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2006/12/29

『神々の黄昏』(バイロイト音楽祭)

Dvdgotterdammerung1980 DVDライブラリーより。

いよいよこのシリーズも最終章。主役、ブリュンヒルデ役のギネス・ジョーンズの力の入れ様も尋常ではありません。おかげでもう一人の主役、ジークフリート役のマンフレート・ユングの方はかなり押され気味。ここはやっぱり女性上位が宿命なのね、と諦めるしかありません(笑)。もう一人、グートルーネ役のジャニーヌ・アルトマイアーもいい。彼女、『ワルキューレ』ではペーター・ホフマン演ずるジークムントと愛し合うジークリンデ役でした。この収録の前年の79年にバイロイト・デビューしたばかりの人ですが、なかなか堂に入った歌唱、演技を披露しています。彼女はこの後、86年にこのバイロイトで、ポネル演出バレンボイム指揮の『トリスタンとイゾルデ』のイゾルデ役を歌うことになります(ただし、初日のみ。トリスタン役はペーター・ホフマン)。

シェローの《リング》を今回DVDで見直してみて、あらためて思うのは、大胆に時代背景を動かしながらも、一つ一つの演出がよく考え抜かれていて、無駄がなく、かつセンスよくまとめられているということです。ブーレーズの精緻な音楽作りともよくマッチしている。例えばこのシェロー版に大いに触発されたであろうところのレーンホフ版なんかを見てしまうと、苦笑せざるを得ない箇所がかなり目立ちます。奇抜な見せ掛けに拘泥するあまり、肝心の人物描写がおろそかになったりもする。そういうところがシェローの演出にはまったくない。これはやはり演劇の舞台で培った勘=感覚の問題だと痛感します。表現すべき対象の、その焦点がしっかりと捉えられていて、決してブレることがない。それゆえに、その舞台は観る者を惹き付ける強烈な磁場となり、有無を言わせぬ説得力を生むのだと思います。しかも、シェローがここで見据えているのは、なにも《リング》だけに留まってはいない。他のワーグナー作品まで確実にその射程に入れた上で、このシリーズ全体を組み立てています。まさにバイロイト音楽祭百周年記念プロダクションに相応しい、充実の仕事だったと言えるのではないでしょうか。噂によれば、バレンボイムのベルリン州立歌劇場とリスネルのミラノ・スカラ座が組んで、シェロー演出による新しい《リング》制作を企画しているとか。2010年の話だそうですが、実現するとしたら凄いですね。今度はどんな舞台を生み出してくれるのか?そのプレミエの日が来たらんことを切に願うばかりです。

★★★★

ブリュンヒルデ:ギネス・ジョーンズ
ジークフリート:マンフレート・ユング
ハーゲン:フリッツ・ヒューブナー
アルベリヒ:ヘルマン・ベヒト
グンター:フランツ・マツーラ
グートルーネ:ジャニーヌ・アルトマイアー
ヴァルトラウテ:グウェンドリン・キレブリュー
ヴォークリンデ:ノーマ・シャープ
ウェルグンテ:イルゼ・グラマツキ
フロースヒルデ:マルガ・シムル
第1のノルン:オルトルン・ヴェンケル
第2のノルン:ガブリエレ・シュナウト
第3のノルン:ケイティ・クラーク

合  唱:バイロイト祝祭合唱団
合唱指揮:ノルベルト・バラチュ
管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団
指  揮:ピエール・ブーレーズ
美  術:リシャール・ペドゥッツィ
衣  装:ジャック・シュミット
照  明:マンフレッド・ヴォス
撮  影:ブライアン・ラージ
演  出:パトリス・シェロー

[  収録:1980年、バイロイト祝祭劇場  ]

【関連記事】

『ラインの黄金』(バイロイト音楽祭、1980年)
『ワルキューレ』(バイロイト音楽祭、1980年)
『ジークフリート』(バイロイト音楽祭、1980年)

*本記事をもちまして、当ブログの記事投稿は年内打ち止めとなります。今年一年御愛顧いただき、誠にありがとうございました。来年も、相変わらずの状態でこのブログを続けることになると思いますが、どうぞよろしくお願いします。それでは、皆さん、よいお年を!

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コメント

Orfeoさん、リンクとTBありがとうございます。久しぶりに自分の記事を読んでみたら、「神々の黄昏」そのものについては、ほとんど何も書いてないので、リンクをクリックしていらしてくださったら、憤慨されてしまいそうです。

>シェロー演出による新しい《リング》制作を企画
へ〜〜そうなんですか。柳の下にまたすばらしドジョウがいればいいですね。すばらしい歌手を調達できなければ、シェローといえども・・ だと思います。ぜひともシェローの描く役柄を裏切らない歌手で願いたいものです。

それはともかく、シェローのリングと共に、今年も終わりですね。この一年も、Orfeoさんにも、Orfeoさんのブログにも、大いに楽しませていただきました。居ながらにしてわくわくできるのが、ネットの良さですね。ありがとうございます。来年もよろしくお願いします。良い年をお迎えください。

投稿: edc | 2006/12/29 12:45


edcさん、どうもです。

いえいえ、そちらにはジェス・トーマスのことなんか、かなり詳しく出ているので、とても参考になりますよ。私のほうこそ、このシリーズ、完全に手抜きになってしまって、申し訳ありませんでした_(^__^)_

そうですね。またシェローがやるとして、その時にどれだけの歌手を揃えられるのか、非常に気懸りですね。年々質の低下が露わになっているバイロイトを驚愕させるような舞台を是非生み出してほしいものです。実現するものならね(笑)。

さて、今年一年、本当にお世話になりました。来年もよろしくお願いしますね!

投稿: Orfeo | 2006/12/29 16:29

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» ワーグナー「神々の黄昏」バイロイト1980年 [雑記帳]
「神々の黄昏」(パトリス・シェロー演出、ピエール・ブーレーズ指揮、バイロイト音楽祭1980年収録)ニーベルングの指環全曲&ドキュメンタリー これも前半二作ほどではないですが、気に入ってます。とにかくギネス・ジョーンズのブリュンヒルデには惹き付けられます。頭空っぽ、なかなか色っぽいグートルーネも好きです。 新国立劇場の「神々の黄昏」は、非常に印象的でしたが、その最大の理由は、おそらく、グンターの飛び抜けた視覚的説得力ではなかったかと思います。それと対照的な強烈さでハーゲンが今も記憶のなかに... [続きを読む]

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