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2005/09/15

『トリスタンとイゾルデ』(バイロイト音楽祭)

cd-tristan-barenboimDVDライブラリーより。

東ドイツ出身の劇作家兼演出家であるハイナー・ミュラーが手掛けたバイロイトの舞台。初演は1993年。三方を壁で囲んだ閉塞空間の中ですべてが繰り広げられる。

この舞台に関しては、私の下手なコメントより、きのけんさんの見事な評論を読むほうがいいでしょう。というわけで、KINOKEN2へ飛び立て!

★★★★

トリスタン:ジークフリート・イェルザレム
マルケ王:マティアス・ヘレ
イゾルデ:ワルトラウト・マイヤー
クルヴェナール:ファルク・シュトルックマン
メロート:ポール・エルミング
ブランゲーネ:ウタ・プリエフ
若い水夫:ポール・エルミング
牧童:ペーター・マウス
舵取り:シャーンドル・ショーヨム・ナジ

合  唱:バイロイト音楽祭合唱団
管弦楽:バイロイト音楽祭管弦楽団
指  揮:ダニエル・バレンボイム
衣  裳:山本燿司
演  出:ハイナー・ミュラー

[  収録:1995年7月、バイロイト祝祭劇場  ]

*画像はこの公演とは関係ありません。

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コメント

 おお!こんなのまで出てきたぜえ!…。まったく、Orfeo-blogってのは何が飛び出すか判らんねえ(笑)…。おまけにリンク付きで!…。

 そうか、これって僕が行った年の公演だよね。バレンボイムがすごく頑張った年だ。これは7月だから初日に録ったらしいんだけど、僕が行ったのは最終日で、皆さん、もう後がないからちょっと異常な頑張りようだったぜ。特にイェルザレムは後に公演が残ってたらとてもあんな歌い方はしないといった超熱演でした。あの日を録るべきだったのに…。

 つまり、ヴィデオで見るよりも実際に見るともっと強く感じると思うんだけれど、舞台が極端に冷たいの。もう《トリスタン》の熱気をドライアイスで冷やしているような舞台で、ところが音楽的にはバレンボイムがガンガン煽って盛り上げちゃう、やたらカッカしたホットな演奏なんで、そのズレがなんとも面白いんだよ。ハイナー・ミュラーが未だ生きてたら、おおやっとるやっとる!なんて面白がったと思うけど、同じバイロイトで、ジャン=ピエール・ポネル演出版を振ったヤツと較べてみると、違いがはっきり判ると思うけど、まるで正反対のコンセプトなんだよね。ポネル版は舞台と音楽の一体化を目指し、ミュラー版は極端な異化を目指したものなんだね。

1993年の初演時はバレンボイムが遠慮しちゃってネコを被ってたのが(良く言えば「室内楽的」ワーグナー、悪く言えばまったく気のない演奏)この年はもうエネルギー全開ですごかったんだけど、でも、こういうのって、ヴィデオで見て面白いものなの?…。

それからバレンボイムを録るのは難しいよね。なにせ出来不出来が極端に激しい奴だから…。それに、この人の高揚した時ってのは、細かい技術的な問題なんかどうでもよくなってガンガン行っちゃうから、後で録音を聴き直してみるとアラばっかり目立っちゃったりしてね(笑)。ライヴ録音の問題ってのはそこだよね。実演じゃ、その時の熱気に流されて、多少の技術的欠陥なんかどうでもよくなっちゃうけど、後で録音を聴き直すと、どうしてもキズが気になっちゃう。何度も繰り返して聴くレコードと実演の一回性の違いがそこなんで、バレンボイムってのはかなり徹底して実演の人なんだ。ショルティ、カラヤン…デュトワだったら、彼の《指輪》全曲録音みたいな杜撰な録音を出すはづがない。

これは僕が実演で聴いた最高の《トリスタン》の一つなんで、非常に懐かしいです。他の二つはアムステルダムで聴いたサイモン・ラトル&クラウス=ミヒャエル・グリューバー&ロッテルダム・フィル版、もう一つがパリ国立歌劇場のマレク・ヤノフスキ版でした。
きのけん

投稿: きのけん | 2005/09/15 08:50


きのけんさん、どうも。
バレンボイムを聴く才能に欠けている私にしては珍しく、このヴィデオ(DVD)は気に入っているうちの一つですよ。あとは、やはりバイロイトの『ワルキューレ』かな。彼のような強引な指揮だと、外れると空回りするけど、はまるととてつもない名演になりますね。そこは認めます(笑)。

投稿: Orfeo | 2005/09/15 19:47

Orfeoさん
TB、ありがとうございます。私の方からもします。

これもテレビで見ましたが、私はどうもだめでした^^;
なんだか心地よくない閉塞感が強くて・・
舞台装置から、衣装、髪型まで全部嫌い^^
きのけんさんの解説で、なるほど納得・・かしら?

投稿: edc | 2005/12/19 13:20


edcさん、TB返しありがとうございます。

>なんだか心地よくない閉塞感
そこが狙いだったりして・・・(笑)。

投稿: Orfeo | 2005/12/19 17:42

edcさん& Orfeoさん:
>>なんだか心地よくない閉塞感 
>そこが狙いだったりして・・・(笑)。

 いや、冗談でなく、まさにその通りです。この年はもうハイナー・ミュラーが死んだ後だし、バレンボイム主導の公演になってますから、それほどではないんですが、初年次はもっともっと極端な冷たさだった。ハイナー・ミュラーの狙いの少なくとも一つは確実にそこにあったですね。要するに、オペラを見る観客というのは、舞台に接している自分の感性そのものを疑うことをしない人種ですから、それを相当強引に攪乱してやれ…という意図はかなり強かったと思いますよ。

 実は、初年次の前年にパリのパスチーユ・オペラで、今ヴェネツィアのフェニーチェ座の芸術監督に収まっているセルジオ・セガリーニ(この人名前に反してフランス人です)を中心に「オペラと演出」というパネル・ディスカッションがありまして、僕も参加したんですが、リュック・ボンディ、ジョルジュ・ラヴェリとハイナー・ミュラーが来てて、僕がハイナー・ミュラーに、なんで『ハムレット・マシーン』とか『メデア・マテリアル』みたいに「トリスタン・マシーン」じゃあなくて、オペラの演出なんだ?…と質問したら、その質問には全然答えず、バイロイトってところは面白いな。去年初めて行ったんだけど、ありゃまるで動物園なんで(笑)…なんて与太話が延々と始まっちゃった。それでバイロイトで見聞した観客についての話を始めちゃったんですが、あまりにぶっと呆けて面白可笑しく話すもんで、初めから終わりまで通訳の女の子が吹き出しっぱなし!で訳せなくなっちゃって、彼の言ったことが1/3も判らなかったんですが、あの連中に一泡吹かせてやろうという意図はあっておかしくない。

 ただ、初演時はバレンボイムの方があの演出にどう対応していいか判らなくて、自分もひどく冷たい、室内楽的な演奏を心掛けちゃったんです。
 でも、ハイナー・ミュラーの演劇性というのは必ずしもそういう音楽と舞台との一致や同化を求めているものではないんで、本当はバレンボイムは自分の思う通りやればよかったんですよ。そう、ひょっとしたらミュラーの方では、バレンボイムのあのカッカした演奏を知っていて、故意に余計冷たい演出を心掛けたのかも知れないんだ。そのくらいのことはする人だから…。だから演出家が死んじゃってからの 1995年の公演の方が逆説的にも、あの演出を活かしていたんですね。

 そういうことがよく判ったのは、ハイナー・ゲッベルスがミュラーを採り上げた時で、フレッド・フリスとかのロック・バンドががんがんロックをやる中にミュラー自身が出てきて、例の極太の葉巻とウィスキー・グラスを傾けながら、自作の断片を朗読してみせた時なんです。ああそうなんだ!この人は、こういう意外な遭遇を求めているところがあるんだ…とそこで理解したというわけ。だから、彼自身、自分の作品を作者に忠実に…なんてやる演出家は全然好きじゃなくて、ロバート・ウィルソンみたいなのに引っかき回されちゃう方が好きなんだよね。

 特に、この年僕が見たのは音楽祭最終日、おまけにこの制作はもうこれが最後という日だったから、皆、後が無いもんで、ほんとうに行くとこまで行っちゃった。特にイェルザレムとマイヤーさんが興奮の極致もいいとこで、それをバレンボイムが煽ること、煽ること!…。あんな激烈な《トリスタン》はもう一生聴けないものと思ってます。
 そうだ、一緒に行った『ル・モンド・ドゥ・ラ・ミュージック』誌のミシェル・ル・ナウールなんか、あのバレンボイム大嫌い男がスゲー!なんて腰抜かしちゃって、動けなくなっちゃったんで弱ったよ(笑)。
きのけん

投稿: きのけん | 2005/12/20 08:03


ハイナー・ミュラーとしては、当然「トリスタン・マシーン」をやりたかったんじゃないですかね?でも、それをやるには音楽自体に手を加える必要がある。さすがにそれはウォルフガングが認めないでしょうから、次善の策としてこうなった、といったところでしょうか。
ともかく、彼にはもうちょっと長生きしてほしかった・・・。残念です。

投稿: Orfeo | 2005/12/20 12:38

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受信: 2005/09/15 23:27

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ワルトラウト・マイアー(1956.01.09-  ドイツ)は1983年、1982年に始まったゲッツ・フリードリヒ演出の百年記念パルジファルにクンドリでバイロイト音楽祭にデビューしました。パルジファルはペーター・ホフマンでした。この生年月日が正しければ、マイアーは27歳だったんですね・・ テレビで彼女のポートレートを見ましたが、バイロイト音楽祭のオーディションに招かれたとき、神々の黄昏のヴァルトラウテかフリッカならいいけど、例えば、ラインの乙女とか、ワルキューレの一人のような小さな役で夏休みを犠... [続きを読む]

受信: 2005/12/19 13:20

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