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2005/07/31

『ナクソス島のアリアドネ』(ドレスデン州立歌劇場)

dvd-ariadne-dresdenDVDライブラリーより。

ドレスデンの舞台は時代を現代に移し変えた演出。オペラは美術サロンの一室で繰り広げられる。その部屋の真ん中にはゴミの山が置かれ(これも現代アート)、そこがオペラの舞台、ナクソス島という設定だ。恋人に捨てられ悲嘆に暮れるアリアドネ。それをツェルビネッタと喜劇役者たちが大道芸を繰り出しながら、なんとか元気付けようとする。豚のマスクまで被る(笑)。結局顔がテカテカに輝いた現代彫刻ののようなバッカスが現れ、アリアドネは新しい恋が実り、目出度く再生する。ついでにツェルビネッタと作曲家も結ばれる。

元々シリアスとコミカルが錯綜する独創的なオペラではあるが、このドレスデンの舞台はそれをさらに徹底化している。プロローグの部分とオペラの部分が続けて演じられることにより、その境界が取り払われてしまうのだ。作曲家やオペラを見守るギャラリーたちまでが舞台になっているサロンの中を自由に動き回り、ツェルビネッタたちと絡み合う。そして、最後アリアドネとバッカス、作曲家とツェルビネッタがそれぞれ抱き合う傍らでは、オペラの中でツェルビネッタにちょっかいを出そうとした喜劇役者がそれを寂しそうに見守っている。それはオペラの中の世界でもあり、同時に外の世界でもある。悲しみに沈むピエロ、彼もまた、アリアドネになる。執事長がサロンの照明のスイッチを消し、この"オペラ"は終わる。

小洒落た演出ではあるが、色々取り込みすぎて、肝心のアリアドネの話がすっきり見えて来ないのが難点だ。歌手陣は演技に歌にと忙しい。コリン・ディヴィスとドレスデン州立歌劇場管弦楽団がリヒャルト・シュトラウスの濃密な音楽を響かせている。

★★★

プリマドンナ/アリアドネ:スーザン・アンソニー
ツェルビネッタ:イリーデ・マルティネス
テノール歌手/バッカス:ジョン・ヴィラーズ
作曲家:ゾフィー・コッホ
音楽教師:テオ・アダム
ダンス教師:ウェルナー・ギュラ
執事長:フリードリヒ・ウィルヘルム・ユンゲ

管弦楽:ドレスデン州立歌劇場管弦楽団
指  揮:コリン・ディヴィス
演  出:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ

[  収録:1999年3月、ドレスデン州立歌劇場  ]

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コメント

現代アートというものがよく判りませんで?マークが飛んでしまいました。(^^;)もう一寸普通のセットでお願いしたいです。

投稿: simulacra1984 | 2005/07/31 23:31


simulacraさん、こんにちは。
私も現代アートばかり集めた美術館に行って、作品をぶっ壊したくなる衝動に駆られたことがあります^_^;;

投稿: Orfeo | 2005/08/01 07:23

このマルコ=アルトゥロ・マレッリという演出家は、それほどのタマじゃないような気がするんですが、彼にはダグマル・ニーフィントという相当大口径のブレーンが就いているんです。彼女は昔、ペーター・シュタインやグリューバーのブレーンでウィルソンなんかとも一緒に仕事をしているんだけれど、いつの間にか、マレッリの奥さんに収まって(…いるらしい)オペラ専門になっちゃいました。昔よくこのコンビの制作がモンペリエ歌劇場にかかって(ひょっとしたらこれもモンペリエ歌劇場との共同制作じゃない?…)、それがもとでモンペリエの総監督だったアンリ・メイエルがドレスデンの総監督に収まっちゃいましたね。

パリの《アリアドネ》はロラン・ペリーの演出だったと思いますが、あいつにもアガート・メリナンという大口径のブレーンが就いてまして、昔ロラン・ペリーが芝居をやっていた頃見たものが、いづれもロクでもない代物だったんで、なんでまた?…と思っていたら、ちゃーんとメリナンというすごいのが就いてた。それが判ったのがオザワ・オペラのプッチーニ《ジャンニ・スキッキ》とラヴェル《スペインの時》のプログラム作成に協力した時なんです。ペリーにコメントを頼んだら、このメリナンおばさんの方から大論文がどかーんと届いちゃった。なーんだ、演出は全部あいつが考えていたのか!…と(笑)。
きのけん

投稿: きのけん | 2005/08/04 05:22


う~ん、ゼンパーオパーのサイトまで行って調べてみましたが、共同制作のクレジットは出てなかったですね。どうなんでしょう?

マレッリはともかく、ペリーにもそんなブレーンがついていたんですね。なるほどと思いました(笑)。

投稿: Orfeo | 2005/08/04 09:09

そのアガート・メリナンというブレーンがどんな仕事をするか、小澤オペラのプログラム用に翻訳したコメントを近いうちにサイトの方に載せておきましょう。演出における「ドラマトゥルグ」を担当する人が、どういう仕事をするかの見本みたいなもんです。
きのけん

投稿: きのけん | 2005/08/25 06:35


おおっ!楽しみにしています!

投稿: Orfeo | 2005/08/25 09:08

Orfeoさん、TB、ありがとうございます。
私のもさせていただきます。

これ、テレビ放送もあったんですね・・

演出界?の裏話、おもしろいです。

投稿: edc | 2005/11/02 13:23


edcさん、こんにちは。
お断りもせず、TB送信して失礼しました^_^;;
TB返し、どうもありがとうございます。

マレッリは今年、新国で『フィデリオ』を演出してますね。
そちらはご覧になりましたか?

投稿: Orfeo | 2005/11/02 16:38

Orfeoさん
いえ、お断り無用です。ご心配なく!!
でも、コメント、うれしいです^^!

>マレッリは今年、新国で『フィデリオ』を演出してますね
あ、行きました。とっても気に入りましたけど、演出家さんの名前、確認してませんでした・・・ あらら・・

テームズ川から這い上がってきたファルスタッフ、あるいは、トドみたいなフロレスタンはちょっとね〜〜でしたけど。

投稿: edc | 2005/11/02 21:32


edcさん、こんばんは。

ほお~、なるほど。この人、美術も自分でやる人ですよね。そっちの方はスタイリッシュで面白いんだけど、人物描写に難点があるのかな?近々、また彼の扱った舞台をアップします。

投稿: Orfeo | 2005/11/02 22:20

Orfeoさん、だいぶ前の記事ですが、私も同じものを取り上げていたことを思い出しましたので、TBさせて頂きます。

昨日テオ・アダム氏の80歳のお誕生日だったそうですが、今年限りで舞台を引退すると発表したそうです。

それとトピック違いになりますが、RSS導入のアドバイス、ありがとうございました。ドリコムのほうが、きもーち早いような感じもしますね。
(昨日私が書いた記事、けっこう早く反映されてましたから(^^))

投稿: ヴァランシエンヌ | 2006/08/02 11:34


ヴァランシエンヌさん、TBありがとうございました。

テオ・アダム、80歳ですか!それはまた、息の長い歌手さんですね。引退後はゆっくり過してほしいものです。

RSSに関してですが、現在ここの「オペラ・クラシック」部門(ヴァランシエンヌさんのところ)は、ドリコムではなくて、BlogPeopleのものです。それとも、どこかよそでご覧になったのかな?ドリコムは読み込み頻度は少ないですが、これがたまたま記事更新をした直後に来ると、当然すぐ反応します。だから同じブログでも、すぐ反応したり、全然反応してくれなかったり、と、まちまちみたいですよ。

投稿: Orfeo | 2006/08/02 12:27

 テオ・アダム…未だ歌ってたんですねえ!…。一時期演出に手を出していたことがあったでしょ…。
 あの人も、リバーマンのお気に入りで、パリによく来てました。最初がホルスト・シュタイン指揮《パルジファル》のアムフォルタス、次がショルティ指揮《ラインの黄金》(演出ペーター・シュタイン)と《ワルキューレ》(演出グリューバー)のヴォータン(シュタインもグリューバーも随分彼に助けられてましたよ!)、カール・ベーム指揮《魔笛》の弁者。ただ、彼は新制作の時だけってわけじゃなくて、再演の時もちゃんと来てくれるんだよね。そういや、再演で彼がヴォータンをやる時には、必ずその周囲に《魔笛》が組まれていて、両方やってました。それからリサイタルも沢山。
 あの人らしいな!…と思ったのは、あれは東ベルリンだっけ、バイロイトだっけ?…、他の歌手なんかが颯爽と運転手付きのベンツかなんかで楽屋入りしてくるところ、テオ・アダムさんだけは自転車に乗ってちんたらやって来るのよ!…。なんか東独の良い面だけを持っていた感じで、いっぺんで好きになっちゃった。
 そうそう、僕はミュンヒェンで彼からドイツ語の発音を直されたたことが何度もあるよ。パリで何度か会ったのを憶えていてくれて、仏語訛りのヘンな片言のドイツ語を喋る日本人がいるなんて珍しかったんでしょ。それとも歌手の卵と間違われたか?…、おっ、お前ちょっと来い、なんて言って発音を矯正してくれるんだけど、あの人って、純粋なプロイセン人だから、録音でもはっきりと判ると思うけど、k、t、zとかの発音がやたらキツイのよ。だから、唾がばんばん飛んでくるのにはまいった(笑)。あれ、相手役が結構大変だぜ!…。
 テオ・アダムの絶好調の時の声ってのがよくて、ちょっと湿った感じでしっとりとした響きになるんですよね。
 僕のいちばん好きだった歌手の一人です。
きのけん

投稿: きのけん | 2006/08/03 16:32


テオ・アダムの自転車の話って、面白いけれど、それがバイロイトでの話だったら、ちょっと凄くないですか?だって、あそこの祝祭劇場って、丘の上でしょ?(爆)それが長生きの秘訣かしらねえ?

投稿: Orfeo | 2006/08/03 17:39

 …うん、そうなんだけど、バイロイトくらいの町は自転車で動くのが一番便利なの。バスは意外と不便だし、夜は早く終わっちゃうし…、特に祝祭期間中のバイロイトというのが車の洪水で、市内はもう停める場所なんてありゃせんのよ。祝祭劇場の駐車場だって、随分前に行かないと取れないし…。劇場の裏手の楽屋口の方に行ってみてご覧、あの自転車の数って半端じゃないぜ。それに、皆、あの丘の上の方の新興住宅街に下宿してる人が多いみたいで、合唱隊とか裏方さんは皆、自転車で来るみたい。
 うん、あれはやっぱり東ベルリンだったかも?…というのもペーター・シュライヤーがでっかいベンツで颯爽と乗り着けるのを見た後で、テオ・アダムさんが自転車でちんたらやって来るのを見た記憶があるから…。そうすると、《コジ…》の時かな?…。あの人、アルフォンゾなんて役も結構上手かったよ!
きのけん

投稿: きのけん | 2006/08/05 01:32

・・・へえ~、そうなんだ。バイロイトって、意外とヘルシーな街なんですね^_^;;
早く訪れてみたいものです。

テオ・アダムのアルフォンゾってのも、ハマリ役なんですかね。
聴いてみたかったです。

投稿: Orfeo | 2006/08/05 09:15

>バイロイトって、意外とヘルシーな街
そういえば、W.マイアーのポートレートってテレビ番組で、彼女が気持ちよさそうな緑の中を自転車で祝祭劇場に通う姿を見ました^^!

投稿: edc | 2006/08/05 11:56


・・・ほおっ!そうですか!みんな、好きなんだな、チャリンコが・・・。

うん?あっ、オイラもプロヴァンスを自転車で走り回ったことがあった!(笑)

投稿: Orfeo | 2006/08/05 14:46

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» R.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」ドレスデン1999年 [雑記帳]
ヴァランシェンヌさんのブログで紹介されたので、買い置き?!を思い出しました。ヨーロッパ仕様ですので、日本アマゾンのとは表紙の絵が違います。この絵じゃなかったら買わなかったかも・・ 舞台上がすっきりしてきた終わりのほうは、音楽の盛り上がりとあいまって、なかなか感動的です。それまでは舞台上がごちゃごちゃしてめまぐるしい・・ 観客役のその他大勢が時に目障りに感じます。劇中劇の登場人物とうまく絡んでいるときはいいのですが、オペラが始まったばかりの、妖精たちの場面はかなり違和感がありました。ついでに、こ... [続きを読む]

受信: 2005/11/02 13:23

» R.シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》 ドレスデン1999年 [Valenciennes Traeumereien]
「プロローグ」の場面から、「オペラ」を見る為に集まったドレスアップした上流階級の男女(これがいかにも、ドイツの《ソウイウカンジ》な風貌の人たちが多くて、芸が細かい!と思いました^^;)が出入りし、そこから既に「劇中劇」が始まっているような感覚を受けます。 「オペラ」も、この同じ舞台の中で行われます。通常、「オペラ」には出てこない作曲家が舞台の端から、こっそりこの「オペラ」を覗いて見ていたり、それに気がついたツェルビネッタが、彼を舞台に引っ張ってきて、ツェルビネッタのアリアの伴奏をさせたりします。 ... [続きを読む]

受信: 2006/08/02 10:56

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