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2006/07/13

『Uカルメン』

Cineken2_logo_1 Dvducarmen_2 orfeo.blog=CineKen2
共同企画:
「《カルメン》幻想:その1」

▼ マーク・ドーンフォード=メイ《Uカルメン》
(南ア、2005)
Mark DORNFORD-MAY,
U-CARMEN E-KHAYELITSHA

監督:マーク・ドーンフォード=メイ
脚本:マーク・ドーンフォード=メイ、アンディスワ・ケダマ、ポリーヌ・マラファーネ(原作:プロスペル・メリメ、リュドヴィク・アレヴィー、アンリ・メイヤック)
製作:マーク・ドーンフォード=メイ、カミーラ・ドライヴァー、ロス・ガーランド(南ア SPIER FILMS)
音楽:ジョルジュ・ビゼー(オペラ《カルメン》)
指揮:チャ−ルズ・ヘイズルウッド
振付:ジョエル・ムテトゥワ
撮影:ジョルジュ・ビカーリ
編集:ロネル・ルーツ
美術:クレイグ・スミス(照明:ケニー・フィッシャー)
衣裳:ジェシーカ・ ドーンフォード=メイ
音響:バリー・ドネリー、サイモン・ライス
出演:ポリーヌ・マラファーネ(カルメン)、他
Pauline Malefane .... Carmen
Andile Tshoni .... Jongikhaya(>ホセ)
Lungelwa Blou .... Nomakhaya(>ミカエラ)
Zweilungile Sidloyi .... Lulamile Nkomo(>エスカミーリョ)
Andries Mbali .... Bra Nkomo
Zamile Gantana .... Captain Gantana
Andiswa Kedama .... Amanda
Ruby Mthethwa .... Pinki

(カルメン以外、登場人物名が変わってるし、だいたい男女の区別だって名前からでは定かでないし…、どいつが誰だかあまりよく判らんので子細は以下へ↓)
IMDb:http://www.imdb.com/title/tt0445776/fullcredits#writers

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ジャンル:ケープタウン版《カルメン》

 2010年の次回W杯は南アで行われるそうですね。このフィルムの背景になっているケープタウンなどでは、そちらのオリンピック誘致同様、W杯用の巨大スタジアムなんかを建てるより先にすることがいっぱいあるだろ!と反対してるらしいんですが、このフィルムの背景に使われている見渡す限り地平線まで拡がっているようなすごい黒人スラム街なんかを見ちゃうと、なるぼどなあ…なんて思っちゃいますよ(笑)。今keyakiさんのブログ(←)でフランチェスコ・ロージの《カルメン》をやってるんで、こっちも対抗して、南ア製の現地語に焼き直した《カルメン》です。だから「 U-CARMEN E-KHAYELITSHA」というわけで、「KHAYELITSHA」はそのスラム街の名前です。南アではではアフリカーンズ語をはじめ公式に11もの言語が使われているそうなんですが、これはソサ語に移し替えられた《カルメン》。こっちではスラム街の大ボスになっている闘牛士エスカミーリョがほぼ完全にいなくなっちゃいましたが、音楽だけは2/3くらいはオリジナルが忠実に再現されてます。つまりオペラ映画の変種で、昨年のベルリン映画祭に出品され大賞を取っちゃったようなフィルムなんです。ケープタウンのスラム街に展開する「カルメン」…。なんか面白そうでしょ。うん、結構面白いんです。皆さん歌はあまり上手くないけど(笑)、役者としてはなかなかのもん、映画としてかなり見れる代物だからベルリン映画祭が金熊賞をやっちゃった気持ちはよく判る!

 英国人の若手演出家で王立シェイクスピア劇団にも演出を発表しているというマーク・ドーンフォード=メイという人が、2000年に南アに派遣されて、現地でオーディションをやって集めた人たち計40人の現地人歌手でオペラ劇団を組織するんです。「南ア演劇アカデミー (South African Academy of Performing Arts)」という名称で活動を開始した劇団は、その後ソト語名「タレント連合 (Dimpho di Kopane)」劇団と改称され、即座に英国へ六ヶ月間の研修ツアーに旅立つ。翌2001年にこの劇団が初めて立ち上げた制作がビゼーの《カルメン》だったそうで、その成功から長編映画を撮るプロジェクトが持ち上がった。そして2004年4月から5月にかけて撮影されたフィルムがこれというわけ。ドーンフォード=メイにとっても初めて撮った映画だそうで、オットー・プレミンジャーの《カルメン・ジョーンズ》以上に《カルメン》を言葉も文化もまったく異なるところへ移しちゃった、つまり keyakiさんのところでやってるフランチェスコ・ロージ版と正反対の発想で撮ったフィルムというわけですが、これが結構成功してるんだよね。

 さすがに闘牛士エスカミーリョだけはどうしようもなかった模様で、あっさり抜け落ちてますけど、物語を倣るだけでなく一応オペラ映画の体裁を備えているんだ。だからエスカミーリョが登場する(…というか登場しない)後半こそかなりはしょられますけど、前半はかなり忠実にオペラを再現してる。ケープタウンの黒人の住むスラム街を背景に使ったカルメンということで、白人は一人も出てきません。郊外電車の線があって、それに沿って国道が走ってる。その脇に拡がる広大なスラム街。近くに飛行場もあるらしい…。

 初っ緒町の文化センターみたいなところで、住民の女声合唱団に指揮者が《カルメン》の合唱の練習をつけている。一人遅刻してきて、またあいつかよ〜なんて胡散臭い目で見られるんで、ご免なさ〜いなんて言って合唱に入ってくるお姐ちゃんがポリーヌ・マレファーネさん、これがカルメンさんだと後でわかるんですが、すごいビヤ樽型のド迫力の黒人お姐ちゃんです(>写真)。彼女自身まさにこのスラム街の出身で、シナリオ執筆にも加わってる。歌はあまり上手くないけど、迫力では抜群だよね。こういうのを見ちゃうと、オペラでのあのふやけた歌手なんて見れたもんじゃないです。ホセはここでは「ヨンギハヤ」さんといいまして、アンディレ・チョーニ君はこの地区担当の警察署員。型通りミカエラちゃんが訪ねてきて、警官たちの一団にからかわれ、やっとパトロールから戻ってきたホセ君に故郷のお母さんの許へ帰っておくれと言います。フィルムではミカエラちゃんはホセ警官の死んだお兄さんの奥さんだったらしいんだよね。お母さんはミカエラちゃんが大好きなもんで、弟と再婚して欲しいというわけよ。もちろんミカエラちゃんも結構迫力ある丸々太った黒人女性なんだ。

 カルメンさんといえば、こっちでも煙草工場、こっちは葉巻じゃなくて紙巻きですが…の女工さん。これがなんか大のオペラ・ファンらしくて、就業中にテレビでお気に入りの歌手が出ている番組を見てるんですわ。そうそう、南ア出身のオペラ歌手ってのが結構いるでしょ…。そうすると、別の女工さんが、喧しい!とテレビを切っちゃう。そこで喧嘩になり、ホセ警官が介入してくるというわけ。暴力を振るったカルメンさんを逮捕して留置場に連行する間に誘惑され、逃げられ、カルメンさんがスラム街に逃げ込んじゃったら、もう行方が判らなくなっちゃう。ホセ君は上司の警察署長から大目玉を食らうというわけ。カルメンさんの方は、こっちではスラム街のヤクザたちの溜まり場になっているリラス・パスティアの店に入り浸っていると、その警察署長がやってきて、いかがわしい商売を見逃してやるから、オレと寝ろなんてやってるところに、ホセ君がやってきちゃって、署長をとっちめちゃって、もう署には帰らず、ここに居着いちゃう。そこに闘牛士の代わりに、車に乗って颯爽と現れるのがスラム街の大ボスらしいキザな男なんですね。なにせ、リラス・パスティアだろうが何だろうが、金の力に任せて全部牛耳ってるような奴だから、カルメンさんだって誰だって、こいつには従わなくてはならない。ただ、エスカミーリョをただ単に消滅させちゃうのには躊躇があったらしく、雄牛を殺して犠牲に捧げるなんて民俗的な儀式の場面が出てきます。最初は、どうもホセ警官が好きになったらしいカルメンさんは大ボスを斥けているわけですが、ホセ警官がだんだん本気になってくるに従い、カルメンさんの心は大ボスの方に移っちゃう。ヤクザの仲間に入れられちゃったもんで警官を辞めなくてはならなくなったホセ君の方は、いったんミカエラちゃんと一緒に故郷へ帰省する。

 そして、街の女声合唱団が体育館みたいなところで発表会をやり、《カルメン》の合唱を披露する日がきます。そこへ郊外電車に乗ったホセ君が近付いてくる。お友だちの合唱団員がカルメンさんに、会場にホセ君が来てるから気を付けろなんて注意してる。カルメンさんが合唱隊から抜け出してホールの裏口から脱出する。ホセ君が追う。最後は体育館の裏手の空き地で、どうしても言うことを聞かないカルメンさんをホセ君が殺っちゃう。

 ちょっと後半尻切れトンボ風になっちゃうのが残念なんですが、全員黒人の役者たちがなかなか見応えがあるし、キャメラをスラム街の真っ只中に持ち出して、まさにドキュメンタリー風に撮ってる前半がなかなか見事です。ただ、折角劇中劇風なお膳立てでドラマを囲い込んじゃったんだから、もうひとひねりあったらもっと面白くなったでしょう…。それに、ドーンフォード=メイという舞台演出家がもうちょっと映画をよく知っていたら…。スラム街ファヴェラスを舞台にした ブラジル映画 (1)にこの手のものが沢山あるんだよね。最後に、こういうのを見ると《カルメン》というのがいかに良くできたオペラだかも如実に納得させられる…というワケ。
(2006年06月27日:パリ、IMAGES D'AILLEURS)

CineKen2

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画像:
▼ポスター:
http://www.allocine.fr/film/galerie_gen_cfilm=59718&filtre=&cmediafichier=18604925.html
▼写真 :
http://www.allocine.fr/film/galerie_gen_cfilm=59718&filtre=&cmediafichier=18480451.html
「ポリーヌ・マラファーネ(カルメン:前列右端)と煙草工場の女工たち」

(1):CineKen2ブラジル映画特集
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/bresil05.html

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コメント

きのけんさんのお話だけでも十分面白いですね。
喧嘩の原因が、テレビだったり、カルメンさんが《カルメン》を練習している合唱団員で、闘牛じゃなくて、合唱団の発表会で、会場にホセ君が来ているから気をつけて、、わぁーー笑える。
これってきのけんさんの語り口が面白いから笑えるのでしょうか。実際に映画を見ても笑っちゃいそうな気もしますけど、コメディーではないですよね。

投稿: keyaki | 2006/07/13 16:42

>keyakiさん:
 あれあれ!すごいスピード!
 これとフランチェスコ・ロージのやつを見比べちゃうと一目瞭然なんだけど、やっぱりロージはヴェテランの海千山千なんだよねえ。作り方がすごく上手い!…。ところが、こっちは、やっぱり映画は初めて撮りましたって感じがどうしても出ちゃう。劇中劇に囲い込んじゃうという発想はまさに芝居の演出家的発想なんですが、映画の場合、もうひとひねりしないと、それが活きないんだよ。エスカミリヨなんて、あんな風にあっさり消しちゃう以外にももっとやり方がありそう…。それからロージほど構成がしっかりしてないんで、へーぇスラム街が舞台、へーぇ黒人のデブった迫力お姐さん…なんてのにだんだん慣れてくると、後半ちょっとダレちゃうんだよ。それに、あの有名なトランプ占いの場面なんか、そんなのあったかいな?…くらいに印象薄いし…。やっぱし、なんだかんだ言って、ビゼーのあのオペラは見事に出来てるんですわ。改めてシャッポー!…だね。
CineKen2

PS:
今気が付いたんですが、記事の文末にあるリンクから入る「写真」ページには写真が10枚も入ってますね。まさにそこに飛ぶと思いますが写真の第3番が上にキャピュションを付けた写真です。

投稿: きのけん | 2006/07/13 18:48

TB、コメントありがとうございます
こちらこそ、よろしくお願いします

投稿: 九州っこ | 2006/07/13 19:45


>九州っこさん
ご丁寧にありがとうございます!

投稿: Orfeo | 2006/07/13 20:39

こんばんは
ケツメイシ大好きのヨシといいます。
とりあえずランキングをポチっとね!
今日7/13ケツメイシRYOJIと石川亜沙美さんが電撃入籍の発表をしましたね!
ビックリ&うれしくてついついコメントにこんなこと書いちゃいました。
(もし邪魔だったら削除して下さいm(__)m)
ではまた遊びに来させてもらいます。
よかったらこっちにも遊びに来て下さいね~。ではm(__)m

投稿: ヨシ | 2006/07/13 23:43


ヨシさん、どうもです。
とりあえず、ケツメイシ、私も大好きですよ^_^;;
また遊びにきてくださいね。

投稿: Orfeo | 2006/07/14 08:12

orfeo.blog=CineKen2共同企画「《カルメン》幻想:その2」
▼ペドロ・アルモドバル《マタドール(闘牛士) 炎のレクイエム》(スペイン、1986)
Pedro ALMODOVAR, MATADOR

ジャンル:ホセとミカエラを挟んだ殺人狂カルメンとエスカミーリョの心中天の網島

 (…)エスカミーリョが主人公で、おまけに当然闘牛士。相手のカルメンさんは女流弁護士。この二人が死…というか殺しの美学に憑かれた殺人狂なんですわ。その間に立ってホセ君とミカエラちゃんがうろちょろ。(…)最後は、エスカミーリョさんがカルメンさんの口の中にピストルをぶっ放し、カルメンさんはエスカミーリョさんの背中の急所に簪を突き刺し、愛と死の恍惚の儀式の中で二人は素っ裸でやりながら刺し違えちゃう。…なんか三島由紀夫みたいですねえ…。

(全文は以下のリンク↓から)
http://perso.orange.fr/kinoken2/cineken2/cineken2_cont/cineken2_archive/almodovar_06.html#989

CineKen2=きのけん

投稿: きのけん | 2006/07/16 19:53


きのけんさん、連続投稿ありがとうございます。
早速アップさせていただきました。

投稿: Orfeo | 2006/07/16 20:54

こんにちは★
いつもはサッカーでお世話になっています。
このDVD見て見たいですね。
大きなCD屋さんとかにいけばありますかね?
太った黒人女性のミカエラちゃんに興味があります。
あまりにもキャラが固定された感があるので

投稿: さざえさん | 2006/07/17 09:38


"さざえさん"様、こちらこそ、いつもお世話様です。

え~と、このDVDは国内ではまだ出ていないんじゃないかな?海外では出回っているようなので、輸入盤でなら手に入るかもしれません。

投稿: Orfeo | 2006/07/17 10:30

>さざえさん:

なにせ、ベルリン映画祭大賞受賞作品だから(あのポスターの熊さんのロゴがそう)、こっちでは結構DVDが出回ってるみたいです。
そのミカエラちゃんは、記事中の「▼写真」のリンクから入る写真ギャラリーの6番目の写真の彼女です。カルメンさんよりは一回り小型で、わりと普通の作りだから拍子抜けするかもよ?…。
 カルメンさんは映画ではド迫力でしたが、こうやってスチール写真で見ると、結構柔和な顔してますね。やっぱりオペラ歌手だな…。まあ腕の太さなんかは半端じゃないですけど。
きのけん=CineKen2

投稿: きのけん | 2006/07/18 19:42

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