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2005/12/20

『ジークフリート』(バイロイト音楽祭)

dvd-siegfried-bayreutherDVDライブラリーより。

『ニーベルングの指環』シリーズの第二夜。

バレンボイム&クプファーの『指環』にとうとうジークフリート登場。だが、役の上での弱々しい立場とは裏腹に、ミーメのクラークが張りのある見事な歌唱を披露している。動きも俊敏で、さすがは小人だ(笑)。クプファーというのは歌手たちにあまり無理な動きをさせない、大変思いやりのある(?)演出家ではあるが、クラークに関しては特例なのだろう。この『ジークフリート』は『ワルキューレ』とは違って、舞台はちょっと乱雑な作りになっている(第1・2幕)。というわけで、

ジャンル:瓦礫の中のジークフリート

といった感じ。

★★★

ジークフリート:ジークフリート・イェルザレム
ミーメ:グレアム・クラーク
さすらい人:ジョン・トムリンソン
アルベリヒ:ギュンター・フォン・カンネン
ファフナー:フィリップ・カン
ブリュンヒルデ:アン・エヴァンス
エルダ:ビルギッタ・スヴェンデン
鳥の声:ヒルデ・ライトランド

管弦楽:バイロイト祝祭劇場管弦楽団
指  揮:ダニエル・バレンボイム
演  出:ハリー・クプファー

[  収録:1992年6・7月、バイロイト祝祭劇場  ]

【関連記事】

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『神々の黄昏』(バイロイト音楽祭)

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コメント

 うん、グレアム・クラークはすごいよねえ…。僕が初めてクラークを聴いたのはバイロイト 1984年の《マイスタジンガー》だったと思いますが、その時点で彼は既にかなりのキャリアがあって、《指輪》の時はもう結構な歳だったんだよね。それにクプファーがあんなにガンガン動かすもんで、彼リハーサル中に一度心臓発作を起こしたんだよ。あんなんで、あれだけ歌えるってのは本当にすごいよね。イェルザレムも、あんな大根さんがよくあれだけ!…ってビックリ仰天したけど、クラークがもっとすごいんだよねえ…。
 そいや、僕の時〔第2チクルス〕では《ワルキューレ》だけブリュンヒルデにデボラ・ボラスキが出てきました。当初の予定ではブリュンヒルデは全部ポラスキのはづで、パリ管での予行演習でも、ずっとポラスキだったんだけれど、突然自信ないって下りちゃったんだ。そこで、ちょうどその頃パリ公演をやったニース歌劇場の《指輪》に出てたアンヌ・エヴァンスに白羽の矢が立ったというわけ。でも、あの人本当はブリュンヒルデなんてタマじゃないんだよね。でも、バレンボイムとクプファーの二人が彼女を見事に持ち上げてみせたよ。最初の年なんて、もう聴くに耐えなかったのに…。クプファーはクプファーで、彼女が結構チビなのを利用して、少女っぽいブリュンヒルデを作ったりして…。だから、やっぱり《ワルキューレ》がポラスキで、その後にエヴァンスに代わるとヘンな具合だったよ。ひょっとしたらバレンボイムとしては映像と録音はポラスキで行きたかったのかも知れないんですが、演出の方がもう完全にエヴァンス用になってたんで、結局エヴァンスでいっちゃったんだね。
きのけん

投稿: きのけん | 2005/12/22 17:08


来年6月のメットの来日公演に『ワルキューレ』が組まれていて、そのポラスキがブリュンヒルデで登場するみたいですね。聴きにいきたいもんだなあ・・・。でも、とっくに売り切れかな?なにせジークムントがドミンゴですしね。

投稿: Orfeo | 2005/12/22 18:10

…それ、ベルリンで聴きました。バレンボイムの《指輪》ツィクルスの直後に、ドミンゴ指揮のコンサートが予定されてたんですよ。そしたら、月間スケジュールには載ってなかったのに飛び込みで《ワルキューレ》に出てきたんだよ。多分、指揮との交換条件で出たんじゃないかと思うんだけれど、だから、特別公演でも何でもなくて、普通のレパートリー上演(つまり通常料金)だったにもかかわらず、ドミンゴ+ポラスキ+トムリンソン+…ヴァルトラウト・マイヤー(ジークリンデ)なんちゅうすさまじいキャストになった…。もうこっちは大満足!
きのけん

投稿: きのけん | 2005/12/23 18:04


・・・そりゃあスゲエや!
キャストを聞いただけで、もうおなかイッパイ、って感じ(笑)。

投稿: Orfeo | 2005/12/23 20:17

クラシカジャパンで放送中につき、TBさせていただきましたm(_ _)m 

投稿: edc | 2006/08/24 08:31


>edcさん
TBありがとうございました。
TB返しさせていただきますね^_^;;

投稿: Orfeo | 2006/08/24 10:17

 これをヴィデオで見てていちばん解り難いのが第二幕の結末なんじゃないかと思います。野村=木下・対談の関連箇所でも二人してビックリ仰天してますが(>リンク↓きのけん下線部)、最後の最後のところで、あの蒸気機関車のぶっ壊れた釜みたいのがある装置に異様な奥行きがあることが判るんです。鋳直した剣が完成して、舞台奥へ続く廊下をイェルザレムが喜び勇んで駆けて退出していく場面。この舞台の奥行きがすごいんだ。あれっ、この劇場、こんなに奥行きがあったっけ?、なんて思ったんだけど…。
 それで思い出したんですが、バイロイトの祝祭劇場というのは、舞台の直ぐ裏手に通路がありまして、その道一本挟んで直接舞台装置の格納倉庫に続いてるわけ。朝、その晩の公演に使う装置の出入れをやってる時はそこが通行止めになってる。ところが《指輪》ツィクルスで一度だけ、あすこに壁を仮設して囲っちゃってて、ずっと通行止めになっていた日があったんです。
 そうか!あれが《ジークフリート》の日だったんだ。あれっ、向こう側に行けないじゃん、なんて大回り迂回したのを憶えてるんですが、つまり、あの場面の奥行きを出すためだけに、舞台奥のシャッターを上げ、格納倉庫と舞台を直接繋げちゃって、倉庫の一部まで使ってあの奥行きを出したんだね。
 これと同じことをパリのガルニエでやったのがジョルジョ・ストレーレルの《フィガロの結婚》で、パリのガルニエ宮ってのは、世界でも珍しい本格的なイタリア式劇場建築で、舞台の奥行きが、客席の奥行きの優に2倍か3倍の長さがあるわけ。その舞台の直ぐ裏側にバレエの練習場があるんだけれど、第三幕でストレーレルはその舞台奥の壁をぶち抜いて、バレエ練習場と舞台を繋げちゃって、舞台の奥行きを通常の3倍くらいとって、奥まで延々と続く宮殿の廊下を見せてるんだよね。
 ガルニエのような純イタリア式劇場の場合、半円形の客席から見ると、舞台が遠近法によるパースペクティヴを構成していて、その奥行きが実際の優に3倍か4倍はあるように見えるわけよ(ルネッサンス絵画によくあるだまし絵の構造だよね)。ストレーレルとフリジェリオはそいつを利用して、驚くべき奥行きの装置を作ってみせたんですが、それも、その奥行きが全部見えるのが第三幕だけ…なんだよねえ。
 バイロイトみたいないちおう正面式に近い劇場建築では、その奥行きは、それほど効果的には活きないんですが、クプファーもそのことはよく知ってる。それで彼は、最二幕の最後の最後まで、この舞台装置の奥行きを感じさせないよう周到に装置前面に観客の視線を釘付けにしとくわけ。それで、最後の最後になって、舞台奥まで照明が入ると、ウワー!ってことになるわけだ。
 このクラスの演出家になると、自分が使う劇場の建築構造まで射程に入れて演出を作りますね。ペーター・シュタインがガルニエでやった《ラインの黄金》もそう。あれは、ホールの暖房をやってる(初演時は真冬の12月)スチームを舞台に繋げちゃって、第3場、ニーベルハイムの箇所で、舞台各所からスチームの蒸気を出してた。
 もう一つ、この《ジークフリート》二幕末が、すごいのは、クプファーという人は、バイロイトの舞台が、異常にタッパが高く見えるという特徴を見事に捉えていて、舞台の高低を利用した構造をしょっちゅう出してくるわけ。ところが、まさにこの箇所で、異様にすごい奥行きが出ちゃう…という驚きね。
 その点、舞台構造のまったく異なるベルリンでの演出では、全然違う発想の装置を使ってるんだよね。
きのけん

投稿: きのけん | 2006/08/25 16:13


ちょっとタイム!なんだか話が混線してません?ノートゥンクが鍛え上がるのが第1幕結末、小鳥に教えられて岩山に向って走り去るのが第2幕結末、ですよね。野村=木下・対談を読むと、その舞台の奥行きを使った演出が飛び出して来るのは、やはり第2幕結末。でも、おっしゃるとおり、というか、想像どおり、というか、映像ではその奥行きはまったく捉えられていません。奥が白く輝いて、イェルザレムがそこに石かなにかを放り投げて、そしてやっとその奥に向けて走り出したと思った瞬間、すぐ終わり、です。こんなブチ切り映像で、よくクプファーがOKを出したもんですね。

投稿: Orfeo | 2006/08/25 17:43

>異様にすごい奥行き
すごい奥行きが突如出現するときって、ほんとにわ〜〜っていう感じで興奮するというか、気分がいいでしょうね。劇場体験僅少ですけど、新国のワルキューレたちが逃げさっていく場面はとっても印象的でした。この間の「こうもり」でも突然奥に大広間が出現したときは、ちょっとですが、ウワー!って感じでした。劇場ではこういうのを味わいたいものです。話題の場面は、もっと凄いんでしょうね。

こういうのは映像ではわからないと思います。

その場面、見てみましたが、一応、おお、ずっと向こうまで続いている道が!って感じはします。ジークフリートがずっと駆けていくので終わりにしたほうがよかったかもしれません。ジークフリートを追いかけるのを途中でやめて、最後に前方のやった!という動作をするさすらい人を大写しにして幕でした。

投稿: edc | 2006/08/25 20:12


edcさん、追加情報ありがとうございます。
そうそう、正確にはさすらい人のガッツポーズで幕、ですね。そうでした。
舞台の奥行きという点では、これに続く第3幕の方が、暗いけど、闇が深いところまで広がっていて、「うわあ!だだっ広いぞ、この舞台!」なんて思いました^_^;;

投稿: Orfeo | 2006/08/25 21:09

 …そうそう(笑)、あれは鳥の声に従って行くんだよね。
 最後のヴォータンの「やった!」はホールではほとんで見えなかったと思います。あすこにいたことはいたけど、舞台前面の照明を切っちゃって、舞台奥に光が入ったもんで、ヴォータンは黒いシルエットだけになっていたと思います。

 もう一つ、説明を加えておくと、ガルニエ宮タイプのイタリア式劇場の舞台で奥行きが強調されるってのは、舞台の間口を底辺として、舞台内に三角形が構成されるような形で遠近法の空間構造が作られるからです。それで、実際の数倍の奥行きがあるように見えるわけ。だから、あのストレーレル版《フィガロ》を典型的な正面式劇場であるバスチーユに移したら元も子もなくなっちゃうわけよ。その引っ越しに猛反対したストレーレルは、あれをバスチーユに移した時、あっさり自分の名前を削っちゃって、ストレーレルが亡くなるまで、あれは「無名氏」の演出だったんです(没後復活しました)。
 そういや、ストレーレルっていう演出家は、あのイタリア式劇場構造というのを、もう、第二の天性みたいにして持っていて、僕が見た彼の演出は、例外なく総て、イタリア式劇場建築のホールだったですね。オデオン座、ガルニエ宮、シャトレ座、ポルト・サン・マルタン座、スカラ座…。弟子のシェローが御大の芝居のパリ公演先は是非ウチで、と頑張った時も、ナンテールのアマンディエ劇場が典型的な正面式劇場なもんで、ただの一度も来なかった。そうそう、一度だけシェイクスピアの《あらし》をミラノで見た時が映画館を改造したホールだったんですが、それでさえ、オケ・ピットなんかを仮設しちゃってて、イタリア式劇場を模した構造に作り替えてましたね。ほんと、あの人、よくザルツブルクなんかに演出を出したもんだよ!(だから、あっちでは失敗してるでしょ:カラヤンとの《魔笛》とメータとの《後宮》)
 その逆に、ロンコーニという人は、正面式舞台の方がいいんだよね。彼の舞台というのは、色々な要素が同じレヴェルで並列されているような空間構成だから、遠近法は必要ないんだ。だから、我々の見た《ヴェニスの商人》なんか、オデオン座みたいな偽イタリア式劇場よりも、アマンディエ座のような正面式ホールに入れた方が映えるんだよね。
きのけん

投稿: きのけん | 2006/08/26 07:08


うん、ストレーレルの芝居はイタリア式劇場の中で見てこそ、という感じがしますね。またオデオン座の『イリュジオン』(コルネイユ)の話になってしまいますが、騙し絵みたいな舞台で、それこそ私は病みつきになって、あんときはパリ滞在中に確か3、4回見に行っちゃった!紗幕を使ってるな、というのは分かるんですが、人物が二重に見えてくるもんで、「こりゃ、ホンマにイリュージョンだあ!」なんてね・・・(笑)。懐かしいです。

投稿: Orfeo | 2006/08/26 09:05

 うわー、こっちこそ懐かしい!…。
 あれって、3回か4回見ちゃったんだ(笑)。ジェラール・ドゥサルト主演、親父がアンリ・ヴィルロジュー…。ストレーレルがね、記者会見で、私はコルネイユには全然興味ない!、なんて言うもんで満場騒然(笑)。…ただし、これだけが唯一の例外、なんて言ってました。
 これもロンコーニの《ヴェニスの商人》やヴィテーズの《繻子の靴》同様、Orfeoさん、運がいいねえ!…。あれって、確か、ストレーレルが病気で1シーズンくらい制作が遅れたんだぜ。ガルニエの《後宮》演出に御大が来れなくて、ミラノの病院から電話で演出の指示を出したとかいうシーズンの翌年だよね。
 《ヴェニスの商人》は初日に間に合わなくて一週間くらい初日が遅れたし、《繻子の靴》の全編上演はパリではストで1度か2度しかなかったはづ。まったくツイてる人だよね、Orfeoさんというのは!(笑)。守章さんなんて、可哀想なことにも運悪く両方見れなかったんだ!…。
きのけん

投稿: きのけん | 2006/08/26 17:25


・・・うん、2001年にエクスで大雨に遭遇して、公演キャンセル、という事態もかろうじて回避したし、たしかにフランスではツイているのかも?でも、帰国後にそのツケが回ってきたのはご承知のとおり・・・(笑)。

あと、『イリュジオン』を私がオデオン座で観たのはあれが再演された年で、1985年の秋のことです。思えばあれが初めての海外、初めてのおふらんすでした^_^;;

投稿: Orfeo | 2006/08/26 19:31

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» ワーグナー「ジークフリート」バイロイト1992年 [雑記帳]
ワーグナー「ニーベルングの指環」四部作のうち第三話「ジークフリート」(ハリー・クプファー演出、ダニエル・バレンボイム指揮、バイロイト音楽祭1992年収録)クラシカ・ジャパンで放送中です。今月中、一週間ずつ四作品が順次放送されます。国内版DVDも「ワルキューレ」から順次発売中。あらすじなどこちら、Orfeoさんのオペラ・レヴューを参照してください。 舞台は瓦礫の山というところ。ミーメのお家は機関車の残骸みたい。竜に化けたファーフナーの住処も破壊された都会の瓦礫の隙間のようです。無機質的な荒れ果て... [続きを読む]

受信: 2006/08/24 08:34

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