス映画よりは上を行くと思うんだけどね(笑)。
 僕がジョン・フォードの《 リバティ・バランスを射った男》(253-255>リンク:1962)へのコメントの最後で引用した箇所をもう一度引用させてください。

>http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/forum0503.html#253

>「(…)私が、山さん(山本嘉次郎)に書かされた、最初のシナリオ
>は、 藤森成吉原作の『水野十郎左衛門』であったが、その中に、水
>野が江戸城の表に立てられた立札の法令について、白鞘組の仲間た
>ちに話すところがあった。
>私は、それを、原作の通り、立札を読んで来た水野が、それにつ
>いて、 仲間に話すところを書いた。
>山さんは、それを読んで、小説ならこれでよいが、シナリオはこ
>れではいけない、これでは弱過ぎる、と云うと、すらすら何か書
>いて私に見せた。
>それを読んで私は吃驚した。
>山さんは、水野が立札を見て来て話すなどというまだるっこしい
>事の代わりに、水野が立札を引っこ抜いて担いで来て、それを
>仲間達の前におっぽり出し、これを見ろ、とずかりと云わせて
>いる。
>私は恐れ入った。」
>(黒澤明『蝦蟇の油』(「長い話〔二)」より)
(2007年01月01日:CaTVチャンネルNECO)

CineKen2

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コメント

 明けましておめでとうございます。

 実は、この項、orfeo.blog版『黒澤明』特別研究シリーズの《姿三四郎》(『決戦、右京ヶ原!』)項の続きなんです。最初から見る場合は以下↓へ飛んでください。
http://orfeo.cocolog-nifty.com/orfeoblog/2006/08/post_5e2a.html

 なお、昨10月までのこの研究の総合目次がサイト CineKen2にあります。
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/archive_indx.html#kurosawa06

CineKen2

投稿: CineKen2 | 2007/01/02 09:29


>CineKen2さん
あけましておめでとうございます。
ご丁寧な案内、感謝いたします。
今年もどうぞよろしく。

投稿: Orfeo | 2007/01/02 13:20


チャンネルNECOでの放送、見ました。

最初ちょっと辛かったけど、なるほど、このテンポに慣れてくると、かなり面白くなってきました。おっしゃるとおり、漱石の原作に全然媚びたところがない。映像も雰囲気があるし、会話の妙も冴えていて、楽しかった。役者陣がまたハマってますね!

投稿: Orfeo | 2007/01/04 20:13

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