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2006/03/06

『魔笛』

dvd-magicflute-bergman スウェーデンの巨匠イングマル・ベルイマンが制作したオペラ映画。元々は1975年元旦にスウェーデン全国でテレビ放映されたものだが、すぐに大反響となり、同年のカンヌ映画祭において招待上映され、その後世界各国で劇場上映されることになった。言語はスウェーデン語を使用(翻訳:アルフ・ヘンリクソン)、映像はドロットニングホルム王宮劇場とスタジオで撮影されている。

私が『魔笛』を苦手としていることはここで何度も書いている。それにはいろんな理由があるけれども、なにより、いわゆる夜の世界と太陽の世界の対立だとか、善悪の逆転だとか、宗教じみた説教だとか、そういったことにどうしても胡散臭さを感じてしまうせいだと思う。そもそも、そんなごたいそうな話なの、これ?ひょっとしてこれは、たんなる夫婦喧嘩の話なんじゃないかという気が薄々していた。夫婦とはもちろんザラストロと夜の女王。だいたい、僧侶ともあろうものが他人のところの娘を隠蔽しているって、おかしいでしょ?だからあれは、自分の娘を犬猿の仲になってしまった(あるいは離縁した)妻からただかくまっているだけなんじゃないか?そう見ると、この話も合点がいく点が多くなる。いきなり外からやってきた若者がちょっと娘といい感じになっているのを見て、試練を受けてクリアさえすればその結婚を許し、挙句には自分の後継者にするという。自分に付き従っている多くの僧侶たちをあっさり押しのけて?うんうん、婿として迎え入れるという話だな、こりゃ。きっとそうに違いない。いかめしい神殿の中での話なんて嘘っぱち。これはどこにでもある家庭の話そのものだ。

だから、ベルイマンがここでザラストロとパミーナを父と娘として描き、第2幕でパミーナにはっきりと「お父様」とザラストロのことを呼ばせているのは、まったくもって正しい!・・・と私は思う。まあ、それで『魔笛』というオペラがとびきり面白くなるわけでもないけれど・・・(笑)。

すっきり綺麗にまとまった映像で、中には北欧らしく雪のシーンなんかも出て来るが、ベルイマンは大人だけでなく、子供にも楽しめる内容にしたかったようで(スウェーデン語にした理由もここにある)、事実、ある少女がじっと楽しげに舞台を見つめているアップ映像を何度も差し挟んでいる。まるで、「面白いから一緒に楽しもうね」なんて言っているかのように。でも、最後の炎の試練の場で白塗り前衛舞踊を繰り出したりして、はたして子供は大丈夫なのだろうか?やっぱり私みたいに『魔笛』が苦手になっちゃうかもよ・・・(笑)。

★★★

タミーノ:ヨーゼフ・ケストリンガー
パミーナ:イルマ・ウッリラ
パパゲーノ:ホーカン・ハーゲゴード
パパゲーナ:エリザベット・エリクソン
夜の女王:ビルギット・ノールディン
ザラストロ:ウーリグ・コール
三人の侍女:ブリット=マリ・アルーン
          キルステン・ファウベル
          ビルギッタ・スミディン
モノスタトス:ライナール・ウルフン
弁士:エリック・セーデン
僧侶:イェスタ・プリュツェリウス
    ウルフ・ヨハンション
三人の童子:アンスガル・クローク
          ウルバン・マルベリ
          エルランド・フォン・ハイネ

合  唱:スウェーデン放送合唱団
管弦楽:スウェーデン放送交響楽団
指  揮:エリック・エリクソン
振  付:ドーニャ・フォイアー
美  術:ヘンリー・ノアマーク
衣  裳:カリン・エルスキーネ
      ヘンリー・ノアマーク
撮  影:スヴェン・ニークヴィスト
監  督:イングマル・ベルイマン
製  作:モーンス・ロイタースヴェード

[  制作:1974年、スウェーデン  ] 

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コメント

Orfeoさん、こんにちは。
なるほど~夫婦喧嘩ですか! うんうん、そうかもしれない。Orfeoさんの分析、かなり鋭いです。
実は、私も《魔笛》は苦手。
もしも見る機会が巡ってきたら、その時はホームドラマのつもりで見てみましょう。(^^)

投稿: snow_drop | 2006/03/06 12:52


snow_dropさん、こんにちは。
ご同調いただき、誠にありがとうございます^_^;;

《ホームドラマ・まてき》・・・うん、なんとも心おど・・・らないなあ(笑)。

投稿: Orfeo | 2006/03/06 16:44

Orfeoさん
TBしますm(_ _)m

ソネットはここのところずっとほんとに運がよくなければ、行き着けない状態なので、TBもうまくいくかどうか?

投稿: edc | 2006/03/06 17:09


edcさん、TBありがとうございます。

本当はこちらから先にTBさせていただこうと思っていたのですが、そちらの記事まで辿り着けませんでした。ホント、So-net、重過ぎ・・・。

投稿: Orfeo | 2006/03/06 17:53

 実は、これを Orfeoさんに直接リクエストしちゃったのは僕なんで、ちょっとコメントを加えときます。というのも僕自身はベルイマンといのがえらく苦手でして、それで Orfeoさんに押しつけちゃった(笑)というわけ。左←のオペラ・レヴューINDEXでは子細が抜けててただの《トスカ》になってますけど、ブノワ・ジャコ監督の《トスカ》*もそう…。ただ、これだけは好きな映画なんで、Orfeoさんに頼んじゃった(笑)。

http://orfeo.cocolog-nifty.com/orfeoblog/2006/02/post_3632.html

 実は、ロルフ・リバーマンが2度ほど、《魔笛》演出にベルイマンを引っ張り出そうとして失敗してるんだ。最初はハンブルク州立歌劇場時代で、代わりに演出を担当したのがピーター・ユスティノフ、指揮(+グロッケンシュピール:そういや僕がザルツブルクで見たヤツでもジェイムズ・レヴァインが楽しそうにチンコンカンと自分でやってたなあ…)がショルティ。その10年後に今度はパリ国立歌劇場で、今度はカール・ベーム指揮で再びベルイマンに持ち掛けたんだけれど、また失敗。その代わりにできたのがこのフィルムというわけなんです。ベルイマンは演劇部門の演出家としても有名で、僕も2本くらい見てますが(シェイクスピアと、もう1本はモリエールだったかな?)、芝居の演出家としては全然たいしたことがなかったなあ…。
 ただ、この映画で非常に気に入ったのは、ただ単なる舞台中継にしてなくて、舞台裏や客席も含めたオペラ公演そのものを対象として映画化しちゃったことですね。昔やった故ダニエル・トスカン・デュ・プランチエさんのインタビュー*でも言ってますが、ただのメ−キング・オヴって形じゃなくって…。だから、Orfeoさんのコメントを読んでありありと思い出しちゃったんだけど、そう、何度か出てくる観客の女の子…、あれ、いいですよね。その意味でズラフスキが《ボリス・ゴドゥーノフ》に出してる映画撮影ショット(まさかカットされてはいないよね!、僕は試写会でしか見てないんだけど)もあの乗りなんだよね。

http://perso.wanadoo.fr/kinoken2/intv/intv_contents/intv_toscan.html

 最後に、キャスト表を見てビックリしたんだけれど、後に結構大活躍した人たちが結構出てるんだよね。一番有名になったのがパパゲーノのホーカン・ハーゲゴード。確かに、あれ以後そこいらじゅうでパパゲーノをやってたけど、僕はペレアスや《ボリス》(シュイスキーかな?)なんかでも見たことがあるぜ。ザラストロのウーリグ・コールと弁者のエリック・セーデンは主にバロック部門で活躍して、マルゴワールのラ・グランド・エキュリに何度か出てきたし、侍女の一人をやってるブリット=マリ・アルーンは、その後パリでダニエル・メスギッシュ演出版リゲッティ《ル・グラン・マカーブル》に登場して超+超+超絶技巧コロラトゥーレ役を見事にこなして一躍今のナタリー・ドゥセイ並のスターになっちゃった。《バラの騎士》のゾフィー(+キリ・テ・カナワ+フレデリカ・フォン・シュターデ+クルト+モル)、《アラベッラ》のズデンカ(+キリ・テ・カナワ)…。そして指揮のエリック・エリクソンは、ご存知、欧州最高の合唱指揮者の一人で、確かアバドがベルリン・フィル日本ツアーにこの人の合唱団を連れて行かなかったっけ?…。パリには連れてきたぜ。
以上
きのけん= CineKen2

投稿: きのけん | 2006/03/06 18:21


きのけんさん、背景説明(?)、ありがとうございます。

>そう、何度か出てくる観客の女の子…、あれ、いいですよね
TB先のedcさんのところで語られていますが、あの女の子、ベルイマン監督の娘さんらしいですよ。どうりでやけに長々と映し出されているんですよね・・・って、たんなる親馬鹿じゃん!(笑)

投稿: Orfeo | 2006/03/06 20:24

>その意味でズラフスキが《ボリス・ゴドゥーノフ》に出してる映画撮影ショット(まさかカットされてはいないよね!、僕は試写会でしか見てないんだけど)もあの乗りなんだよね。

「魔笛」とは無関係な部分に反応!
カットされてないと思います。映画を撮っていると分かる部分もあったり、舞台裏もあって、なんで舞台裏で演技してるの?なんて思う部分もあったり、
最初は、幕が開くのを待っている観客がいて(そのなかに、ムゾルグスキーさんもいる)、幕があくと、霧の中を馬車が走っていて、その映像がビリビリと破れて、オペラが始まるというかんじだったかな。
最後は、背広を着たシュイスキーが、舞台の端っこに腰掛けていて、かじっていたりんごを放り投げる、、、「2001年宇宙の旅」の猿が投げたバナナかい?と思ったり、かなり変わった映画で、オペラ映画といえるのかどうかですね。

>ベルイマン監督の娘さんらしいですよ、、、たんなる親馬鹿じゃん!(笑)
こういうのって、けっこうあるんでしょうね。
ロージー監督の「ドン・ジョヴァンニ」は、ライモンディの前の奥さんがちょっと出ているというので、捜しちゃいましたよ。美人の奥さんだったから自慢したかったのかな。

投稿: keyaki | 2006/03/07 15:34


>こういうのって、けっこうあるんでしょうね
う~ん、有名なところでは、コッポラだって、北野武だって、ついつい自分の娘を出しちゃってますからねえ。それこそ、ごまんとあるんでしょうね、こういう例は・・・。

投稿: Orfeo | 2006/03/07 20:31

初めまして。TBありがとうございました。
edcさんやKeyakiさん、Sardanapalusさんのお宅で何度もすれ違っているのですが、ご挨拶が遅れてすみませんでした。
こちらもしょっちゅう覗かせて頂いているんですけどね(^。^;

この映像を見る前から、何となく《魔笛》は夫婦喧嘩と捉えるのが一番丸く収まるんじゃないかしら?と、漠然と思っていたので、一度この映像は見たかったのです。その点は、すっきり収まってますよね。

こちらはインデックスがきちんとしているので、記事を探しやすいですね。
私の記事は、ウェットで重たいのが多いのですが、この映像以外にも、いくつか同じ映像の記事も扱っています。

宜しければまたTB等、お願いしますね。

投稿: ヴァランシエンヌ | 2006/03/07 22:49


ヴァランシエンヌさん、どうもはじめまして!相互TB&コメント、ありがとうございました。やはり、「はじめまして」になるんですね。すいません、しょっちゅうお見掛けしているので、確信が持てず、そちらに素っ気無いコメントを残してしまいました。お許し下さい。

そちらはしっかりとした記事を書かれているので、いろいろと参考になります。どうぞ今後とも、よろしくお願いします。

《魔笛》、やはり夫婦喧嘩の話ですよねえ。もう、それに決定!(笑)

投稿: Orfeo | 2006/03/08 08:45

はじめまして。
TBありがとうございました~。
あのあと感想を別に書いたんですが、どうも私は笑ってしまって。
最初のドラゴンの着ぐるみあたりでノックアウトされました(笑)。
オペラ自体はじめて状態でしたので、正直、また別の魔笛をみてみたいです(笑)

投稿: よー。 | 2006/03/29 09:37

"よー。"さん、どうもはじめまして。コメントありがとうございます。
まだまだいろんな《魔笛》がありますから、楽しまれるといいと思いますよ^_^;;
今後とも、よろしくお願いします。

投稿: Orfeo | 2006/03/29 12:16

 keyakiさんの方のコメントに引用+リンクしました(1)。そういや、ロージーは、ベルイマンのあの女の子を見て、あっちであの男の子を出したのかもね?…。デビュー作《緑の髪の少年》とか、その他いろいろ、もともと子供が大好きな人だし…。

(1):
http://blog.so-net.ne.jp/keyaki/2006-06-29

きのけん

投稿: きのけん | 2006/06/29 17:03


きのけんさん、わざわざリンクを付けていただき、ありがとうございます。
いいかげんロージーを扱いたいなあ、とは思っているのですが、これがなかなかどうして・・・。まあ、期待しないで待っていてください^_^;;

投稿: Orfeo | 2006/06/30 08:26

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