« 日本、ガーナに敗戦 | トップページ | くたばれヤンキース »

2006/10/06

『イドメネオ』(グラインドボーン音楽祭)

Dvdidomeneoglyndebourne DVDライブラリーより。

モーツァルトのオペラ・セリア。

演出家トレヴァー・ナンは1968年から1986年までロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)の芸術監督として活躍し、その後1997年から2003年まで、今度はナショナル・シアター(NT)の芸術監督まで任されたような英国演劇界の大御所的存在。当然、シェイクスピア劇などで過去に数々の優れた舞台を生み出している。だが、私なんかが彼の仕事と出くわすのは、《レディ・ジェーン》(1985)や《十二夜》(1996)などといった映画を別にすると、専らミュージカルだったりする(・・・すいません)。『レ・ミゼラブル』(ジョン・ケアードとの共同演出)~これが元々はRSCのプロダクションだったってことは、案外日本じゃ知られてないんじゃない?~だとか、『キャッツ』、『アスペクツ・オブ・ラブ』、『サンセット大通り』といったアンドリュー・ロイド・ウェバーの作品だとかを演出したのがこのお方。どの作品も雰囲気溢れる秀逸な舞台でした(ちなみに、NTの芸術監督の後任は『ミス・サイゴン』でお馴染みのニコラス・ハイトナー)。

そのトレヴァー・ナンが、自身初めてのオペラ演出としてハイティンクと組んで80年代に制作したのがこのグラインドボーンの『イドメネオ』。一片の垂れ幕だけでクレタの宮廷を表わしたり、岩をポツンと置くだけでイドメネオが漂着する浜辺を表現したり、花咲き誇る一本の枝を宙吊りにして木々を示したり、簡素なセットを元にした極めてシンプルな作りの舞台だ。衣裳はボロ系だが、照明の鮮やかな使い方もあって、実に豊かな印象を与えてくれる。ゴテゴテと飾り立てなくても、ドラマは生まれる。さすがはRSCの演出家(笑)。そもそもモーツァルトの音楽自体が、アリア、レチタティーヴォ、重唱、合唱、バレエなどと、極めて変化に富む内容になっているのだから、余計なものなど必要ないのだろう。音楽の流れをそのまま生かした、すっきりとした好舞台だと思う。そんな中、ハイティンクの落ち着いた指揮さばきの下、しっとりと歌い上げるイリア役のイヴォンヌ・ケニーやエレットラ役のキャロル・ヴァネスがまずもって素晴らしい。対する男声陣も、イダマンテ役のジェリー・ハドリーが端正な歌唱を披露する一方、イドメネオ役のフィリップ・ラングリッジが深みのある表現で情感を高めている。80年代のグラインドボーンの充実ぶりが伺えるプロダクションだ。

★★★☆

イリア:イヴォンヌ・ケニー
イダマンテ:ジェリー・ハドリー
エレットラ:キャロル・ヴァネス
アルバーチェ:トーマス・ヘムズリー
イドメネオ:フィリップ・ラングリッジ
祭司長:アントニー・ロデン
ネプチューンの声:ロデリック・ケネディ

合  唱:グラインドボーン合唱団
管弦楽:ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
指  揮:ベルナルト・ハイティンク
演  出:トレヴァー・ナン

[  収録:1983年、グラインドボーン音楽祭歌劇場  ]

|

« 日本、ガーナに敗戦 | トップページ | くたばれヤンキース »

コメント

イドメネオといえば、デデーーンと真四角のパヴァロッティのしか見たことないんですけど、あれってポネルなんですね。
このご紹介の映像もよさそうですね。
新国の次回の公演はイドメネオなんですよ。グリシャ・アサガロフ演出で、藤村実穂子さんが、イダマンテなんですけど、ジェリー・ハドリーって、普通のテノールですよね。

New表示の件、いろいろありがとうございます。新しい記事の題が出ないタイプになっちゃったんですね。残念! 

投稿: keyaki | 2006/10/06 13:15


keyakiさん、どうもです。

私は逆に、パヴァちゃんの方は見たことがありません。メットのやつですね。パヴァちゃんがイドメネオ、フォン・シュターデがイダマンテ、コトルバシュのイリア、ベーレンスのエレットラですか。うん、そちらも凄そうですね^_^;;

ジェリー・ハドリーは、おっしゃるとおり、カウンターではなく、普通のテノールです。アメリカ出身の人ですね。

New表示の件でまた気を揉ませてしまって、申し訳ありません。ドリコムは、どうやら壊滅的な状態になっています。お陰で、あそこの開発者ブログに非難が殺到して、収まりがつかなくなっているみたい。当分は、記事タイトルが出ないBlogPeopleで我慢して下さい。

投稿: Orfeo | 2006/10/06 15:46

パヴァちゃんのもこれも見ました。こっちはテレビで見て録画したんですけど、どこかに行っちゃいました。

>ジェリー・ハドリー
バーンスタインが1978年全員アメリカ人歌手(意図的だとかどこかで読みました)のコンサート形式公演でライブ録音もした「ボエーム」のロドルフォですね。若いときはなかなかかわいらしい感じです。最近では、麻薬と暴力の夏の「こうもり」@ザルツブルクで、アルフレートで登場してるのを見ましたが、ずいぶん面変わりしてました。ストラヴィンスキーの「放蕩者のなりゆき」の主役をやってるのもテレビで見たことがありますが、そのころも、もうロドルフォ@バーンスタインの写真の繊細な若者振りは失せていたと思います。女性以上に花の命は短いですね(^^;; 長々と書きましたが、ええっと、このイダマンテはなかなかの男前だったような記憶がありますが、あんまり魅力的ではなかったような・・・

イドメネオもパヴァちゃんのほうが魅力的! ラングリッジって歌手を認識していませんでしたが、なんだか王様っぽくないわぁな〜〜んて思いました。他の主要人物もね(^^;;;

投稿: edc | 2006/10/06 20:39


edcさん、どうもです。

そうか、ハドリーは、あのミンコ&ノイエンフェルスの『こうもり』にも出ていたんですね。http://orfeo.cocolog-nifty.com/orfeoblog/2005/08/post_1cde.html
お陰で思い出しました。彼、レパートリーはかなり広そうですが、97年初頭のメットの来日公演『コジ・ファン・トゥッテ』でフェランドを歌ったとか。

やっぱりパヴァちゃんのも聴かなきゃアカンですね。購入希望リストに入れておきます^_^;;

投稿: Orfeo | 2006/10/06 23:13

メトの映像ですが、TBしますm(_ _)m

投稿: edc | 2006/10/07 09:57


edcさん、ありがとうございます。
TB返しさせていただきます^_^;;

投稿: Orfeo | 2006/10/07 17:27

この映像の録画が見つかったので、記事にしました。リンクとTBさせていただきましたので、よろしくm(_ _)m

投稿: edc | 2006/10/08 22:00


edcさん、再度のTB&リンク、ありがとうございました。
再びTB返しさせていただきます。

投稿: Orfeo | 2006/10/09 08:56

TBありがとうございます。
それぞれの役に2、3曲の長いアリアがあるのって、何回も聴いて、アリアが好きにならないと退屈ですよね。今のところエレットラの最後のアリアだけが楽しみです。
TB返しさせていただきます。

投稿: keyaki | 2006/10/26 21:13


keyakiさん、どうもです。
その気持ち、よく分かります^_^;;

投稿: Orfeo | 2006/10/26 22:23

>ジェリー・ハドリー
10日に猟銃?空気銃自殺を図ったそうです。
助かる見込みはないとか....生命維持装置につながれているそうですが...

投稿: keyaki | 2007/07/13 13:35


えええっ!
13日の金曜日になんというニュースが・・・

投稿: Orfeo | 2007/07/13 17:01

>13日の金曜日
無事終わったと思ったのに・・

バーンスタインのボエームの若くて可愛いロドルフォでしたよねぇ・・

投稿: edc | 2007/07/14 16:36


>edcさん、
無事じゃなかったですね。
残念です。

投稿: Orfeo | 2007/07/14 21:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122009/12157595

この記事へのトラックバック一覧です: 『イドメネオ』(グラインドボーン音楽祭):

» イドメネオ [雑記帳]
ウリッセの帰還、エレクトラ、オーリードのイフィジェニー同様、トロイ戦争にまつわる物語。モーツァルト作曲のこのオペラは、クレタの王イドメネオが海の神に最初に彼を出迎える者を生け贄に捧げるという約束をして、帰国を果たすことから起こる悲劇です。 ここに何故か、あのエレクトラ(エレットラ)が滞在しており、トロイの捕われの王女イリアとイドメネオ王の王子イダマンテを争います。相当退屈なオペラですが、のびやかで美しいイドメネオのアリアにはじまる終わり40分ぐらいは、釘付けです。なんといってもエレクトラの狂乱... [続きを読む]

受信: 2006/10/07 09:56

» モーツァルト「イドメネオ」グラインドボーン1983年 [雑記帳]
ずっと以前のテレビ録画です。あらすじその他はOrfeoさんのオペラ・レビューをどうぞ。以前に取り上げたメトロポリタン歌劇場の映像はこちらです。ビデオ・クリップをちょっと追加しました。 クレタ王イドメネオの息子イダマンテはメゾ・ソプラノが担当することが多いようです。メトロポリタン歌劇場の上演も、フレデリカ・フォン・シュターデです。でも、このグラインドボーン音楽祭の上演では、普通のテノールが担当しています。この役は、ケルビーノ@フィガロの結婚やオクタヴィアン@ばらの騎士と違って、なにしろ怪物を退治... [続きを読む]

受信: 2006/10/08 21:48

» 新国立劇場「イドメネオ」 [雑記帳]
10月の新国立劇場は、モーツァルト作曲「イドメネオ」いわゆるオペラ・セリアで、「フィガロの結婚」などオペラ・ブッファに比べると、正直、長くて退屈。でも、最後の幕のイドメネオののびやかな歌とエレットラの狂乱の歌は好きです。ギリシャ神話、そしてトロイ戦争に関わるお話です。あらすじは新国立劇場のホームページでどうそ。 というわけで、けっこう退屈もしながら鑑賞。同じ歌を二、三回繰り返すのにはかなりうんざり。ちょっと目を閉じて、一瞬うとうと... した後目を開けても、まだ同じ場面... というわけで、物... [続きを読む]

受信: 2006/10/26 19:33

» 新国《イドメネオ》2006.10.25鑑賞 [keyakiのメモ、メモ.........]
モーツァルト生誕250周年記念、新国立劇場のスタンプラリー、今回の《イドメネオ》が、最後の演目になります。《イドメネオ》は私には縁のない(つまりRRのレパートリーではない)オペラですので、ビデオで視聴しているとはいえ、熱心には見ていませんので、お初ということになります。 《イドメネオ》は、1781年モーツァルト24歳の時の作品で、ギリシャ神話を題材にした「オペラ・セリア」の傑作です。今回の新国の《イドメネオ》は、舞台も色彩豊かで、美しく、衣裳も各幕ごとに、つまり3回もお色直しをして豪華、その上、ハ... [続きを読む]

受信: 2006/10/26 21:13

« 日本、ガーナに敗戦 | トップページ | くたばれヤンキース »