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2006/06/07

『さまよえるオランダ人』(バイロイト音楽祭)

Dvdhollanderbayreuther ライブラリーより。

ワーグナー作。

元々は1978年にバイロイト音楽祭に登場し、82年まで公演が繰り返されたプロダクションの再演だ。ドレスデン初演版に拠っている、ということで、結末に救済は入らない。全体がゼンタの妄想だったという設定で、オランダ人の肖像画を抱えたゼンタがじっと舞台を見守る中、進行していく(結末はゼンタが高所から飛び降り自殺をして、幕)。妄想に憑りつかれた乙女、ゼンタをバルズレフが狂おしいほど病的に演じきっている。その性的願望であるオランダ人にはたくましい体躯をした黒人のエステス。白づくめの集団が怪しくうごめくなど、怪奇幻想的な舞台がたたみ掛けるようなリズムで展開する。
音楽面でもネルソンが鋭い切れ味で全体をリードし、それに乗って歌手陣が強烈に歌い上げている。ノルベルト・バラッチュ指導の合唱団の充実した歌唱もまた見事だ。

★★★★

ダーラント:マッティ・サルミネン
ゼンタ:リーズベト・バルズレフ
エリック:ロベルト・シュンク
マリー:アニー・シュレム
舵手:グレアム・クラーク
オランダ人:サイモン・エステス

合  唱:バイロイト祝祭合唱団、特別合唱団
管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団
指  揮:ウォルデマール・ネルソン
装  置:ペーター・シコラ
衣  裳:ラインハルト・ハインリヒ
撮  影:ブライアン・ラージ
演  出:ハリー・クプファー

[  収録:1985年、バイロイト祝祭劇場  ]

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コメント

>メンテナンス
ソネットも来週はじめごろ大規模改修とやらの予定です。
いやですねぇ....

このオランダ人、以前の記事ですが、TBしますm(_ _)m

投稿: edc | 2006/06/07 08:11


edcさん、おはようございます。
W杯直前のメンテに戦々恐々ですわ^_^;;

TBありがとうございます。
早速TB返しさせていただきました。

投稿: Orfeo | 2006/06/07 08:45

 初演時 (1978年)に見ました。
 うん、これは鮮烈でしたねえ!…。ただ、これほどヴィデオでなかなか上手く捉えられない演出もないんです。どうしてもドラマ全体がゼンタの夢になってるとか「読み替え」というより「囲い込み」の手法の方に目が行っちゃう。ただ、実際に見てると、あんなものは演出のごく一部のエピソードに過ぎない。クプファーの演出で圧巻なのは、例えば第三幕の合唱の場面、ノールウェイの水夫たちが「起きろ!起きろ!」と呼びかけると、オランダ人水夫たちの合唱が突然始まっちゃう箇所なんかで舞台全体がパニック状態に陥る場面なんかにクプファー演出のスゴさがあるんです。
 ちなみに、これはクプファーが西側に進出した初めての演出、それもバイロイトということで、あんな小細工を弄したんでしょうが、この種の小細工はだんだんクプファーの演出から姿を消していきます。
 というのも、こういう囲い込みの技法というのは、一頃ブレヒト系の演出家たちが散々っぱらやった演出なんで、1978年の時点でも、いかにも時代錯誤という感じがしました。例えば、こちらも若い頃ブレヒトのベルリナー・アンサンブルの仕事などから散々影響を受けたジャン=ピエール・ポネルなんかが、同じ《オランダ人》をこちらは第一幕の若き水夫の夢として囲い込んだり、《ローエングリン》をエルザの夢にしたり…。だから、この演出でドラマ全体がゼンタの夢として囲い込まれているのをオニの首でも取ったようにはしゃぎまくって喧伝した評論家たちというのはよっぽど演劇部門に疎い人たちだったんです。
 それから、なるほど、この時点でもキャストがほとんど変わってませんねえ…。唯一、水夫が初演時にフランシスコ・アライサで、指揮がデニス・ラッセル=デイヴィースだったくらい。ラッセル=デイヴィースという現代音楽専門家が呼ばれたのは、当時《指輪》を振っていたピエール・ブーレーズの推薦でした。
 もう一つ、ヴィデオで捉え難いのが1970年代のゲッツ・フリードリヒ版《タンホイザー》。あれは、山のように高いところに舞台が仮設してあって、客席からは遙か上を見上げる感じ。おまけにタンホイザーが居る空間まで、舞台の特定の箇所だったり…実演に接しなくては判らないところがいっぱいあったなあ!…。
きのけん

投稿: きのけん | 2006/06/09 08:08


>舞台全体がパニック状態に陥る場面

舞台上の左右のパネル状の壁がぐるぐる回転して、煽りたてるところですかね。ナマで見ると、迫力ありそうですね、あの場面は・・・。

クプファーがバレンボイムとやった《ローエングリン》もその「囲い込み」ですよね。最後に白鳥の死骸が出てくるやつ。あの白鳥とここでのゼンタは被りますね。

投稿: Orfeo | 2006/06/09 12:17

 …そうそう、あれがそうでしたね。ただ、僕としてはあれはクプファーの仕事としてあまり例に出したくない制作なんです。いつだったか Orfeoさんとも議論した通り、明らかに失敗作だから。バレンボイム側もあの手の淡いロマンティスムは彼の最も苦手とする音楽だし、ああいう動きの少ない素材はクプファーにとっても、あまりインスピレーションを駆られる素材ではない。おまけにベルリン(…とパリ)で主役をやったヨハン・ボータはローエングリンにはほど遠い形象だし、えらい大根さんとくると、クプファーとしては、昔取った杵柄でどうしても、あいつを囲い込んじゃえ…という発想になるよね。そうそう、そのヨハン・ボータさん、この時点ではバイロイトの合唱団員で、あの合唱の中に入ってるはづ…。
 それから、Orfeoさんの上のコメントによると「舞台全体がパニック状態になる場面」をクプファーは明らかに変えてますね、1978と1985年とでは…。初演時はほとんど何もない舞台、幽霊船くらいは置いてあったと思うけど…、にストロボの白色灯が交錯して、ほぼ合唱隊の動きだけでパニックが表現されていた(こういうのがヴィデオになり難いんだよね>別項《指輪》での《ワルキューレ》の騎行の箇所とか…)。それが随分装置を使った表現に変えられているようですね。
 最後に初演時のサイモン・エステスがすごかったこと!。当時彼は欧州デビューしたてで誰も知らなかったもんで、第一幕で登場するなり、おお、オランダ人を黒人にして、頭までアフロ・スタイルにしちゃった、スゲー!なんて思ったものです。これを見たショルティがえらく気に入っちゃって、その数年後企画の立ち上がった彼の《指輪》のヴォータンには是非この人!と頑張ったんだけど、演出のピーター・ホールがヴォータンは白人でなくてはダメ!ってクギを刺しちゃったもんでジーグムント・ニムスゲルンなんて、当時落ち目もいいとこの人になっちゃった。お陰でこちとら 1984年にペーター・シュナイダー+ピーター・ホール+ニムスゲルンで、これ以上ひどい《指輪》はないってな代物を見せられたんだ!(笑)。
きのけん
 

投稿: きのけん | 2006/06/10 18:23


ああ、なるほど!合唱隊の動きもたしかに激しいですよね、この場面は。ただ、このヴィデオ、映像監督がブライアン・ラージなんで、ちょっとね・・・(笑)。ちなみに、今見直してみたら、左右に置かれているのは、壁じゃなくて、家並みでした。まあ、それが回転して、壁になったり、元に戻ったり、するというわけ。

投稿: Orfeo | 2006/06/10 18:51

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姉妹ブログValenciennes Traeumereienにベルリン国立歌劇場でのワーグナー「さまよえるオランダ人」熱々鑑賞記が掲載されました。 バイロイト音楽祭(1985)の映像と同じような演出だったそうです。この映像、はじめて観たときは、見ている自分まで気が変になりそうな感じで、気分的に引いてしまいましたが、あとですっかり納得してしまったものです。 物語を終始一貫、伝説の幽霊船の船長に恋こがれる娘の病的な性的妄想としたものです。いわゆる「読み替え」と言われる演出らしいですが、はじめか... [続きを読む]

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