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2006/12/12

『續姿三四郎』

Cineken2_logo_4Dvdsanshiro2 orfeo.blog=CineKen2:共同企画

▼黒澤明《續姿三四郎》(日、1945)

>「これだけ立派な腕を持ちながら花を咲かせる
>ことができない。なんという妙な巡り合わせで
>しょう。でも私、このままでようございます。
>ひとを押しのけず、ひとの席を奪わず、機会さえ
>あれば、貧しいけれど真実な方たちに喜びや
>望みをお与えなさる。このままの貴方も立派
>ですもの。」
>(宮崎美子)
>
>(小泉堯史《雨あがる》:日、2000)

 2年後に撮られた続編ですが、これって、昔見た記憶があるのに、全然憶えてないんだよね。…そういえば…って思い出したんだけど、これと同時に見た先輩谷口千吉の《銀嶺の果て》 (1947)が、もう圧倒的に素晴らしくて、こっちの黒澤が吹っ飛んじゃったんだ。あっちは台本=黒澤明で三船敏郎の映画デビュー、谷口千吉一世一代の傑作だと思います。その後内川清一郎の正と続を含んだリメイク(日、1965:加山雄三=姿三四郎、三船敏郎=矢野正五郎、加東大介=村井半助、九重佑三子=小夜、岡田英次=檜垣源之助&鉄心、左卜全=和尚、伊藤雄之助=門馬三郎、山崎努=檜垣源三郎、志村喬=三島総監)を見たんですが、これがまた見るも無惨な駄作でねえ(笑)…。まったくもう、黒澤明の助監督どもは揃いも揃って、全員ダメな奴らばっかりでねえ(笑)…。
 正編の2年後、物語もあの2年後になってまして、駐留軍の米国兵士が闊歩する敗戦直後。米人水兵から暴行を受けている車引きの少年を藤田進が救う。正編で大河内傳次郎が小杉義男一門を投げ飛ばすのに運河を背にして、連中に怪我をさせない配慮を怠らなかったのと同様、今回の藤田進もその米兵を埠頭まで連れていって、怪我させないために海に投げ込んでる。
 …そう、黒澤明はとても優しい人なんだよね。この資質に近いものを持ってるのが、アメリカ映画ならニコラス・レイだよね。だから黒澤は正編で負けちゃった連中がとても気になるの。志村喬は死んじゃって、姿三四郎のお陰で、柔術は柔道に破れ、柔術の連中は食うに困って、ボクシングと対戦する見せ物なんかに出て、アメリカのボクサーに叩きのめされたりしている。
 そして、その負け犬の一人、月形龍之介は正編で藤田進に敗れて以後、人が変わったようになり、柔術で敗れ、轟夕起子の小夜も失った敗残の身を肺病に蝕まれている。そこに登場するのが、月形の弟二人、同じ月形龍之介演ずる空手家鉄心と気の触れた末弟河野秋武。この二人が兄の仇、藤田進を付け狙う。最後の雪山での決闘。…そうそう、黒澤明が先輩谷口千吉の《銀嶺の果て》に決定的な差をつけられちゃったのがこの場面で、優しい黒澤先生は、この後に、再び敗れた月形龍之介を藤田進が山小屋で介抱し、そんな三四郎の優しさに末弟河野秋武も遂に、寝ている藤田進を殺すことができず、終わらせている。
(2006年12月10日:CaTV日本映画専門チャンネル)

CineKen2

【関連記事】

決戦、右京ヶ原! by Orfeo

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コメント


私の《姿三四郎》の記事では黒澤監督のことを随分誉めちゃいましたが、そろそろほとぼりも冷めた頃合いだろうから(?)、ちょっとだけ文句を言わせてもらうとすれば、やっぱり最後の右京ヶ原での決闘シーンは少し不満が残ります。たしか右京ヶ原って実在の地で、今の東京の文京区辺りにあるという話ですが、あの映画じゃ、まんま「箱根の仙石原!」って感じ(笑)。まあ、ああいう雄大な情景であの場面を撮りたかったという気持ちは分かるので、それはこの際よしとしましょう。でも、あの藤田進と月形龍之介の果し合いは、ちょっと単純過ぎますよね。しかも、肝心なところがすすきに隠れてしまって、さっぱり分からない。それで、あっさり終わってしまうのでは、クライマックスとしてはいかがなものかと。キャメラワークはかなり頑張って工夫しているんですけどね。これも時代の制約というものなんでしょうか?

投稿: Orfeo | 2006/12/12 16:13

 昨夏、ここで特集になった黒澤明研究の続きです。

▼「夏休み・特別研究レポート:黒澤明 (1-7)」の目次がサイト CineKen2内に置いてあります↓。
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/archive_indx.html#kurosawa06

▼これが、CineKen2掲示板へのミカエルさんの参入により再燃しちゃいまして、この部分は、未だアーカイヴ化していないんですが、関連項の投稿番号は以下の通りです。
orfeo.blogの黒澤研究(>リンク↓)への追加項目リスト:
>1197 原節子は  ミカエル
>1202 Re.原節子 CineKen2
>1209 訃報(.小田切ミキ) UKKEY
>1211 「わが青春に悔いなし」を見て ミカエル
>1213 Re.小田切ミキ CineKen2
>1214 黒澤明《夢》 CineKen2
>1217 原節子? CineKen2
>1218 アーカイヴ・メモ CineKen2
>1236 黒澤明《姿三四郎》(日、1943)CineKen2↓
http://orfeo.cocolog-nifty.com/orfeoblog/2006/08/post_5e2a.html#c10992089

>1238 黒澤明《續姿三四郎》(日、1945)  CineKen2
上の記事↑…と続いていくわけです。
▼その他、CineKen2に単独記事として入っているのは、
>《夢》 (日、1990)
「黒澤明のフィルムは意外と自伝的要素が濃厚だなあと気付いたのはこの《夢》を見た時というよりはむしろ自伝『蝦蟇の油』 を読んだ時だったんですが、(…)」
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/forum05.html#09

>《まあだだよ》 (日、1993)
「「もういいかい?ーーまあだだよ」…とくると、どうしても小津安二郎《小早川家の秋》で島津雅彦とのかくれんぼにかこつけて娘新珠三千代の目を盗み、京都の元お妾さん浪花千栄子の家へしけこんでしまう中村雁治郎がそのままポックリ逝ってしまったことを思い出して、あまり好い予感がしないことも確かですが、(…)」
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/forum05.html#64

 そだそだ、もう一つ、あれがありました…。
>「《雨あがる》(小泉堯史):師匠への心優しきオマージュ」
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_japon/ameagaru.html

CineKen2=きのけん

投稿: CineKen2 | 2006/12/12 16:41

Orfeoさん:
>まんま「箱根の仙石原!」って感じ(笑)

 おお!、そうなんだよ。あれを撮ったのは、まさに箱根の仙石原そのものズバリ!…です。強風が吹くので有名な場所ですが、全然風が吹かなくて、ロケ最後の日、今日吹かなかったら、しょうがないから東京でセットでやる…と、連中、不貞腐れて宿屋で酒を飲んでたら、突然風が吹き出し、全員大慌てで外へ飛び出して撮影した。だから、半分即興的に撮っちゃったらしいし、十分撮影できなくて、編集の時えらく困ったそう。あすこは、黒澤明自身にしても、ちょっと不満が残ったんじゃないかな?…。僕は《隠し砦の三悪人》(1958)のフィナーレで黒澤は復讐戦をやったと思ってるんだけど…。
CineKen2

投稿: CineKen2 | 2006/12/13 00:01


や、やつぱり仙石原でしたか・・・。見慣れた風景だと思ったわけだ!よく知っているんですよ、あの辺り。

それにしても、「急いてはことを仕損じる」の実例みたいな話ですね。酒なんか飲んでる暇があったなら、入念にリハを繰り返すべきだったかと・・・(笑)。

投稿: Orfeo | 2006/12/13 07:49

 僕もよく知ってる!…。
 駒ヶ岳と乙女峠とのちょうど中間くらいに小学校の林間学校の宿舎があったんです。だから、ミカエルさんなんかとも一緒に遊んだはづなんだけど…全然憶えてないんだよねえ…それが(笑)。
CineKen2

投稿: CineKen2 | 2006/12/14 02:40


へえ、小学生時代の林間学校で箱根、ですか。いいですねえ。私が小学生の頃は、北海道で林間キャンプに行ったけど、あれがどこだったのか、全然覚えてないな・・・(笑)。

投稿: Orfeo | 2006/12/14 07:42

 うん、国立学園ってのは西武の堤一族が作った学校なんだよ。西武グループは元はと言えば箱根土地会社。だから仙石原の一角に専用の林間学校施設を持っていたんだ。なんか、随分いい所だったよ。
CineKen2

投稿: CineKen2 | 2006/12/18 12:01


へえ~、そうなんだ。
そういや、仙石原にプリンスホテルがありますもんねえ!

投稿: Orfeo | 2006/12/18 13:22

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