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2006/09/01

『シモン・ボッカネグラ』(パリ・オペラ座)

Dvdsimon_boccanegraparis DVDライブラリーより。

パリ・オペラ座での公演だが、1971年にアバドとストレーレルが組んでミラノ・スカラ座で発表したプロダクションが元になっている。スカラ座のキャストの中のカップッチッリ、フレーニ、ギャウロフの主役三人はそのままだが、ガブリエーレ役のカレーラスがルケッティに、パオロ役のヴァン・ダムがシアヴィに代わっている。

なにせ30年近く前の収録なので、音、映像ともに劣化が激しいのは致し方ないところだ。とりわけ映像は全体の色具合がくすんでしまって、平板に見えてしまう。舞台写真などで見る限り、落ち着いた色合いではあるものの、かなり色彩を豊かに使った美しい舞台(美術=フリジェリオ)だったようだが、その辺の感触はうっすらとしか読み取れない。さらに、きのけんさんからの報告によれば、このプロダクションにおいてストレーレルは舞台前面に紗幕を張り付けて見せていたそうだが、テレビ用の映像収録をする際、照度の問題でこの紗幕を取っ払ったとのこと。舞台全体がおぼろげに、幻想的に浮かび上がるストレーレル特有の舞台イメージを思い起こしながら、この映像を脳内変換するしかない。

光と影の微妙な変化によって、ドラマの流れをスムーズ、かつ有機的に展開させていくストレーレルの手腕はさすがに見事だ。群集の動かし方も上手い。帆船が舞台後方にシルエット状に浮かび上がる構図は、ただ美しいばかりでなく、このドラマ全体の背景やシモンの心象風景とも緊密に結び付いていて、実に印象的だ。雄々しくも、苦悩に満ちた人間シモンの姿がそこから鮮明に浮かび上がってくる。当時40代半ばのアバドの瑞々しい音楽の運びに乗って、カップッチッリ、フレーニ、ギャウロフたちが張りのある歌唱を披露。陰鬱な話ではあるが、輝きに満ちた舞台だと思う。

きのけん氏:
>僕が実際に見た中で、えらい違いがあったのがジョルジョ・ストレーレルの
>《シモン・ボッカネグラ》で、まづ間口全面に張ってある紗幕を外しちゃった。
>それで照明を明るくしたもんで、もう通常の時とは似ても似つかぬ色彩に
>なってるんだよね。あの舞台美術は、かなり派手な色を使って、それに
>仄暗いオレンジ色の照明を当てて萌黄色にしといて、それをまた紗幕という
>フィルターを掛けた上で客席から見るように作ってあるんで、それを全部
>外して、明るい照明を当てちゃうと…これはもう、なんとも醜悪な舞台に
>なっちゃうんだよね。本来はルネサンスの絵画がうっすら埃を被っている
>という色調なんだよ。

★★★★

シモン・ボッカネグラ:ピエロ・カップッチッリ
マリア/アメリア:ミレッラ・フレーニ
ヤーコポ・フィエスコ:ニコライ・ギャウロフ
ガブリエーレ・アドルノ:ヴェリアーノ・ルケッティ
パオロ・アルビアーニ:フェリーチェ・シアヴィ
ピエトロ:ジョヴァンニ・フォラーニ
射手隊長:マリオ・アニェッティ
アメリアの侍女:マリーゼ・アチェッラ

合  唱:パリ国立歌劇場合唱団
管弦楽:パリ国立歌劇場管弦楽団
指  揮:クラウディオ・アバド
演出補:ランベルト・プジェッリ
美術・衣裳:エツィオ・フリジェリオ
撮影監督:アンドレ・フレデリック
演  出:ジョルジョ・ストレーレル

[  収録:1978年、パリ・オペラ座  ]

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コメント

この画質の悪さは、時代のせいもありますが、○○ライフのせいだと思います。これが大手レーベルでしたら、今頃、きれいな画質に修復して再発売になっているでしょうに、最近のそれほどレベルが高いと思えないものがどんどん映像化されているのに、名舞台、名演といわれるものがこれでは、残念無念ですね。
先頃、ドイツグラモフォンから発売されたケン・ラッセル演出の「ファウスト」もベルカント(日本の○○ライフとおなじような会社かな)がTV放送の録画をそのまま使って、VHSで発売していましたが、見違えるように舞台の隅々まで見えるように修復されていました。

ブログの題は、「ヴェヒターのシモン:1971年《シモン・ボッカネグラ》」ですが、このパリ・オペラ座のシモンについてのきのけんさんの貴重なコメントがありますのでTBします。
実際にはストレーレルは来なかったようですね。まあ、スカラ座でストレーレルの指導を受けている歌手さんなので問題ないということなんでしょうね。

投稿: keyaki | 2006/09/01 09:15


keyakiさん、どうもです。TBもありがとうございました。
そうですね。ドリーム○○だから、ってのもありますわね^_^;;
これも非常に悲しい定めと言うべきでしょうか?・・・
TB返しさせていただきます。

投稿: Orfeo | 2006/09/01 11:05

ストレーレルの記事を書いてましたので、またTBさせて頂きました。
ウィーンには、ストレーレル氏、ちゃんと行ってますね。ビデオクリップで、お姿が見られます。

シモン・ボッカネグラのシモン役は、ドミンゴもライモンディもやってみたいと言ってますので、魅力的な役なんですね。
メトの映像(こちらではまだとりあげてませんね)で、今更ドミンゴがアドルノって、なんなんだろうとおもいましたが、もしかしたら、ドミンゴはシモン役だと勘違いして引き受けたのかも、なんて想像しちゃいました。

>エツィオ・フリジェリオ
の衣裳って、ほんと重そうですね。ライモンディだからいいですけど、並の体格では、衣裳が歩いているようになっちゃいますよね。
edcさんのブログで、コロのミラノ・スカラ座のローエングリン、キャンセル事件、ストレーレルと意見が合わなかったというよりは、衣裳が重かったのが、一番の理由のような気もしますねぇ。

投稿: keyaki | 2006/09/02 20:19


keyakiさん、再度のTBありがとうございました。
うん、コロは重圧に耐えられなかったんでしょうねえ・・・(笑)。

投稿: Orfeo | 2006/09/02 21:55

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» ヴェヒターのシモン:1971年《シモン・ボッカネグラ》 [keyakiのメモ、メモ.........]
1971年7月、バイエルン国立歌劇場、アバド指揮、オットー・シェンク演出によるヴェルディ《シモン・ボッカネグラ》のライブの録音が手に入った。ライモンディは29歳、ヴェヒターとの共演で、下記の2枚の写真、このときの公演のもので、最近になって、このリハーサル写真の謎が解決した。フィリッポに懇願するロドリーゴ? こんな場面あったかな?と悩んでいたが、フェイスコとシモンだったのだ。ライモンディは、1968年9月、26歳でロールデビュー、現時点では、1997年11月の公演が最後となっている。インタビューで、... [続きを読む]

受信: 2006/09/01 09:04

» オペラの演出(アバド&ジョルジョ・ストレーレル) [keyakiのメモ、メモ.........]
ジョルジョ・ストレーレル(Giorgio Strehler 1921-1997)ヴィスコンティ亡きあとのイタリアが誇る名演出家。ミラノ・ピッコロ座の創立者の一人として知られ、一方、オペラの演出も1947年スカラ座の「椿姫」を皮切りに数々の名舞台を残した。1971年12月、ミラノ・スカラ座のシーズン開幕公演のアバド指揮、ストレーレル演出『シモン・ボッカネグラ』は、特に有名である。RRは、1973年12月の再演時にフィエスコを歌い、その後もアバド指揮、ストレーレル演出で、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌... [続きを読む]

受信: 2006/09/02 19:42

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