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2007/01/26

『マホメット2世』(フェニーチェ歌劇場)

Dvdmaometto_secondofenice DVDライブラリーより。

ロッシーニ作のオペラ・セリア。

元々の台本(1820年のナポリ、サン・カルロ劇場での初演時)はチェーザレ・デッラ・ヴァッレの悲劇『Anna Erizo』(1820年)に基づき、最後、戦闘に敗れ怒り狂ったトルコ軍の兵士たちに取り囲まれたアンナが、自ら短剣で胸を突き刺して果てるという悲劇的結末で終わるものだった。しかし、1822年、ヴェネツィア、フェニーチェ座での再演に際し、ガエターノ・ロッシが台本に手を加え、結末をハッピー・エンドに変更。ロッシーニも音楽を改めた。ただし、ナポリでの初演とヴェネツィアでの再演はともに不評に終わったため、その後、パリに移ったロッシーニが1826年、パリ風グランドオペラ形式による『コリントの包囲』に改作(ルイージ・バロッキとアレクサンドル・スーメの手によるフランス語台本。舞台はネグロポントからコリントに変更され、結末も悲劇に戻された)。さらに、翌1827年、これがイタリア語に翻訳され、イタリア語版『コリントの包囲』が生み出されることとなった。

ロッシーニのスペシャリストであり、また、音楽学者としても名高い指揮者、クラウディオ・シモーネは、1983年、ジューン・アンダーソン、サミュエル・レイミーらとともに、フィリップスにナポリ版『マホメット2世』を録音し、その2年後の1985年、ペーザロのロッシーニ・フェスティヴァルにおいて、ピエール・ルイジ・ピッツィの演出、チェチーリア・ガスディア、レイミーらのキャスティングにより、実際に舞台上演も行なった(このプロダクションは1993年にペーザロでジャンルイジ・ジェルメッティの指揮、ガスディア、ミケーレ・ペルトゥージらの出演により再演、翌1994年にはガブリエーレ・フェッロの指揮、ガスディア、レイミーらの出演によりミラノ・スカラ座でも上演され、私はそのミラノでの公演を見ることが出来ました。詳しくはこちらを参照のこと)。それから20年の歳月が経過した今回のフェニーチェ座での公演は、シモーネ自身の校訂によるヴェネツィア版に拠るもの。演出は再びピッツィが担当し、今回のヴェネツィア版用に、ナポリ版とはまた別の新しい舞台を作り上げた。

ここでヒロイン、アンナの父親にしてネグロポントの総督、パオロ・エリッソを演じているのがマキシム・ミロノフ。やけに若いです。それもそのはず、なんと1981年生まれ!ここでも既に取り上げたグラインドボーン音楽祭での『チェネレントラ』(2005年)でラミロ王子役をやっている人。アンナ役のジャンナッタシオも若い歌手ですが、ほとんど同世代にあたるのでは?いや、ひょっとしたら・・・(以下、強制削除)。まあ、オペラの世界ではよくあること。あまりくよくよ(?)気にしてはいけません。それに、さすがに人気上昇中のテノールだけあって、甘い歌声~まるで王子様w~、滑らかに出て来る高音はかなり魅力的です。ただ、いかにも声が軽いので、トルコ軍に立ち向かうネグロポンテ総督としては威厳に欠ける嫌いがあります。対するジャンナッタシオのほうはスケール的にはやや小粒ながら、情感が豊かで、コロラトゥーラもまずまず無難。"カルメン・ジャンナッタシオ"という迫力満点のお名前(笑)に負けない立派なソプラノにこの先成長されることを期待したいと思います。題名役、マホメット2世を演じるレガッツォに関しては、今日ロッシーニのバス役として高く評価されている人だけのことはあって、安定した演技と歌唱を披露していて、風格があります。カルボ役のゲマベッラも悪くない。

ピッツィの演出はここでは随分緩慢で、おとなしい印象です。スカラ座で見たナポリ版の舞台では、彼独特の巨大な階段を中央に配し、垂直型の立派な舞台構成の中、人物たちの動きもかなり激しいものでした。ところが今回のヴェネツィア版は、むしろ水平志向でコンパクトにまとめた感じで、高低を生かす場面も極めて少ない。こうなると、動きの幅まで自ずと狭まり、ダイナミクスも消え失せます。そのことは、実はシモーネが主導する音楽にも言えていて、やはりこの人は指揮者であるよりもまず、学者さんなんだと感じずにはいられません。音楽の流れが平坦で、生ぬるい。ヴェネツィア版の要諦、あの幸福なエンディングもなにか冗長な感じで、さっぱり盛り上がりません。結論的には、やっぱりナポリ版のほうがドラマチックで、私は好きです(笑)。

尚、この2005年の公演は、1996年の火事で全焼したフェニーチェ歌劇場がようやく再建されて迎えた初めてのシーズンの目玉演目の一つだったことを最後に付け加えておきます。

★★★

マホメット2世:ロレンツォ・レガッツォ
セリモ:フェデリコ・レプレ
パオロ・エリッソ:マキシム・ミロノフ
アンナ:カルメン・ジャンナッタシオ
カルボ:アンナ・リタ・ゲマベッラ
コンドゥルミエーロ:ニコラ・マルケシーニ

合  唱:ヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場合唱団
管弦楽:ヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場管弦楽団
指  揮:クラウディオ・シモーネ
演出・装置・衣裳:ピエール・ルイジ・ピッツィ

[  収録:2005年2月、ヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場  ]

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コメント

ロレンツォ・レガッツォ、新国来シーズン、フィガロの結婚のフィガロで来るようです。

やっぱり、気になるのでお尋ねしちゃってもいいですか。
>アンナ役のジャンナッタシオも若い歌手ですが、ほとんど同世代にあたるのでは?いや、ひょっとしたら・・・(以下、強制削除)。まあ、オペラの世界ではよくあること。あまりくよくよ(?)気にしてはいけません。

何を強制削除されたのでしょうか。
・・・は、年上?
でも、これでは強制削除するほどでもないし....

投稿: keyaki | 2007/01/29 22:09


keyakiさん、どうも。

いや、それですよ、それ。一般的にはどうか知りませんが、男性の側から、女性の年齢について具体的に指摘しちゃうのは、ちょっと抵抗がある、というか、はしたなく感じるところがありまして。少なくとも私はそうです(笑)。

なんて言いながら、ジャンナッタシオの生年を知ろうとして、ネットであちこち見て回ったんですけどね(爆)。私が見て回った範囲では、一切その情報が載っていませんでした。となると、その情報を開示するのをご本人が嫌がっている、のかも?というわけで、個人情報保護法の観点から鑑みまして、当ブログでは強制削除処分とさせていただきました(笑)。

投稿: Orfeo | 2007/01/29 22:54

あらぁ、そんなことだったんですか。
オペラ歌手とか、舞台に立つ人は、年齢隠してほしくないです。

>ジャンナッタシオの生年
写真を見る限り、目尻にカラスの足跡、それほど若くないとみました。
それで、やっと年齢がわかりました。2002年にドミンゴのオペラリアで一位なんですけど、そのときの年が27歳、ということはミラノフ君より5、6歳お姉さんですね。

最近のは、お手軽にすぐDVDになっちゃいますけど、スカラ座のほうが、魅力的ですよね。ブルース・フォード、レイミー、ガスディア、スカルキ...素晴しいキャストですよね。

投稿: keyaki | 2007/01/30 01:06


ば~ら~し~た~な~
女性って、残酷・・・(爆)。

そうですか、そんなに年上だったんだ。でも、それを知っちゃうと、この映像を今後観るのが辛くなりますね^_^;;

スカラ座のキャストは素晴らしかったんですが、フェッロの指揮が歌と大きくズレてしまったので、カーテンコールで例の、あの連中(中身は違うだろうけどw)から激しいブーイングが湧きおこちゃった。というわけで、DVD化されることはないでしょうね。

投稿: Orfeo | 2007/01/30 08:58

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