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2006/11/22

『天井桟敷の人々』

Dvdles_enfants_du_paradis ▼マルセル・カルネ《天井桟敷の人々》(仏、1944)
Marcel CARNE, LES ENFANTS DU PARADIS

第2次世界大戦中、ドイツ占領下という困難な状況下で製作された20世紀フランス屈指の名作映画。脚本は「枯れ葉」でおなじみの詩人、ジャック・プレヴェール。19世紀半ばのパリ、見世物小屋が立ち並ぶ犯罪大通りを舞台に、女芸人ギャランスとパントハイム役者バティストの実ることのない恋愛譚を中心に話は展開する。

ここで主人公のバティストを演じているジャン=ルイ・バローという人は、言うまでもなく、20世紀フランス演劇を語る際にはけして欠かすことが出来ない重要な人物ですが(1910-1994)、私は彼の生の舞台に一度だけ、その晩年、パリでアリストファネスのギリシャ喜劇『鳥』をやっているのを見たことがあります。「あっ、この人は本当に舞台に立つことが好きで好きでしょうがないんだ!」老いてもなお一舞台人、そういうことを沸々と感じさせる役者さんであり、演出家であり、そして座長さんでした。そのバロー、30歳代の若い姿がこの映画の中にあります。

バローの魅力は、何よりもその眼差しにあるような気がします。憂いを帯びた、遠くを見つめるような、儚げな目。そこに私は強く惹き付けられます。アルレッティを始めとする魅力的な共演者、詩的な脚本、そして、猥雑だけども、生き生きとした芝居小屋の様子を映し出すキャメラ。いかにもフランスらしいエスプリの利いた演出を得て、この名優の姿がしっかりとフィルムに残された。永遠に愛され続ける映画に違いありません。

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コメント

 実は、この時代の所謂フランス映画の名作ってのが、えらく苦手でして、皆さん、あれ、本当に面白がって見てるのかなあ?…それとも、なにせ「名作」だってことで、かしこまってご鑑賞しちゃってるんじゃないの?…なんて思うんですが、うん、これだけはちょっと例外的な気がしますよね。

 ジャン=ルイ・バローは、僕が芝居に通ってた頃は、ロジェ・プランションをはじめアントワーヌ・ヴィテーズからシェローに至る若い世代の芝居屋の擡頭に、多少困惑気味に第一線を退いちゃった、ちょっと古めかしい好々爺ってな感じで、クローデルの《繻子の靴》を見に行ったら、ダイジェスト版で上演してやがって(…実は、クローデル自身がバローのために作った短縮版)、それで、こいつは信用ならん…と、以後見なくなっちゃったんですが、その後、長い間バローの演出助手を務めたという人に出遭って訊ねたら、1960年代以来バローがどんどん保守的になっていったのは、奥さんマドレーヌ・ルノーのせいなんで、自分たちは歯がゆくて見ていられなかった…なんて言ってました。
 うん、この頃のバローは若くて意欲的で、見違えるようですね。
CineKen2

投稿: CineKen2 | 2006/11/22 09:59


・・・まあ、68年革命で吊るし上げられて以降のバローは、ちょっと可哀想なところがありますね。でも、「こいつは信用ならん」なんて言っちゃったら、守章さんあたりが泣きますよ(笑)。ダイジェスト版とはいえ、上演不可能と言われていた《繻子の靴》を、しかも1943年という困難な時期に初演しただけでも、十分偉大だと思います。

投稿: Orfeo | 2006/11/22 12:20

>守章さんあたりが泣きますよ(笑)。
 もう泣かせましたよ!(笑)。
 でも、僕は全然間に合わなかったけれど、1960年代初め辺りまでのバローはなかなか見事だったらしい…。だから、あの世代の人たちにとってバローは神さんなのね。ただ、僕らの世代だと、ほぼ存在してないみたいなのね。あれほど名声高かった人で、ヴィテーズ=シェロー世代からあれほど無視されていた人も珍しいよね。
 Orfeoさんのご覧になった《鳥》はロン・ポワンのルノー=バロー座だったかな?…。僕の時は、未だ旧国鉄オルセイ駅(現国立十九世紀<印象派>美術館)内にテントを張ってやってた。
きのけん

投稿: きのけん | 2006/11/22 17:46


そうです、そうです。ロン・ポワン劇場でした。さすがにあの舞台にはひいたけど・・・(爆)。

あの日のことは、実は鮮明に覚えているんです。というのも、私、その公演に遅刻してしまったんです。なぜ遅刻したかといえば、昼間、ポール・クローデルの生地、ヴィルヌーヴ・シュル・フェールまで出掛けていたんです。朝早くサン・ラザール駅(だったかな?)で急行列車に乗り込んで、2,3時間要かかったかな?昼前には着きました。とんでもないど田舎!(笑)で、とりあえず帰りの列車の時間を確かめとこうと思って、駅の時刻表をのぞきこんだら、びっくり仰天。真っ白!(爆)昼間は全然列車がなくて、パリ行きは夕方までない・・・。なんちゅうところだと思いましたが、諦めて、のんびりど田舎見物をしていました。クローデルが住んでいた家だとか、教会だとか、見に行きましたねえ。そうそう、地元の学校帰りの小学生の集団に囲まれて、「ジャポネー!ジャポネー!」となつかれてしまったり、広大な麦畑の真ん中で寝っ転がって昼寝したり・・・。なにせ、何もすることがない場所だったもんで、時間を潰すのも大変でした(笑)。で、なんとか夕方まで待って、ようやくまた列車で2,3時間かけて、パリへ舞い戻った。パリに着いたら、もうとっくに芝居が始まっている時間で、大急ぎでシャンゼリゼに向って、遅ればせながら、ありがたくバローの姿を拝むことが出来ました、という次第。というわけで、クローデルとバローとは、私の記憶の中では、強い絆で結ばれているんですよ(爆)。

ヴィテーズ=シェロー=きのけん世代からは遥かに下(だっけ?)の私ですが、やはりバローは伝説の人であり、その舞台姿を直に見ることが出来て、本当に嬉しく思いました。

投稿: Orfeo | 2006/11/22 18:49

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